飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

『#HOOKED』ウェブ広告CVアップのための備忘録11ヶ条

      2018/05/25

♯HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術 (T's BUSINESS DESIGN)

 
『#HOOKED』(パトリック・ファーガン著、上原裕美子訳、TAC出版)が今の時代のマーケティング手法について上手にまとめられた良書であった。無駄がなく、わかりやすく、実例とエビデンスに基づき、ウェブ広告に言及している部分も多かったのが印象的であった。

せっかくなので使えそうな手法と個人的な見解をここに備忘録として残しておこうと思う。

 

1. 何はなくとも印象に残ることが最重要

どんなに秀逸な広告やコンテンツを作ったとしても、覚えてもらわなければ意味がない。情報過多な時代にあって人はよほどインパクトのあることしか印象に残らないし、時間とともに記憶から脱落していく。まずは「認識させる」ことが重要となる。

この「認識させる」にあたっては、良い印象でも悪い印象でも構わない。悪い印象(例えば、何かイラッとするキャラが出てくるなど)でも覚えてもらうという目的は達成でき、殆どの場合、売上は向上する。

例えば、ファミコンのクソゲーと呼ばれる「いっき」がある。クソゲーである。糞。であるにも関わらず、無数にリリースされたファミコンソフトの中の代表作として語り継がれ、なんと糞であるにも関わらず時を超えてPS4でリリースされている。良くも悪くも印象に残ることは重要なのである。

 

2. プリミティブに訴えかける

プリミティブとは「原始的」という意味。人間の本能に訴えかけることで印象に残すことができる。具体的には3つある。「性的な刺激」「食べ物」「人の顔」である。

「性的な刺激」には人の注意を強力に引きつける力がある。「食べ物」であれば高カロリーなものが効果的。「人の顔」については、顔のないバナーよりも4倍長く視線を引きつける効果があるようである。

サムネイルや広告画像にはこれらプリミティブな要素を入れるとクリック率が向上すると考えられる。特に女性の写真を用いると汎用性と効果ともに高い。みんな大好き猫の画像も良い。

 

3. 感情に訴えかける

購入動機において感情は論理に勝る。従って、感情に訴えかける仕掛けを施すのが得策である。特に「恐怖」は効果が高いとされる。

例えば、ドライバーに交通安全を訴えかけるためには事故の写真を提示するのが効果的である。タバコの危険性を周知させるために汚れた肺の写真を提示する手法も見られる。健康食品において「○○が不足すると△△という病気になるリスクが高まりますよ」とおどろおどろしく提示されている例もあるだろう。「ウィルスに感染しています」といきなり表示される悪質な広告もユーザーの恐怖を喚起している。

また、生命保険の広告において愛情に訴えかけるのも「愛」という感情を刺激する常套手段であると言える。

 

4.「じぶんごと」を意識する

単純にして効果の高い手法が「じぶんごと」である。その名の通り「これって自分のこと?」と思わせることだ。

セールスレターの書き方の定石として、まず書き出しで「あなたは○○に困っていませんか?」と提示する手法がある。これはまさに「じぶんごと」の典型である。◯◯に入るものは普遍的なものでも構わないが、ピンポイントなものだと効果が高い。

 
「あなたは楽にお金を増やしたいと思っていませんか?」
「あなたは本当に幸せになる方法について知りたいと思っていますよね?」
「毎日仕事を頑張るあなた。だけど何か退屈な日々だともやもやしていませんか?」

 
これには秀逸な事例がある。2014年、サッカーワールドカップに合わせてコカ・コーラは「ネームボトル」というプロモーションを展開した。コカ・コーラのペットボトルの帯に「TAKESHI」「KANAKO」など週百種類の”あなたの名前”が書かれた商品が店頭に並んだのである。この秀逸な点はそれら名前が「あなたの名前」であると共に「あなたの大切な人の名前」であり、SNS等で広く拡散され、プレゼント用としても訴求されたことであった。

