飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

駄目人間はいない。内向型が自分の性格に自信を持つべき5つの事実

      2017/07/30

内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える (講談社+α文庫)

 『内向的人間のすごい力』(スーザン・ケイン著、講談社+α文庫)は人の性格を「外向的」「内向的」に分類し、内向型性格はあまり自己主張をせず消極的であるために劣っていると見られがちだけれど、そこに優劣はなく単なる個性の問題であるとして、内向型が優れている面をクローズアップして見せてくれる稀有な書物である。

 まず著者が内向的性格の持ち主であり、外向的な性格が優遇されがちな社会における自身の経験を織り交ぜながら語られるところに好感が持てる。内向型が自信を持つべき根拠・データの量に圧倒される。そしてなにより内向型の著者らしく、本書を作り上げるという目標に誠実に向き合ったのだろうという痕跡が随所に散見される。

 

内向型とは何か?

 二つの性格の違いのわかりやすい説明としては、内向型は「一人の時間にエネルギーを回復する」、外向型は「人と過ごすことによってエネルギーを回復する」というのが挙げられる。内向型は外部刺激に敏感でリスク回避志向であるために、外出すると刺激にさらされてエネルギーを消耗してしまうのである。

 先述の通り、内向型は「引っ込み思案」「行動が遅い」「コミュニケーション能力に乏しい」などというマイナス面にばかり目が行ってしまい負のレッテルを貼られがちだけれど、実際、優劣はない。ただ単に外向型は自分をアピールすることに長けているので非常にわかりやすく、就職活動など他人から何かを評価される機会においては有利になりがちであるというだけの話である。

 「コミュニケーション能力」とやらが重視されるこの世の中において、たまたま外向型が有利であっただけの話。もしもこの先、「粘り強さ」「分析能力」「リスクマネジメント」などが重視される世の中になれば外向型は駆逐され、内向型が圧倒的有利になるかもしれない。

 そう、内向型は劣っているわけではない。どうしても自信を持てないなら以下に挙げる5つの事実を読んでみたまえ。自信を持てるだけではなく、外向型人間が単なる阿呆にさえ思えてくるはずだ。

 

1. 外向型は古い脳が優位であるため報酬に敏感、ときに自制できずに暴走する

 外向型の人は目先の報酬を強く求め、内向型の人は自分の中から発せられる危険信号に敏感である。

 ギャンブルで歯止めが利かなくなって全財産を失ってしまうのは殆どが外向型人間であり、金融危機をもたらすのも目先の利益だけにとらわれてリスク管理を疎かにしがちな外向型である。エンロン社における悪名高い空前絶後の粉飾決済も外向型の上層部がもたらしたものであるとされている。

 報酬を求めるのは私たちの脳の中でも感情や本能を司る大脳辺縁系であり、それは原始的な哺乳類にも共通するため「古い脳」と呼ばれている。それに対し、進化の過程で人間を人間たらしめているのは「新しい脳」と呼ばれている新皮質である。この部分は思考、計画、言語、意思決定などを司っている。

 つまり、何かに直面した時には私たちの中で「古い脳」と「新しい脳」が衝突する。で、「古い脳」の力が勝り熱狂状態に陥りがちなのが外向型、それに対して「新しい脳」が強く危険を回避しようとするのが内向型なのある。外向型は報酬という刺激を求めて盲目ゾンビ状態になりがちなのに対し、内向型はそういったものにとらわれて逸脱することが少ない。
 
 

2. 外向型は反省せず、学習しない

 外向型の不可思議な行動がさらに興味深いのは、間違った行動をしたあとにある。不正解である9の番号を押してしまうと、内向型はつぎの番号に移る前に時間をかけて、なにが悪かったのかを考えている。だが、外向型はそこで速度を落とさないどころか、かえってペースを速める。(P268)

 内向型は誤った行動を取ってしまった後に一旦立ち止まって冷静になり熟慮し反省するのに対し、外向型は全く反省せずにむしろどんどん突き進んでしまうというのである。ギャンブルで歯止めが効かなくなる現象に似ている。

 なぜこんなことが起こるかというと、外向型にとってはなぜ間違えたのかということはどうでもよいことであり、彼らの唯一の関心事は早く報酬を手に入れたいという一点のみだからである。「古い脳」に突き動かされた結果、反省して熟慮することが報酬への合理的な最短距離であるという発想に至らないのである。

 それに対して内向型にとっては報酬はどうでもいいことであり、それよりも何で自分は間違ってしまったのだろうかというところに関心があるためにきちんと反省し、次に活かすことができるのである。

 私見だが、何度買い替えてもスマホのディスプレイが必ず割れているという人がいるけれど、それは反省しない外向型を象徴する事象であるように思う。

 

3. 外向型は物事を客観視できない、内向型は物事を客観視できる

 内向型は新しい情報を自分の予想と比較する傾向があるそうだ。「予期したとおりのことが起きたのか。なるべくしてこうなったのか」と、彼らは自分自身に問いかける。そして、予想が当たらないと、失望の瞬間と、そのときに周囲でなにが起きていたかとを結びつける。それによって、つぎに警告信号にどう反応するかについて明確な予測をする。(P269)

