飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

絶対に禁煙を成功させる!最新の薬物依存治療の応用手法3つとその具体例

      2017/10/13

 
 タバコをやめるのが難しいのはタバコに依存性があるからである。

『入門 犯罪心理学』(原田隆之、ちくま新書)においては「薬物がやめられないのは、薬物に依存性があるからであり、意志の力とは関係ない」とのエビデンスを提示した上で、その知見に基づく薬物依存者への最新の治療法について紹介されている。個人の「意志の力」によって依存を克服することを画策するのではなく、科学的・心理学的手法による治療法を施すのである。

 私を含めた多くの人は違法薬物とは無縁の一生を過ごすわけだが、この科学的・心理学的手法による依存治療が生活の中で全く役に立たないわけではない。言うまでもなく合法薬物たる「タバコ」「アルコール」のことである。

 本稿においては、薬物依存者への最新の治療法を応用して「禁煙」を維持・継続する方法について示すと共に、実際に私が禁煙を達成するにあたって実行し効果のあった事例を付記するものである。

 タバコがやめられなかったり、禁煙していたにも関わらず再び吸ってしまうのは、意志が弱いからではなくタバコに依存性があるからである。落胆する必要も自分を責める必要もない。肝要なことは正しく治療することである。

 

1. コーピングスキル訓練

 コーピングとは対処という意味である。つまり、引き金に上手に対処していくことで、脳にスイッチが入らないようにする。

『入門 犯罪心理学』P199

 依存の原因の半分は「習慣」にある。特に喫煙者は一日中タバコを吸っている中で自分なりに「このタイミングでいつも喫煙する」「これを見るとタバコを吸いたくなる」というような習慣や反射が確立されているものである。その習慣や反射を「引き金」と呼ぶ。

 コーピングは「回避的コーピング」と「積極的コーピング」に大別される。

 

回避的コーピング

・引き金を回避することで脳にスイッチを入れない方法である。

・その回避した時間が退屈で空虚で「心に穴が空いた」ものにならないために「その穴を何かで埋める」ことを考える必要がある。

・「死人のルール」とは? =「避ける」「やめる」というのは死人でもできることである。生きている私たちにしかできない「穴埋めをする」対処をすることが重要になる。

私が実行した具体例

・タバコはいつもコンビニで買っていたのでコンビニに寄らないようにした。

・禁煙し始めの頃は飲み会に参加しないようにした。

・休憩時間に喫煙所に行かず代わりに読書をした。

 

積極的コーピング

・それでも回避できない引き金は存在する。具体的には「退屈だ」「憂鬱だ」「イライラする」などの陰性感情への対処である。

・タバコを吸わない人はそれら陰性感情について当然ながらタバコを吸って対処するわけではない。

・であれば、私たちも従来であればそれらネガティブな感情についてタバコで対処していたところを、何か積極的でポジティブな趣味や行動によって対処することが可能である。

私が実行した具体例

・気分転換のために散歩を多くするようにした。

・退屈な時間を作らないように休日はゲームに熱中した。

・生活に彩りを添えるため果物をよく食べるようにした。

 

2. 認知の修正

「陰性感情」に偏らないための認知の修正

 人にはそれぞれ固有の根源的な考え方の癖がある。誰かに何かを指摘された際に「アドバイスしてくれた」と好意的に考える人もいれば「難癖をつけてきやがった」と反発する人もいるし「自分は嫌われているに違いない」と落ち込んでしまう人もいる。

 誰かに何かを指摘されたという一つの事実はこのように受け手にとっては多様に解釈できるものであるけれど、「アドバイスしてくれた」と好意的に考えることができるようになれば余計なストレスやネガティブな感情を抱えなくて済むようになる。つまり前項で挙げた「陰性感情」を抱きづらくなるということである。それが認知の修正である。

 この「認知の修正」については『図解 やさしくわかる認知行動療法』に詳しい。ついつい思考がネガティブに偏ってしまいがちな私のような人にとっては世界を変える可能性がある必読の書であると言える。

 

タバコ自体への認知の修正

 薬物にはまる人は、「薬物はかっこいい」「薬物は嫌なことを忘れさせてくれる」などという認知を持っている。こうした認知を修正することも重要である。

『入門 犯罪心理学』P204

 また、禁煙にとって殊更重要なのは上記引用文中で挙げたように、タバコ自体への認知の修正である。「タバコを吸うと落ち着く」というのは私もかつて喫煙者として実感していたことであるけれど、タバコをやめて気付いたことは「タバコ自体がイライラを増幅させていて、他でもないタバコによってそれを解消していたという一人相撲に過ぎなかったのではないか」ということである。

 なぜなら、タバコを吸わない人はイライラしてもタバコを欲することはないし、私自身、タバコを吸わなくなってからというもの逆にイライラすることが格段に減ったと実感しているからである。

私が実行した具体例

・タバコはイライラを解消するという思い込みを捨てた。

・食後のタバコは旨いという思い込みを捨てた(タバコがなければ食事を美味しく楽しめないなんて不幸であると考えた)。

・「タバコは自由の象徴」だと思っていたけれど、喫煙者の肩身が狭くなる世の中にあってタバコは自分の行動を制限し不自由にしているものではないかと考え直した。

 

3. 渇望への対処

 薬物依存者は、「渇望が生じたら薬物を使わない限り消えることはない」「自分には渇望に太刀打ちできない」などという認知を抱いていることが多い。
 しかし、これらの認知もまた誤りである・例えば、「どんな渇望でも十五分以上は続かない」「薬物を使わないでも適切なコーピングで対処できる」などが正しい認知である。

『入門 犯罪心理学』P204

・ここで言う「渇望」とは「今どうしても強烈にタバコが吸いたい」という衝動のことである。

・「どんな渇望でも十五分以上は続かない」という心理学的事実は覚えておいて損はない。渇望の苦しさは永遠に続くものではないと考えれば少しは気が楽になる。

・「思考ストップ法」。タバコを吸いたくなったら別の行動や思考で気を逸らせる。楽しかった思い出に浸る、明日は何を食べようかと考える、シャワーを浴びる、散歩に出かける、など。

・但し、思考の抑制は逆効果であるとのデータもある(シロクマのリバウンド効果。「今から何を考えてもいいけれどシロクマのことだけは考えるな」と言われると、逆にシロクマが気になって思考がシロクマだらけになってしまう効果)。

 
・「渇望サーフィン」。タバコを吸いたい気持ちを押さえ込むのではなく、逆に「今タバコを吸いたいと思っている気持ち」に焦点を当て、寄せては返すような「渇望の波」を乗り越える。自分の呼吸を「サーフボード」にしてその渇望の波に揺られる様をイメージする。すると次第に渇望は弱まり、消えていくことが確認されている(「どんな渇望でも十五分以上は続かない」から)。

私が実行した具体例

・タバコを吸いたくなったら冷たい水を飲むようにした。無害であるし気が紛れる。

・タバコを吸いたくなったら「本当に吸いたいか?」と自分に問いかける。殆どの場合「いや、そこまで吸いたくはないな」と思える。

・タバコを吸いたくなったら「15分後にまだ吸いたかったら買いに行こう」と自分に言い聞かせる。殆どの場合、15分後にはそこまで吸いたくなくなっている。

 
 また、私の経験として禁煙補助薬は大変によく効く。騙されたと思って試して欲しい。禁煙すると決めた当日、ちょっと吸いたいなと思い始めた頃に薬局で買ってきて半信半疑で噛んで見たところ、数分後には「吸いたいな」が完全に消失していた。これには自分でも驚いた。

 私の禁煙成功はニコレットなしでは達成できなかったと断言できる。

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