飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

【書評】「認知行動療法」を学べる新書2冊の読み比べ

      2017/05/19

はじめての認知療法 (講談社現代新書)

 認知行動療法とは主にうつ病の治療に用いられることで知られている心理療法の一種である。「認知」と名前が付いているものの、認知症とは関係がないものである。

 

認知行動療法とは?

 認知行動療法とは、ストレス原因はその対象自体にあるのではなく私たちの捉え方(=認知)の問題にあると位置付け、わざわざ物事をネガティブに考えてしまうような癖(=認知の歪み)に気づき、それを修正することによって、ストレスにならない物事の捉え方をできるようにしていくものである。

 認知行動療法は確かにうつ病やパニック障害の治療法として有名になったが、その対象は精神疾患だけではない。私たちの日常における小さなストレス、不安、怒りを軽減するための手段としても極めて有効である。近年人気のアンガーマネジメントも認知行動療法の考え方をベースにしている。

 たくさんの悩みを抱える人も、少しの不安を抱える人も、毎日ポジティブに生きている人も認知行動療法の考え方には大きな気付きがある。自分の考え方を修正できると共に他人の考え方を理解するためにも役に立つと私は思った。

 以下、手軽に新書で読める認知行動療法の書籍を2冊紹介していこう。

 

『はじめての認知療法』大野裕(講談社現代新書)

はじめての認知療法 (講談社現代新書)

 『はじめての認知療法』(大野裕・著、講談社現代新書)は主にうつ病患者、あるいはそのケアをする人をターゲットにしている。著者による強くも優しい語り口が非常に心地よく、安心感がある。

 本書の最大の特徴は「とにかく行動してみること」に重点を置いている点である。殆どの認知行動療法をテーマにしている書籍は、最初にその理論や用語の解説が詳しく提示される体裁を取っている。しかし本書『はじめての認知療法』においては用語や理論の解説は第一章で最小限に留め、第二章で「まず行動を少しだけ変えてみよう」と動くことの重要性を説いている。

 患者に寄り添って共に問題を解決していこうとする実践的な書籍であると感じた。また、問題の解決法についても段階を踏んで詳しく解説されている。大変に心強い本である。

 『はじめての認知療法』は、今現在うつで悩んでいる人や、そこまで行かないまでも深刻な悩みや不安を抱えている人、また、そんな人に寄り添って問題を共に解決していかなければならない人におすすめできると言える。

 

『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン「認知行動療法」入門』中島美鈴(光文社新書)

悩み・不安・怒りを小さくするレッスン 「認知行動療法」入門 (光文社新書)

 対して、こちらの『悩み・不安・怒りを小さくするレッスン「認知行動療法」入門』(中島美鈴・著、光文社新書)は認知行動療法を俯瞰する内容である。認知行動療法成立の経緯や考え方、問題を解決するための様々な考え方を浅く広く提示しているのが特徴と言える。平易な文章で読みやすい上、具体的な事例が多く挙げられているのでとてもわかりやすい。

 本書の対象はうつ病患者や大きな不安を抱える人だけでない。例えば「大事なプレゼンの前に緊張してしまうのを改善したい」「お菓子のむちゃ食いをやめたい」「すぐカッとなってしまうのを直したい」など日常の中の小さな悩みの改善にも認知行動療法的考え方で解決できることが提示されている。

 本書は短い全十一章からなり、一章ごとに違ったアプローチによる解決法を示してくれるので読了後は本棚に収めておいて、何かあったときに取り出してみるという辞書のような使い方もできるだろう。

 「すぐ悩んでしまう」「漠然とした不安を抱えてしまう」「ちょっとした問題を抱えている」という人にが読んでみると、何かヒントが得られるであろう良書である。

 

おまけ:『図解 やさしくわかる認知行動療法』福井至、貝谷久宣(ナツメ社)

 Amazonで長らく一番人気の認知行動療法の本がこの『図解 やさしくわかる認知行動療法』です。具体例を示しながら非常にわかりやすく認知行動療法のポイントが解説されており、セルフチェック表も付属されているので実践しながら読み進められる非常に強い味方です。
 上手な自己主張のための「アサーション・トレーニング」や、トラウマ克服のための比較的新しい治療法「EMDR」等まで網羅されており、なかなか骨太な入門書です。

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