飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

グズ=先延ばしの根本原因と克服する3つの方法

      2017/06/30

戦略的グズ克服術―ナウ・ハビット

 グズ=先延ばしは人間の根本的な問題である。誰もが先延ばしと戦っている。どんなに優秀で行動力のある人間であっても。

 先延ばしは百害あって一利なしであると誰もが認識しているにも関わらず誰もが先延ばしという底なし沼に足を絡め取られてしまうのは、それが人間に備わった基本的なメカニズムだからである。つまりは先延ばしをすることによって何かいいこと=報酬があると遺伝子に刻まれているからこそ、私たちは先延ばしという選択をしてグズになる。

 例えば、人通りの極めて少ない道端に1万円が落ちていたら誰もが拾うだろう。それは拾うことによって1万円という報酬を得られるからだ。それと同じように、私たちはグズになることによって何らかの報酬を得られることを知っている。だから先延ばしする。

 
 『戦略的グズ克服術 ナウ・ハビット』(ネイル・A・フィオーレ著、菅靖彦・訳、河出書房新社)という強烈なインパクトであるタイトルの本が手元にある。本書の18ページにはこうある。

 人々は単に強情を張るためにグズになるのではないし、分別がないからグズになるのでもない。理由があるからグズグズするのだ。あなたは単なる「グズ人間」ではない。1日24時間、ずっとグズグズしているわけではないのだ。

 「グズ」「グズグズ」「グズ人間」と立て続けにまくし立ててくる稀有な代物であると共に、グズ=先延ばしに対する論理的且つ画期的なアプローチが提唱されているものでもある。本書を参考文献にグズの克服の仕方を見ていこう。

 

グズの定義

 本書『戦略的グズ克服術』において、グズ=先延ばしは下記のように定義されている。

 グズとは、仕事をはじめるときや仕上げるときに感じる不安に対処するための心のメカニズムである。

 (P19)

 先延ばしの根本原因は「恐れ」「不安」であることがわかる。例えば、仕事に対してはついつい先延ばしをしてしまうのに、自分の大好きな趣味に関しては積極的になれるという人は多いと思う。もちろん私もそうである。そう考えると、その人が根本的にグズ人間なのではなく、仕事に関しては「不安」「恐れ」を感じているからなかなか手が付けられないという状態であるに過ぎないことが分かるだろう。

 もっともグズになりやすい人とは、仕事をする際に批判や失敗を極度に恐れる人、一つの仕事に専念することによって他の機会が奪われてしまうのではないかと不安にかられる人だと結論してもいいだろう。

 (P20)

 それでは早速、下記で具体的なグズ克服術を見ていこう。

 

グズ克服術1:「しなければならない」「するべきだ」と自分に言い聞かせるのをやめる

 先延ばしの原因は「不安」「恐れ」である。それらネガティブな感情が強ければ強いほど、あるいは締切が近づけば近づくほど「この仕事をやらなければならない」「この仕事はさっさと終わらせるべきだ」と自分に対して動機付けしようとしてしまうけれど、それは全く意味がない。

 親に「勉強しなさい」と言われるとついつい反抗的になって勉強なんて1分たりともしたくなくなるのと同じである。自分に「しなければならない」「するべきだ」とプレッシャーを与えることはただ単に「不安」「恐れ」というストレスを増幅するだけであり、先延ばしが解消されることは決してない。「しなければならない」というのは要するに「やりたくない」の裏返しだからである。

 
 では、どうすればいいか。発想の転換である。考え方を変える。『戦略的グズ克服術』においては次の5つのアプローチが紹介されている。

1.「しなければならない」を「することを選ぶ」に置き換える

2.「仕上げなければならない」を「いつ始められるか?」に置き換える

3.「これは大がかりで大切な事業だ」を「私は小さな一歩を踏み出すことができる」に置き換える

4.「完璧でなければならない」を「人間的でもいいのだ」に置き換える

5.「遊ぶ時間がない」を「遊ぶ時間を作ろう」に置き換える

 (P90-95)

