素晴らしい!『デグー 完全飼育』(大野瑞絵【著】)を読んで
デグーは本当に愛らしい。かわいい。
近年認知度が高まりつつある、エキゾチックペットと分類される齧歯類がデグーである。テレビドラマのATARUで主人公が飼っているペットとしても登場したらしい。
しかし、ペットとしての認知・人気の高まりに相反して、デグーの飼育の仕方はまだきちんと確立されていなかった。
私は数年前の2012年春頃からデグーを飼育しているが、その頃は飼育本もなく、ノウハウも確立されていなかった。ネット上での数少ない情報をかき集め、それらの真偽を精査し、デグーにとって健やかであるらしい飼育環境を理解するのに大変苦労したのを覚えている。
デグーは、ハムスターともモルモットとも違う。
デグーはデグーなのである。
つまり、デグーにも彼ら独自の生育環境があり、特徴があり、その飼育の仕方がある。それらをきちんと理解することによって、健やかなデグーと長らく一緒に暮らしていけるのである。信頼関係を築くことができるのである。
知識不足による間違った飼育の仕方によって寿命を縮めてしまった例は枚挙に暇がないと聞く。
この度、そんなデグーの待望の飼育専門書が出版されたのだった。待ちに待っていたので、すぐに取り寄せて熟読した。
写真ばかりのビジュアルブックなどではなく、最新の情報が丁寧にわかりやすく、イラストや写真も交えながら解説された飼育解説書である。
以下、『デグー 完全飼育』に則って、デグーの生態から飼い方、コミュニケーションの取り方までの重要と思われる部分を簡単に記述していこう。箇条書きで失礼します。
Chapter 1 はじめまして、デグー
・デグーは、南米チリの山岳地帯の半乾燥地帯に住む動物である。
・高度な社会性を持ち、3〜7匹程度の群れで暮らしている。
・昼行性である。
・野生下では地下にトンネルを掘って巣としている。
・齧歯類であることには違いないが、分類上、厳密に言えばネズミではない。
Chapter 2 デグーを飼う前に
・世話をする時間があるか、経済的余裕があるか、デグーの個体差や個性を愛せるかどうか、よく考えてから飼おう。
・まだまだ認知度の低いデグーを診察可能な動物病院を見つけてから飼おう。
Chapter 3 デグーを迎えよう
・性別による性格の差がある
オスは、尿での匂い付けをよくする、良く鳴く傾向にあると言われる。物覚えが早いが飽きるのも早い、行動が場当たり的。一般的にオスのほうが早く懐くと言われる。
メスは、物覚えはオスよりも遅いが繰り返すうちに覚えるのが早くなる、慎重に行動する。メスのほうが単独飼育の際のストレスが低いと言われる。
もちろん、個体差があるので厳密にオスはこうである、メスはこうである、とは言えない。
・活発で、健康な個体を信頼できるところから購入、あるいは入手する。
Chapter 4 デグーの住まい
・「かじる」動物であることを認識し、デグーにとって安全な住処を作ってあげる。
・活発に運動するので、広さのあるケージで飼育する。回し車を入れてあげると、運動量の確保、退屈しのぎになる。
・高さのあるケージの場合、ステージを設えてあげると走り回れる広さを確保できるが、デグーが落下して怪我をしないようなレイアウトにする。
・おおよそのデグーはトイレを覚えないので、掃除のしやすいレイアウトにする。
・その他、寝床、給水器、砂浴びグッズが必要(デグーは砂浴びすることにより身体を清潔に保つ)。
・温度差の少なく、騒がしすぎない場所にケージを置く。
Chapter 5 デグーの食
・デグーは完全草食性である。
・イネ科の牧草(「チモシー」が最も入手しやすい)は食べ放題、市販のデグー用ペレットや乾燥野菜は毎日決まった適量を与えるのが良いとされる。
・【デグーに与えて良い野菜】大根、大根葉、小松菜、ブロッコリー、キャベツ、人参、人参の葉、パセリ、水菜、など。生で与えても良いし、天日干して乾燥させたものを好むデグーもいる。
・【野草】タンポポ、オオバコ、ナズナ、クワ、レンゲソウ、ビワ、など。
・【ハーブ】イタリアンパセリ、ミント、バジル、レモンバーム、など。与え過ぎに注意。
・【デグーに与えてはいけないもの】玉ネギ、ネギ、じゃがいも、生の大豆、アボカド、牛乳。その他、ケーキ、ドレッシングのかかった野菜、ジュースなどの人が食べるもの。
・甘いものや種子類への嗜好性が高いが、与え過ぎると栄養バランスが崩れたり肥満になったりするので、欲しがるからといって過度には与えないようにする。