また、「じぶんごと」の応用例としては馴染みのない事象を身近なことで例えることも挙げられる。「あなたが知らない真実」などの煽りも有用。

 

5. コントラストや動きで気づかせる

目立つものには自然と目が行くし、動いているものには注目してしまう本能がある。

CV向上のためのバナーとしてはウェブサイトと調和させつつも色彩のコントラストを高めることが有用となる。単純に目立つからである。ウェブ広告においては「目立つことはいいことだ」というセオリーがあるようである。影を付けてクリックさせたい対象が浮き出ているように見えるようにする手法もある。

最近のウェブ広告では動画として配信されているものもあり、これは動きを出して注目を集める手法と言える。また、主に個人ブログやアフィリエイトサイトなどで見られる「キラリとするバナー」や「左右に揺れるバナー」も動きを加えるCVを高める創意工夫であろう。

 

6. 謎を提示して続きを読ませる

ミステリー小説は読み始めると止まらなくなってしまう。物語に仕掛けられた「謎」が気になって「知りたい」「解決したい」と思わせられるからである。しかも読んでいる間は非常にわくわくしている。

従って、ウェブコンテンツにおいては「謎」を提示することによって読者に積極的に読み進めることを唆すことが可能になる。情報商材の常套手段として、冒頭で「皿洗いのバイトだった私がたったひとつの”あること”をしただけで、寝ながらにして半年で1,000万円を稼ぐことができました」なんて書かれていることがある。どうしてもお金が欲しい読者は「その”あること”って何ぞ?」と興味を持って先を読むことになる。

また、TVCMにおいて「続きはウェブで」というのが流行したことがある。これも続きが気になるCMを提示することでウェブサイトにアクセスしてもらうための戦略である。

 

7. ストーリー化して関心・共感を集める

2010年頃だっただろうか、マーケティング手法として「ストーリーを提示する」というのが喧伝されていたことがある。例えば、飽和状態の音楽市場において新人ミュージシャンが曲を聴いてもらうためには、素晴らしい音楽を作り続けるだけでは駄目で、アーティストのストーリーを提示することで聴き手の感情を揺さぶることができるということである。

 
昔からミュージシャンになるのが夢だった
  ↓
しかし、○○のアクシデントがあった
  ↓
だけど、△△のおかげでそれを乗り越えることができた
  ↓
それでできたのがこの曲

 
2010年にヒットした植村花菜『トイレの神様』は「おばあちゃんと暮らした日々を歌にした」というストーリーを全面に押し出して成功を収めた曲であった。ベストセラーになった『ビリギャル』もストーリーで訴求した面がある。

また、上で示した「皿洗いのバイトだった私がたったひとつの”あること”を――」という例もストーリーとなっている点で読み手に受け入れられやすい構造になっていると言える。

 

8. メッセージは単純に、具体的にする

伝えたいメッセージはシンプルにしたほうが強力に意思決定を促すことができる。

本文の書き方は人によって様々あるだろう。感情に訴えかけるのを好む人もいれば、論理とエビデンスを積み重ねて説得していくタイプもいるに違いない。だけど、結論はシンプル且つ具体的にするべきだ。

買ってほしいのであれば「今すぐご購入を!」などがシンプルで良いようである。あるいは、押し売りしている感を出したくない場合は鉄板である「公式サイトはこちら」で誘導する、「商品の詳細を見てみる」などソフトな表現にする場合もある。様々に創意工夫の余地があるけれど「シンプルで具体的」が鉄則であることに変わりはない。

 

9. 一貫性を持って繰り返す、とにかく繰り返す

「繰り返し」は最高の戦略である。テレビや有線などで繰り返し流れている曲がますますヒットするのと同じであり、曲構造の中でも印象的なフレーズが何度もリフレインされる曲は印象に残ってヒットしやすい。スーパーマリオブラザーズ3の音楽は一貫性を欠いていてプレーヤーになかなか覚えてもらえなかったので、スーパーマリオワールドでは核となるモチーフを決めてそれを各ステージで繰り返すようにしたと聞いたことがある。