 外向型は自分の直感だけで驀進するのに対して内向型は立ち止まって反省するのは前項で述べたが、内向型は物事を客観視に捉えてそれを自分自身の判断に照らし合わせて考えることができる。

 客観視できるというのは人間の特権であると私は考えている。客観視できるが故に科学が生まれ、小説・映画を始めとする秀逸な物語があり、他人の気持ちに寄り添うことができる。行動力のある人物がおおよそ他人の気持ちを考えるのが苦手なように見えるのは、単なる気のせいじゃないに違いない。

 

4. 外向型はすぐに諦める、内向型は粘り強く諦めない

 内向型と外向型の対照的な問題解決スタイルは、さまざまな形で観察されている。ある実験では、心理学者が50人の被験者に難しいジグソーパズルを与えたところ、外向型は内向型よりも途中であきらめる確率が高かった。(P271-272)

 選択肢を無限に選び得る現代において「諦めない」というのは成功における重要な要素となりつつある。「たった一つの大切なことに集中せよ」と説く『エッセンシャル思考』、「やり抜く力」こそが成功の礎であると説く『GRIT(グリット)』を始めとして、近年のビジネス書におけるベストセラーの傾向は「一つのことにじっくり取り組めばうまくいく」をテーマにしているものが多い。

 多くの実験で示されている通り、「諦めないで一つのことにじっくり取り組む」のは内向型の領分である。つまり、内向型には既に「諦めない、粘り強い」という才能が生まれたときから備わっていると考えることができるのである。

 

5. 内向型は知的パフォーマンスが高い

 小学校の時点では、外向型は内向型よりも学校の成績がいいが、高校や大学になると逆転する。ある研究では、大学生141人を対象に、美術、天文学、統計学など20種類の様々な科目に関するテストをしたところ、ほぼ全科目について内向型の学生の方が知識で勝っていた。(P270)

 内向型と外向型に知能指数(IQ)の差はない。つまり、知性は同等である。では両者の何が違うかというと、問題解決のスタイルである。

 
外向型:
・安直なやり方で問題解決を図る
・正確さよりもスピード重視(速いが間違いが多い)
・難しい問題であると早々に投げ出してしまいがち

内向型:
・行動する前によく考える
・情報を綿密に精査する
・スピードよりも正確さ重視(遅いが間違いが少ない)
・簡単には諦めない

 
 じっくり考えることが得意な内向型であるから、知的パフォーマンスにおいて高いスコアを上げられるということである。また、この両者の問題解決スタイルの違いがわかっていると、例えば、自分に適した職業を判断する目安になる。

 私事であるが、新卒でスーパーマーケットに入社した。スーパーマーケットの仕事というのは一日に膨大な量の仕事をその場その場で判断して並行してこなさなければならないのであり、極度の内向型である私にとってはストレス以外の何物でもなかったのである。

 私はじっくりと戦略を綿密に練り上げて正確に仕事をしたいのだけれど、実際にスーパーの仕事に要請されるものは、間違いのない正確さよりも破綻した行動力であった。上層部の人間も行動力重視の外向型人間が多く「大卒は考えるだけで行動が伴わないから駄目なんだ」と揶揄される始末であった。

 内向型は社会の中でそうやって「駄目なんだ」と非難されがちだけれど、今になればわかる。気を落とす必要なんてない。その仕事が外向型に適した仕事だっただけであり、内向型人間が悪いのではないのである。

 

まとめ:内向型・外向型に優劣はない。ただ、内向型の真価は見直されるべき

 本稿においては内向型を擁護し、内向型のほうが優れているという立場で論を展開している。しかし、本当はどちらが優れているというのはない。

 内向型の方が知的パフォーマンスにおいて優れていると上述したけれど、外向型は並行して物事を考えるのが得意であり、イレギュラーな事態に素早く判断を下すことに優れている。

 内向型は粘り強いと書いたけれど、その粘り強さを発揮する対象が無意味なものであるかもしれない。内向型が無意味な穴を深く掘り続けている間に外向型はたくさんの浅い穴を掘ってお宝を手にすることだってあるに違いないのだ。

 内向型と外向型、それぞれがバランスを取り合っているから上手くいくのである。これは人間だけでなく動物もそう。同じ種でも好奇心の強い個体と警戒心の強い個体のそれぞれがいることによって生存競争を勝ち抜くべく策を講じることができるのである。

 ただ、現在の人間社会では外向型が優遇されすぎている感がある。外向型A氏は明るくて、社交的で、コミュニケーション能力に優れる。でも内向型B氏は静かすぎて、口下手で、何を考えているのかわからない。よし、B氏は駄目だ、A氏を採用しよう、というように。

 そんな不遇の内向型の誤解を解くと共に真価に光を当て、自信を落としている内向型諸君に勇気と力を与える優れた書物が本書『内向型人間のすごい力』である。

 
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