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【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録(1/5)現在と将来に関わるもの編

      2018/05/06

仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録(1/4)現在と将来に関わるもの編

行動経済学の言わんとするところを一言で表すと「直感は間違える」ということに尽きる。名著『ファスト&スロー』の言葉を借りれば「直感は統計を扱うことができない」ということである。また、投資と行動経済学は非常に親和性が高く、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー『行動経済学の逆襲』でも投資における不合理性についてある程度のページを割いて書かれている。

 
投資には冷静さが肝要であり、冷静さとは自分の行動を俯瞰することである。行動経済学は「人間は合理的に行動していないのではないか」という疑問からスタートしている。人が本当に合理的に行動するならば、誰もが老後のための十分な貯金をし、ギャンブルで借金を抱えることはないはずだ。 

だけど、実際にはそうなっていない。なぜなら人間は不完全であり、不合理に行動するからである。もちろんその不合理性が人間らしいところであるわけだけれど(人が真に合理的であるなら笑いも音楽もゲームも存在しないはずだ)、自分の不合理(間違った行動)の傾向を知ることによって、冷静さを獲得し、より良い人生の一助となり得る。

 
本稿においては特に投資に役立つと思われる行動経済学で頻出する語句をまとめた。標題に「仮想通貨投資に役立つ」と書かれているが、株式投資にも役立つし、普段の生活でも役立つはずである。自分のための備忘録としての意味合いもある。全5回にわけてお届けする予定である。

 
関連記事「仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録」(全5回):
・(1/5)現在と将来に関わるもの編(この記事)
(2/5)利益と損失に関わるもの編
(3/5)結果に関わるもの編
(4/5)見たものが全て編
(5/5)その他の認知の誤謬編

 

現在バイアス ―今すぐに手に入るものに価値を見出してしまう

いま消費することは後で消費することよりも高く評価される。豪華なディナーを今週食べるか、いまから1年後に食べるか選ぶように言われたら、ほとんどの人が、後で食べるより早く食べるほうを選ぶだろう。

『行動経済学の逆襲』リチャード・セイラー(P139)

現在バイアスとは、今すぐ手に入る物に大きな価値を見出してしまうこと。「今すぐに手に入る10,000円」と「1年後に手に入る15,000円」を選べるとすると、人が真に合理的であれば「1年後に手に入る15,000円」を選択するはずだけれど、多くの人は「今すぐに手に入る10,000円」を選んで5,000円を損してしまう。つまり、人は「待てない」のである。

ちなみに「マシュマロ・テスト」という有名な実験がある。「目の前にある1個のマシュマロを食べるのを15分間我慢できたら、もう一つマシュマロをあげる」と実験対象の子どもに告げて、子どもたちがどのような行動を取ったかを観察した実験である。結果、全体の1/3の子どもがもう一つのマシュマロを獲得できた。注目すべき点は追跡調査によって、我慢できた1/3の子どもは将来社会的に成功する傾向にあることがわかったということである。

つまり、現在バイアスに打ち勝つことによって成功する確率が高まることが示唆されている。

 

双曲割引 ―遠い将来のことは価値を低く見積もる

双曲割引は、現在バイアスを言い換えたものであるが、将来における価値を低く見積もってしまうことを示す。「今すぐに手に入る10,000円」と「3年後に手に入る10,000円」は額面上は同額だけれど、心理的には「3年後に手に入る10,000円」は9,000円くらいの価値しかないように思ってしまう。

で、「双曲」というのは遠い将来、例えば「3年後に手に入る10,000円」と「4年後に手に入る10,000円」はそんなに違いがないように思ってしまうことを示している。どちらも9,000円くらいの価値として見積もるだろう。考えも及ばない遠い将来のこととなると割引率が変化しなくなるのである。

「明日は大切な用事があるから」と今日だけお酒を飲まないことはできるけど、「将来の健康に悪いから」とお酒を完全にやめることは難しいということ。はい、飲み過ぎには気を付けます。

 

保有効果 ―自分が持っているものに高い価値を感じること

人はすでに自分が保有しているものには、いつでも手に入れられる状態にあるがまだ保有していないものよりも高い価値を感じる。

『行動経済学の逆襲』リチャード・セイラー(P40)

保有効果とは、自分の持っているものに高い価値を見出してしまい、なかなか手放せないこと。人が本当に合理的であれば、3,000円で買ったもの(好きな歌手のレコードなど)を誰かに「それを自分に3,100円で売ってくれ」と頼まれたら喜んで売り払うはずだ。100円の得になるからである。だけど、一旦手にしたことで愛着が湧くなどするために、殆どの人は断る。

これは投資で言えば、一旦買った銘柄をなかなか手放せない理由にもなる。で、売り時を逃してしまう。あるいは、自分が保有している銘柄こそが至高だと勘違いしてしまうことにも繋がる。投資で成功するためには保有効果を無視するというある種非情な行動が求められるのかもしれない。

私事だが、資金を大量投入した某銘柄が約40倍に暴騰したことがあった。だけど私はもっと伸びると欲をかいて、あるいは保有効果の影響もあったためか売り払わなかった。結果、現在当該銘柄は暴落し、価格も下落傾向にある。それでも損失にはなっていないものの、保有効果によってか未だ売却せずにいる。これが吉と出るか凶と出るかは誰も知らない。

 

現状維持バイアス ―このままの状態を好む心理的傾向

物理学では静止している物体は、外部から力を加えられない限り、静止状態を続ける。人もこれと同じように行動する。別のものに切り替える十分な理由がない限り、というよりおそらくは切り替える十分な理由があるにもかかわらず、ひとはすでに持っているものに固執するのである。

『行動経済学の逆襲』リチャード・セイラー(P223)

現状維持バイアスとは、現状を変えたくないという心理。例えば、劣悪な労働環境の職場からは転職するのが合理的なのだけれど、何だかんだ文句を言いながら転職できないのがまさにこれである。

現状維持バイアスは生活の中に溢れていて、誰もが影響されている。私事で言えば、PS4で同じゲームを2年間毎晩やり続けている。仕事に出た際には同じ蕎麦屋で昼食をとる。暗めの色の服ばかり買ってしまう。髪を切りに行くのが面倒くさい――。

投資で言えば、所有している銘柄をなかなか売れない、違うジャンルの銘柄に手を出せないといったところだろうか。仮想通貨取引で言えば、最初に開設した取引所を使い続けてしまう、コインのウォレット保管が安全なのだがなかなか行動に移せない、などがあるだろう。

また、相場が上昇(下落)傾向にあると「この上昇(下落)はこのまま続く!」と思い込んでしまうことも現状維持バイアスの一種とされる。

 
関連記事「仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録」(全5回):
・(1/5)現在と将来に関わるもの編(この記事)
(2/5)利益と損失に関わるもの編
(3/5)結果に関わるもの編
(4/5)見たものが全て編
(5/5)その他の認知の誤謬編

 
参考文献:

 - コラム