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仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録(5/5)その他の認知の誤謬編

      2018/05/06

仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録(5/5)その他の認知の誤謬編

 
関連記事「仮想通貨投資に役立つ行動経済学用語集の備忘録」(全5回):
(1/5)現在と将来に関わるもの編
(2/5)利益と損失に関わるもの編
(3/5)結果に関わるもの編
(4/5)見たものが全て編
・(5/5)その他の認知の誤謬編(この記事)

 

ハロー効果(後光効果)―ひとつの目立つ印象が全体の印象に反映されてしまうこと

もしあなたが大統領の政治手法を好ましく思っているとしたら、大統領の容姿や声も好きである可能性が高い。このように、ある人のすべてを、自分の目で確かめてもいないことまで含めて好ましく思う(または全部を嫌いになる)傾向は、ハロー効果として知られる。

『ファスト&スロー(上)』ダニエル・カーネマン、P149

ハロー効果とは、一つの目立つ特徴が全体の印象にまで影響してしまうことや、目立つものにしか目が行かないを指す。ハロー(Halo)とは「こんにちは(Hello)」のことではなく、天使の頭の上に浮かんでいる輝く輪っかのことである。

私たちが権威のある人の意見を鵜呑みにしてしまう「権威効果」もこのハロー効果の一種である。「○○大学教授が推薦」「医師監修」と書かれていると、その内容がどうであれなんとなく信用してしまう傾向がある。また、汚らしいセールスマンと清潔感あふれるセールスマンであれば、同じ商品を売っていて同じ話をしていても言うまでもなく清潔感あふれる人の話のほうが信憑性が高く誠実な印象を受けてしまう。

 
株価や通貨における未来の動向については誰もわからない。だからこそ人は未来を知りたがる。で、有名企業のCEOや経済学者、有名投資家などが「仮想通貨に未来はない」と発言するととたんに不安になり、暴落する。これまでもこのようなことが繰り返されてきた。

だけど、よく考えてみれば彼らの発言と市場の将来性には何の関係もない。単なる一個人の発言に過ぎないのである。権威ある人の意見を参考にするのは結構だけれど、重要なことはそれを鵜呑みにすることなく自分の頭で考えることであることは言うまでもない。

かく言う私も過日『ブロックチェーン・レボリューション』というこの分野における極めて評価の高い本を読んで「ブロックチェーンは未来を作るに決まっている」といい気になっているが、もちろんこれもハロー効果の一種である。

 

イケア効果 ―努力を支払った対象には愛着が湧く効果

イケアでは組み立てるのにすごく時間のかかるまぁまぁな家具を売っています。皆さんはどうか知りませんが、僕が組み立てる時はいつもより時間がかかり、より努力を要し、すごく難解なんです。間違った方向に付けちゃったり。それら部品を楽しめてるとは言えないし、過程を楽しめているとは思えない。ですが、作り終えたとき、僕は他の家具よりそのイケアの家具の方が好きみたいです。

ダン・アリエリー:仕事のやりがいとは何か?(12:47〜)|TED

イケア効果とは、労力を注いだものほど好きになるという心理効果である。イケアで購入した家具は自分で組み立てなければならず面倒であるが、その苦労して作ったということで家具に一層の愛着が湧く。人気の経済学者ダン・アリエリーによってごく最近提唱された。イケアはスウェーデン発祥のインテリアショップIKEAである。

かつて出席した友人の結婚式で、新郎は新婦に幾度ものアプローチの末に交際を始め、時は経ち更に幾度ものプロポーズの末にようやく結婚と相成ったと聞いた。特に新郎にとってはそれはそれは幸せな結婚式だったに違いない。

人の結婚をイケアの家具に例えるのはどうかと思われるかもしれないが、このイケア効果は私たちの生活に意外と密着している。やりがいのある仕事とは裁量のある仕事だと言われるが、それは苦労や努力、試行錯誤の分だけその仕事の価値を高く見積もるためと言えるかもしれない。

 
これを仮想通貨投資に応用することはなかなか難しいけれど、例えば、海外の取引所に慣れない英語を読みながらアカウントを開設し、恐る恐る送金し、四苦八苦の末に何とか苦労して買ったコインが暴落してもなかなか手放せないなんてことが挙げられるかもしれない。はい、私のことです。

あるいは、ICOやプレセールで低い当選確率をかいくぐって手に入れたコインに愛着が湧くということもあるかもしれない。

 

フレーミング効果 ―同じ事実でも伝え方によって印象が変わること

同じ情報も、提示の仕方が違うだけで、ちがう感情をかきたてる。

『ファスト&スロー(上)』ダニエル・カーネマン、P160

フレーミング効果とは、同じ事実でも伝え方によってリアクションが異なるという心理効果のことである。殆ど全ての広告はフレーミング効果を考慮して作られているし、セールスマンもこの手のテクニックを駆使して商品に好印象をもって貰おうとしている。例えば次の例がある。

 
A:95%の人が満足しました
B:5%の人が満足しませんでした

 
上のAとBは同じ事実を示しており、論理的には同じ意味の文章である。人(消費者)が本当に合理的で賢いならば、どちらの宣伝文句で広告を打っても売上に違いないはずである。だけど、当然の如くAの商品に比べてBの商品は殆ど売れない。これは事実がどうであれ、伝え方によって人の印象を左右することができることを示している。

・「100gあたり100円」よりも「1gあたり1円」のほうが安く感じる

・「翌月より料金を頂きます」よりも「初月無料」のほうが嬉しく感じる

・「1割増量」よりも「10%増量」のほうがお得に感じる

 
おおよそお金儲けに貪欲な人たちはこのようなテクニックを駆使して私たちの欲望を刺激してくる。高額の投資セミナーや情報商材に誘惑されないためには、フレーミング効果を見抜き客観的に事実を捉えることが肝要となる。

 

自己奉仕バイアス ―良い結果は自分のおかげ、悪い結果は他人のせい

結果が良かった場合には自分の力で、うまく行かなかった場合はまわりの環境のせいだと思い込んでしまうこと。

『投資賢者の心理学』大江英樹、P105

自己奉仕バイアスとは、良い結果が出た時には自分の実力のためだと思い、結果が出ない時には他人や環境のせいだと思ってしまうことである。

かつての職場において同僚が、その上司について「売上が良いのは俺のおかげ、売上が悪い時にはおまえのせいだと言ってひどく怒られる」と言っていたが、まさにその上司は自己奉仕バイアスにとらわれていると言っていいだろう。

 
投資についても、これはある。何らかの銘柄を買って値段が上がれば「さすがは俺の先見の明だ」と自らを褒めそやし、値段が下がれば「おいおいみんな馬鹿なのか?何でこのタイミングで売るんだよ」なんて思ってしまう。

特に2017年はビットコインを買って何もしなかっただけで価値が無尽蔵と思えるほどに上昇し続けていたのであり、(私を含めた)多くの人が「自分は投資の才能がある」なんて勘違いをしていて、実際にそのように発言していたりしていた。もちろん、2018年に入ってからは(私を含めた)多くの人が「投資の才能がある」にも関わらず利益を挙げられていないのは言うまでもないことである。

 
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参考文献:

 - コラム