演説でも繰り返しは有効な手段である。イギリス元首相トニー・ブレアの「1に教育、2に教育、そして3に教育だ」、アメリカ元大統領バラク・オバマの「Yes we can」。

繰り返すことで記憶に残る。広告においては同じモチーフを繰り返すことが有効な戦略となる。マクドナルドのTVCMでは「I’m lovin’ it」を必ず用いてCMが放送されることにそれが繰り返されることになっている。マクドナルド以外の殆どのCMも同様である。「鳩に困ったら雨宮」もそう。

コンテンツを印象に残るものにするためにも「繰り返し」は単純にして最重要。何か特定のメッセージやインパクトの残るフレーズを繰り返し出現させることは有用だ。但し、サプライズも重要である。ストーリーの中でモチーフを繰り返しながら、驚きを与えることも忘れない。それが秀逸なコンテンツであり、作り上げるには相当な高度な技術を要するものだろう。

 

10.『影響力の武器』6ヶ条

ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』はマーケティングの古典にして今なお有用な名著である。本書では説得力を高めるための6種類の「武器」が紹介されている。下記で見ていこう。

1. 希少性

「本日限定」「残り10個」などである。希少性が高いものを人は欲しがる。これを逃したら手に入らない、ここで買わないと損をすると思わせること。

2. 社会的証明

「98%の購入者が満足」「日本人の80%が使っている」「他のお客様はこちらの商品も購入されています」などである。みんながそうしているならそうに違いないと思わせるテクニックである。私が気に入っているのは「こちらの記事も読まれています」として読ませたい記事に誘導することである。実際に「読まれている」かどうかは関係ない。誘導する際の謳い文句である。

3. 権威

「NASAが開発」「◯◯大教授推薦」「○○さんも使っています」などである。人は専門家が推薦するならそうに違いないと無条件に思ってしまう傾向がある。また、自分が専門家になってコンテンツを作成することも有用である。「○○を10年間続けた私が教える△△」「○○に合格した――」「○○マニアの――」などである。

4. 返報性

人には親切にされたらお返しをしなければならないと思ってしまう性質がある。スーパーの試食などが典型例である。試しに食べさせて貰った上に丁寧に説明されたらその商品を買わなければならないような気になってしまう。

5. 好意

「対象に対してある面で好意を持つと、全体についても好ましく思ってしまう」ことをハロー効果と言う。清潔な身なりをしている人物は人間性も素晴らしいに違いないと思い込んでしまうようなことである。

ウェブにおいては、例えば「デザイン的に見栄えの良いサイトを作る」「丁寧に解説する」「わかりやすい言葉で書く」などによって無条件にコンテンツの内容自体の好意・信頼を高めることができる。

6. コミットメントと一貫性

コミットメントとは「約束」のことである。情報の受け手は一貫性のなさを嫌う(認知的不協和)。言っていることがころころ変わる人はなかなか信頼されづらい。

例えば「その選択をすることはあなたらしい(一貫性がある)」というメッセージを送ることができればCVが高まる可能性がある。

 

11. プライミング効果

プライミング効果とは「事前に提示した情報が後の行動に影響を与えること」である。例えば、ゲーム脳支持者はプライミング効果を論拠として暴力的なゲームを弾劾している。「ゲーム内での暴力的な行動が現実世界での行動に影響を与えるに違いない」と(これに対する反論として、2018年にドイツの研究者がGTA5を2ヶ月間プレイしても人は暴力的にならなかったと研究結果を発表している)。

ウェブコンテンツにプライミング効果を適用するには、例えば、稼ぐ系の記事のサムネイルに山ほどの現金の写真を用いられていることが良くあって、これによって読者に現金を手にすることをイメージさせ、行動を促すことが容易になると考えられる。美容系の記事で若くて肌の美しい女性の写真を提示することも有用だろう。

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