・いつでもきれいな水が飲めるよう、ケージ内に常備しておく。水道水で構わない。ミネラルウォーターであれば軟水が良い。
Chapter 6 デグーとの暮らし
・デグーは本来集団で暮らしている動物なので、飼い主が積極的に仲間になってあげるように心がけることが大切。
・ひと通りの飼育用品を用意してからデグーを迎えるようにする。
・ペットショップなどから迎える場合、デグーが暮らしていた床材を少し分けてもらい、新しいケージに入れておくことで、安心させることができる。
・デグーをおうちに迎えたら
step1: しばらくはそっとしておく。飼い主はいつも通りの日常生活を送り、少しずつ新しい環境に慣れてもらう。
step2: 食事を用意するときに名前を呼ぶなどし、飼い主に慣れてもらう。「この人が近くにいても嫌なことは起こらない」と理解してもらう。
step3: 人が近くにいても気にせずに寝床から出てきたり、食事をしたりするようになったら、好物を手のひらに乗せて与えてみるなどし、積極的にコミュニケーションを取っていく。
・デグーがよく慣れてきたら、室内で散歩させてみても良い。ただし、電気コードなど、室内の安全を確保すること。
・デグーは賢く、仲間と暮らしている動物なので、根気強く愛情を持って接していれば信頼関係を作ることができる。
・無理に追いかけたり、叩いたり、乱暴に扱ったりは決してしないこと。飼い主を怖がって、懐かなくなってしまう。
・しっぽは絶対に掴んではいけない。途中で切れたりしてしまうので。
・デグーの適温は20〜24℃とされる。夏や冬の温度管理に注意。
その他、Chapter 7以降では、デグーの様々な鳴き声についての解説、賢い動物であるデグーに芸を覚えてもらう方法論、繁殖のさせ方、かなりのページを割いて書かれたデグーが罹りうる病気についての解説など、デグーを飼う上でのほぼ全てについて書かれていると言ってもいいだろう。
また、私が本書で感銘を受けたのは、「環境エンリッチメント」という考え方である。
環境エンリッチメントとは、動物が本来暮らしている環境をなるべく再現して飼育しようということである。そうすることによって、その動物にとって身体的、精神的、社会的に健康で豊かな暮らしを実現させることができる。
例えば、
・活動量の多いデグーが本来の運動量を確保できるよう、広めのケージで飼育する、回し車を設置してあげること
・デグーは本来砂浴びをする習性があるので、定期的に砂浴びをさせてあげること
・集団で暮らしている動物であるので、一匹で飼育する場合には飼い主がきちんとコミュニケーションをとってあげること
・自然環境下では大好物をいつでも食べられるわけではないので、好物をケージの中の見つけにくいようなところに隠しておいたりしてみること
もちろん、全てを本来の環境と同様に再現するというわけにはいかない。それは不可能なのだ。
だが、飼い主の配慮によって少しでもそういった環境を構築する努力はできるのである。
著者は、ハリネズミやジリスの飼育専門書なども手がけて高い評価を受けている大野瑞絵さんである。この手の飼育専門書では最も信頼できる著者である。
お値段は3000円程度と、他の動物の飼育書と比べればちょっと割高だが、私にとってこの書籍は3000円以上の価値があるものとなった。
とても丁寧な言葉でデグーの生態、食事、コミュ二ケーションのとり方、病気まで詳しく書かれていて、デグーと一緒に過ごす上では欠かせない唯一の情報源が全ての飼い主に開かれている。この飼育書により、デグーの飼い方のノウハウにひとつの礎が打たれたと言っていいだろう。
『デグー 完全飼育』には、デグーを飼う上でのほぼ全てが書かれている、と先に書いたが、もちろん大変に詳述されている本書とは言え、そこに書かれていることが全てではないし、ページの都合により書き余した部分もあるだろう。
我々と同様にデグーにだって個性はあるし、まだ解き明かされていない部分もあるに違いない。
そういった知見については、飼い主がデグーをきちんと実際に観察して得られるものであると私は考える。そうして、デグーの本に書かれていない部分について理解を深めていくことが、自らが一緒に暮らすデグー個体との信頼をより深めることにも繋がるであろうと思うからである。
デグーの健やかな飼い方がもっと広く知られ、また、デグーという素晴らしいペットが認知されることを私は望むのである。
だって、本当にデグーを愛しているからである。
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