飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

嘘は「しぐさ」で見抜ける。FBI捜査官が教える3つのポイント

      2017/11/24

嘘は「しぐさ」で見抜ける。FBI捜査官が教える3つのポイント

Photo by lwpkommunikacio

 
 相手の嘘を見抜けるようになることは私たちにとって一種の強い憧れであると言える。

 他人が何を考えているかなんて誰にもわからない。従って、相手の言動や態度が本心か/嘘かということも誰にもわからない。私たちは主観に基づいて推測するしか手立てはないのである。

 しかし、どんなことにもコツがある。人間においてもっとも器用な箇所は言うまでもなく手であるが、卓越したコツを会得することによって足で器用にボールをコントロールできるようになる。

 同様にして、他人の考えていることなんて最初は誰もが読み取ることができないけれどコツを掴んで訓練することによって、サッカー選手が自由自在に足でボールを扱うことができるように、私たちも自由自在に他人の嘘を見抜けるようになるということである。

 
 そのコツを掴むための最もポピュラーで優れた参考書が『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』(J・ナヴァロ、M・カーリンズ共著、河出文庫)である。

 FBIの優秀な人材の中でも「人間嘘発見器」としての異名を取った著者が自らの経験と心理学的エビデンスに基づいて、一般の人でもわかりやすく写真入りで解説されている。

 本稿においては『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』における要旨を掻い摘みつつ、嘘を見抜く上で重要な要素を簡単に紹介していこう。

1. なだめ行為に注目せよ

「息子さんはこの家にいますか?」と尋ねたとき、女性は喉もとのくぼみに手をやってから、「いいえ、いません」と答えた。私はその行動に気づいたので、さらに質問を続けていった。何分かして今度は、「あなたが仕事で出かけているすきに、息子さんが家に忍び込んだなんてことはあり得ませんか?」と訊いてみた。すると女性はまた手を喉もとにやって、「いいえ、そんなことがあれば、わかりますから」と言った。そのとき私は、息子は家にいるに違いないと思った。母親が喉に手をやったのは、息子が家にいる可能性に質問が及んだときだけだったからだ。(P62-63)

 人の嘘を見破るために注目すべき点は「しぐさ」である。ある質問に答える時・ある話題になった直後にだけ特定の「しぐさ」が見られる場合、その話題が相手にとって不快であることを疑ってみてしかるべきである。その「特定のしぐさ」のことを本書では「なだめ行為」と呼んでいる。

 人は嘘をつく時、プレッシャーにさらされる。真実ではないことを話すという良心の呵責、バレるのではないかという不安など、そのプレッシャーには様々な要因があるけれど、嘘をついている自分に対する重圧・不安・抵抗・ストレス・不快感を「なだめる」ために「なだめ行為」が無意識のうちに発生するのである。

 
 本書で取り上げられている代表的な「なだめ行為」には下記のようなものがある。

・首元に触れたり、喉のくぼみを隠す(ネクタイを直す)
・頬、顔、額、耳、唇など顔の部位を触る
・口をキュッと結んで唇を隠す
・髪の毛をもてあそぶ
・膝を手でこする
・早口になる
・手を隠す
・肩をすくめる
・身体を硬直させ、縮こまる
・ペンや指で机をコツコツ叩く…など

 

2. それぞれの人にそれぞれの「なだめ行為」があると理解せよ

 とは言え、人間はロボットではない。従って、100人いれば100通りの「なだめ行為」があると認識すべきである。その中でも著者の観察によって多く見られたものが上記のものであることに過ぎない。

 つまり、嘘を見抜くために重要な2つ目のことは「よく観察すること」である。

 観察すべきは「相手が膝で手をこすったかどうか」という狭い対象ではなく、「ある質問に答えるの時にだけ特定の「しぐさ」が見られたかどうか」という広い視野を持つべきだ。

 
 例えば、パートナーの浮気を疑っている場合、それを見抜くための私たちがすべきことは、戦略的に話題を振り相手の「しぐさ」を観察することである。こちらが感情的になってはいけない。

 色々なことをランダムにリラックスした状態で聞いてみて、例えば、異性に関する質問をした時だけ相手が何か特定のしぐさをしたとすれば、多少は邪な行為を疑ってみてもいいかもしれない。その「特定のしぐさ」がどのようなものかは相手次第であるので、わからない。そこが観察者としての腕の見せ所だ。

 

3.「鼻をいじる人は嘘をついている」などの固定観念は捨てよ

 私事であるが、かつて交際していた恋人に何かを聞かれたので普通に返答をしたところ、「嘘ついてるでしょ?」と言われたことがある。私は嘘なんてついていなかったのでまさに寝耳に水。彼女は続けた。「鼻をいじるのは嘘をついている証拠だよ」

 確かに私は鼻を触りながら返答をした。だけどそれは私の癖であり、嘘をついている証左としての行為ではなかったのである。にも関わらず、彼女は私が何か隠し事をしているに違いないと決め付けてヒステリーを起こす始末だった。

 
 本書『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』に銘記されていることであるが、「鼻をいじる人は嘘をついている」などの迷信とも言うべき一般的な言説は嘘を見破る上ではあてにしない方が良い。なぜなら、前述した通りに100人いれば100通りの「なだめ行為」があるのであり、私たちがすべきことは「鼻をいじる人は嘘をついている」というステレオタイプを相手に当てはめる演繹的手法ではなく、相手を良く観察した上でどのような「なだめ行為」らしきものがどのようなタイミングで現れるかを観察して結論を推測する帰納的手法だからである。

 本書においても「膝を手でこする」行為は典型的ななだめ行為であると書かれているが、それをそのまま攻略本の如く鵜呑みにするべきではない。冤罪はそうやって生まれる。あくまでも「そういう傾向にあるらしい」というような参考程度に留めておくべきだ。

 
 また、特定の「なだめ行為」が見られたからと言って、すぐに嘘をついてると決め付けてはいけないもう一つの理由として、「ただ単に緊張しているだけかもしれない」というものがある。私たちは嘘をつく時以外にも緊張を紛らわすために「なだめ行為」を無意識のうちにしてしまう。

 従って、相手の嘘を見破りたい時には、できるだけ相手をリラックスさせることが肝要である。何気ない世間話の中に核心を突く話題を自然に織り交ぜてみるのは効果的な方法である。逆に「ちょっと話があるんだけど、そこに座りなさい」と詰問を始めてしまうと、相手の緊張感が高まりすぎ、正しく「しぐさ」を判定できなくなってしまう。

 

おまけ:慎重に判断すること

 以上のことを知れば、誰でも嘘を百発百中の確率で見抜けるようになる。

 なんてことはない。

 本書の著者でありFBIで「人間嘘発見器」の異名を取ったジョー・ナヴァロ氏でも、嘘を見抜ける確率は五分五分であるという。どんな心理学の専門家でもこの数字には変わりない。それほど他人の心を見抜くことは難しいということだ。

 従って、最後の嘘を見抜くための最後のポイントは「慎重に判断すること」である。最初から疑ってかかるのはもってのほかであるし、「鼻をいじるのは嘘をついている証拠だよ」なんてステレオタイプを当てはめるのも尚早である。早とちりで人間関係を壊してしまうのはもったいないことだ。

 - ビジネス書