 要点は「『やらされている』から『自分で選ぶ』へ」「『重要な仕事、完璧な仕事』から『少しずつ、間違っても問題ない』へ」考え方を変えてみることである。

 

グズ克服術2:仕事を終わらせることではなく始めることに焦点を当て続ける

 仕事は終わるまでが仕事である。仕事の内容によってはその過程は永遠に思えるほどに長いものであるかもしれない。とすると、まだ手を付けていない段階でもその膨大な仕事量に圧倒されてしまいグズってしまう、仕事が半ばに差し掛かっても出来栄えを気にして進捗が停滞してしまうということがある。

 これはいずれも「仕事を終わらせること」に焦点が当てられていることが原因としてある。あれやこれやの雑念が仕事の邪魔をするのである。もちろん、最終目標は「終わらせること」なのだけれど、それに圧倒されて雑念だらけになってしまうのならば目を瞑ってみて、逆に「目の前の仕事を一歩踏み出すこと」だけを意識してみるのは極めて有効な戦略である。

 
 そのための方法として有用であろう考え方を下記に挙げておく。

 
・ゴールから逆算して予定表を作ることで今すべきことが明確になるとともに、仕事量に漠然と圧倒されるのを防ぐ(逆向き予定表、本書P120)

・やる気が出るのを待つのは無意味であり、実際にやり始めることによってのみやる気は出る(参考文献:『スタンフォードの自分を変える教室』『科学的に元気になる方法集めました』等、多数)

・2分でできると思う仕事は今すぐやる(2分ルール、参考文献:『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』)

 

グズ克服術3:画期的!すきま時間予定表で仕事の管理をする

 本書『戦略的グズ克服術』の総括であり画期的な点は「すきま時間予定表」という1日24時間の時間管理システムを使うことが提唱されている点である。「すきま時間予定表」は従来の「仕事の予定表」や「ToDo管理」とは全く違う、むしろ反対の発想で作られたシステムである。

 
1.「すきま時間予定表」の画期的な点は「仕事の予定をスケジュールに組み込まない」ことであり、逆に「遊びの予定」「習い事の予定」はスケジュールに予めきちんと組み込んでおくことである

2. 30分以上集中して仕事ができたら、仕事をした「後に」スケジュールに書き込む

3. 30分以上集中して仕事をした後には「休憩する」「楽しいことをする」など自分に報酬を与える

 
 「すきま時間予定表」のルールはたったこれだけ。この一見不可思議で効果があるのかないのかわからないようなスケジューリングの狙いは下記である。

 
1. 仕事の予定を予め組み込まないことで「仕事をやらなければならない」から「仕事をやろう」へ意識が変わる

2. 仕事をする時間は1ブロックたったの30分で構わないので、仕事を始めることに焦点が当てられやすい

3. 遊びの予定は予めスケジュールに組み込まれているので、自責の念に駆られずに楽しむことができる

4. 仕事をやった「後に」スケジュールに書き込むので、実際に仕事をした時間が可視化され達成感を得られる

5. 同様にして実際に仕事をした時間帯が可視化されるので、自分の生活リズムが理解でき、もっと効率的なスケジューリングが可能になる

 
 従来のToDo予定表では、予定していた仕事が終わらなかったり着手できなかったりした場合、強烈な挫折感に襲われてしまう。「今日もできなかった。自分はグズ人間だ」と。その挫折感は更なる先延ばしを呼び、事態は悪循環となる。だけど、この「すきま時間予定表」はそもそもが仕事の予定が入っていないので挫折感を味わうことはない。代わりに「仕事をやったぞ」という達成感が蓄積されていくのである。

  *

 本書において繰り返し強調されていることは「遊びの重要性」と「始めることの重要性」である。それは「仕事をやらなければならないから遊んでいる暇なんてない」や「仕事を終わらせなければならない(けど全然始められない)から帰りが遅くなる」という言い訳ゾンビへの会心の一撃であり、本書『戦略的グズ克服術』は「それは全然違うぞ。先延ばしは誰でも克服できる」と書いてある聖典のようなものである。

 
参考文献:

 - ビジネス書