飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

【書評】『科学的に元気になる方法集めました』(堀田秀吉・著)から厳選7つの方法

      2017/06/11

科学的に元気になる方法集めました

 「科学的」という言葉に弱い。私は幼少の頃、なぜか「科学的に証明されている」という言葉を気に入って、「それって本当なの?」という意味で「それって科学的に証明されてるの?」と両親にいろいろ尋ねていたのを憶えている。今も昔も私は極端なほどに科学至上主義者である。

 従って、ビジネス書・自己啓発書の分野においても、きちんと信頼し得るデータを示して科学的・心理学に誠実なことが書いてあるものについては強い信頼を寄せる反面、情熱・勢い・根性論で書かれた書籍に関しては全く心に響かない。具体例を示せば、前者は『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル著)であり、後者は『30代にしておきたい17のこと』(本田健・著)である。

 で、本稿で紹介する『科学的に元気になる方法集めました』(堀田秀吉・著、文響社)である。これはもう私にとってドンピシャなタイトル。迷信や民間療法ではなく、きちんとした信頼し得るデータによって示された「ストレスを最低限に、パフォーマンスを最大にする38の研究」(帯より)が示されている。

 既知のものもあったし、初耳のものもあってなかなか楽しめた1冊である。というわけで、『科学的に元気になる方法集めました』より興味深い事実を7つだけ簡単に挙げていこう。

 

1. やる気を出すには、まずはやり始めること

 リベットというアメリカの生理学者が行った実験では、動作を行う準備のために送られる信号が、動作を行う意識の信号よりも350ミリ秒も早かったことがわかっています。
 つまり、考える・心で念じることより、実際の動作のほうが脳に与える力は強いのです。

 (P29)

 最新の心理学・科学では、実際にやり始めることによってやる気が出るということが示されている。つまり「今はやる気が出ない。やる気が出たらやる」という考え方では一向に「やる気が出たらやる」時は来ず、結局締切に追われる。

 私たちが取るべき正しい態度は「5分でいいからやってみる。それでもやる気が出なかったらやらない」というもの。それで実際にやる気が出てやり続けられたら儲けもの。やる気が出なかったらやめてしまえばいい。とても気楽な考え方であるにも関わらず、大抵の場合は5分以上集中してやり続けてしまうから不思議だ。

 ちなみに、これは行動力がなくあれこれと頭の中でだけ考えがちな私の人生をガラリと変えた考え方でもある。

 

2. 楽しい動きをすると、楽しくなってくる

 被験者たちに悲しい表情をしてもらいながら、身体でさまざまな動きをとってもらい、感情がどのように変化するかを見たものです。結果がどうなったかというと、ポーズを取るうちに愉快になっていき、表情も自然と楽しげなものになっていったと言います。(エルサレム・ヘブライ大学アヴィーゼールらによる実験)

 (P45-47)

 私見では、動作がオーバーでコミカルな人ほど明るく前向きであるのをよく見かける気がする。前向きだから動作がコミカルなのか、動作がコミカルだから前向きなのかはわからないけれど、身近にそういう人がいたら真似をしてみよう。

 

3. 動作に効果音を足すことでやる気が出てくる

 リヨン大学のラバヒらが行った実験で、被験者に「ジャンプ!」と言わせて垂直跳びをさせたところ、平均で5%高くなった、という結果が出ました。

 (P57)

 パンチを出す時などに「シュッ」と効果音を足すのも同じ原理。

 これはスポーツだけに限らず、私たちの普段の生活・仕事に応用することができる。気の進まない仕事をする時や、あとひと踏ん張りだという時、「よーし!」でも「あと少し!」でも「やるぞー!」でも何でも良いので掛け声を出すとやる気が湧き出てくるのである。声の出せない環境であれば、心の中で唱えるだけでも効果がある。

 

4. ぼーっとしている時、脳は平常時の15倍働いている

 ワシントン大学医学部のレイクルらの研究によると、何か行動をしているときと、ぼーっとしているときの脳の働きを比較したところ、後者のほうが記憶に関する部位や価値判断に関する部位が活発に働いていたという報告もあります。

 (P77)

 これは驚きである。何かをしているときよりも、何もしていないときのほうが脳が活発に働いている。なんてパラドックス。

 私は基本的には何もしたくないと思っている怠惰な人間であり、かつて無職だった際にはこの生活がずっと続けばいいのにと強く願ったのであり、風呂に入ってぼーっと考え事をしている時間が一番好きだったのである。つまりその頃の私の脳は、あくせくと働いていた他の人達よりも遥かに働いていたことになる。そう、無職であるにも関わらず15倍も働いていたのだ。

 

5. 能力の低い人ほど自己評価が高い

 中でも有名なのが。ダニングとその弟子のクルーガーの名前が冠せられた「ダニング=クルーガー効果」です。
 これは「能力の低い人ほど、自分の未熟さや他人のスキルの高さを正しく認識できない。そのため、自分を過大評価する傾向がある」というものです。

 (P106)

 能力の低い人ほど、自分の能力の低さを認めずに他人のせいにする。そうすることによって自尊心や自我を守ろうとしているのである。

 私が社会人になって驚愕したことは、言葉を選ばずに言ってしまえば、無能なくせに傲慢な者がやたらと多いことである。もちろん他人から見れば私もそうだったのだろうけれど、世間には想像を絶するほどの愚か者がいて、そいつらは想像を絶するほど傲慢であり、自分の非を全く認めないのだった。

 当時はそれを憤懣と共に不思議に思ったものだったが、今となっては「ダニング=クルーガー効果」というきちんとした名前が付されたので納得することができている。そういう者は私の中で「ダニング=クルーガー」とカテゴライズして、全く相手にしないようにしている。

 

6. 権力を持つと共感する能力が低下する

 カナダのウィルフリッド・ローリエ大学のホグヴィーンらによると、人は自分が権力を持ったとわかった途端、他者に対する思いやりを失ったり、相手の立場で考えることができなくなったりするという研究結果を発表しています。

 (P134)

 これは誰もが経験があるに違いない。上司が理不尽なことを言ってくるのは、権力を持ったために共感能力が損なわれたことによるものであると考えられる。社長直属の組織になりがちな中小・零細企業が往々にしてブラック化するのもこれのせいに違いない。

 零細企業におけるトップの横暴さには往々にして目をみはるものがあって、ここでの詳述は避けるが、人を人とも思わない扱いをしている数々のエピソードがある。

 小さな会社の社長というのは形式上は独裁者と同じだから、理論上は共感能力はゼロということになる。そのようにはなりたくないものだ。

 

7. 長い深呼吸は脳に「休んでもいいよ」というメッセージになる

 東邦大学医学部の麓らの研究では、被験者に1分間に3〜4回のペースで深呼吸をしてもらったところ、リラックスしていることを示すα波が増加し、感情を司る大脳皮質の活動が弱まる兆候が見られたと言います。つまり、深呼吸をしたことで脳がクールダウンして、リラックスモードになったのです。

 (P162)

 「深呼吸をすると落ち着く」というのは迷信や気の持ちようではなく、きちんと科学的な裏付けがあるものであったのである。一息20秒程度の長い深呼吸が効果的だそうである。

 また、私は寝付きが大変に悪くて困ることが多いのだけれど、床に入ってからこのような長い深呼吸をすると眠りにつきやすいことを実感している。人は眠っている時、深く呼吸をしているのをヒントにやってみたところ効果があった。本書でも眠りにつく際の深呼吸については言及されており、自分のやり方が間違っていなかったと確認できて良かった。

 
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