飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

「#本棚の10冊で自分を表現する」やってみました

      2016/12/23

『珍説愚説辞典』

J.C.カリエール,G.ベシュテル【著】高遠 弘美【訳】

 歴史上のあらゆる書物の中から、間違った説や間違った記述だけを膨大に集めてインデックスした辞典。
 とにかく情報量がすごいので忽ち読み終わることはないし、殆ど1ページ毎に笑わせてくれる。
 こんなにくだらないことに情熱を注いだ著者と日本語訳者には敬意さえ払わねばなるまい。
 無人島に一冊だけ本を持って行くとしたら、これを持って行くと決めている。

『怠ける権利』

ポール・ラファルグ【著】

 1日3時間労働を提唱している稀有な書物。
 3時間だけ働いて、あとの時間は旨いものでも食べていようと著者は提言する。
 論理は無茶苦茶なのだが、その支離滅裂さの中に情熱さえ感じてしまうのだった。
 労働に飼い殺されないための象徴として本棚に飾っておいている。

『不愉快な本の続編』

絲山秋子【著】

 小説。この主人公には感情がない。
 どういった行動原理で動いているのか、その土地に住み慣れた頃に、「逃げなければならないと思った」と各地を転々とする。
 何に追われているわけでもないのだが、何かに追われるように逃げる。
 感情がないので、同情の余地なんてない。だけど何故か惹かれてしまうのだ。

『異邦人』

アルベール・カミュ【著】

 人は太宰治の『人間失格』を読んで、「これは私のことを書いている」と衝撃を受けることになっているらしいが、私にとってのそれは『異邦人』だった。
 罪なき人をいきなりピストルで撃ち殺すなんてことはさすがにしたくないが、母の葬式の次の日に恋人と遊び呆けるくらいのことは罪の意識なくやってしまいそうだと思った。

『日々の暮らし方』

別役実【著】

 私がまだ本というものが何たるかを全く知らなかった頃、衝撃を受けたのが本書である。
 全ての本というのは、真面目で、ためになることが書いてあって、高尚なものだと思っていた。
 しかし、別役実の殆どのエッセイには、ひたすらに何の役にも立たないことが極めて論理的に仰々しく書いてあった。しかも、ガチガチの堅い文体で。
 文章を書くということは、こんなにも自由でいいのだと教えてくれた私にとって偉大なる本である。

『牛への道』

宮沢章夫【著】

 これもそう。笑わそうとしていないような顔をして、全力で笑わせてくる。
 別役実も宮沢章夫も劇作家なのだが、劇団の人ってのは基本的にふざけている。発想が自由過ぎる。
 これら2冊は私が文章を書く上での教科書と言っても言い過ぎではあるまい。
 多感な青春期に、このようにものすごく自由な本に出会えて本当に良かったと思っている。

『多肉植物ハンディ図鑑』

羽兼直行【著】

 多肉植物が好きだ。
 多種多様なフォルム、たまに見かける訳の分からない形、基本的にほったらかしでも力強く生きている様、ぷにぷに。
 比較的新しいこの『多肉植物ハンディ図鑑』は掲載種類が豊富で、写真も綺麗なので気に入っている。
 ふざけているとしか思えないような形のサボテン・多肉植物に出会うと、この広い世界の迷宮に迷い込んでしまったかのような感覚がしてヒリヒリと心地よい。

『運は数学にまかせなさい―確率・統計に学ぶ処世術』

ジェフリー S.ローゼンタール【著】

 現実を現実のままに受け止めるのは、或いは、事実を事実として受け入れるのは、意外と難しい。
 例えばそれは、マスメディアによる情報が全てだと思い込んでしまうこと、我々の感情や固定観念が情報にバイアスをかけてしまうこと、多数派や強いリーダーに流されてしまうこと。それらによって、我々は正しい判断をし損なったりしてしまうことがある。
 常に自分の頭で考え、物事を冷静に客観的に捉えるべきであると私は考える。
 これはその格好の入門書である。

『パワー・ポップ』

渡辺睦夫【著】

 音楽が好きだ。割りといろいろなジャンルを幅広く聴くほうだとは思う。
 その中でもパワーポップなるものは、いつ聴いても清々しい。
 秀逸なメロディーが3分間を駆け抜ける、極上のポップミュージックをいつも私は探しているのだ。
 それは嫌なことを一時忘れさせさえする儚くも素晴らしい力だ。

『存在の耐えられない軽さ』

ミラン・クンデラ【著】

 愛と人生に関する名言に満ちた長編小説。おおよそ小説の書き出しとは思えない講釈から物語は始まる。
 私はこの書き出しの4ページ余りをふと繰り返し何度も読んでみるのだが、何が書いてあるのか未だによくわかっていない。
 人生は一度きりしかない。いつ立ち現れるかわからない幾つもの決断には、いつも苦悩させられる。だけど、どういう道を歩めばいいのか我々は知らないし、その選択が正しかったのかどうか確かめる術もない。
 『存在の耐えられない軽さ』、タイトルがかっこいいこともあって本棚に2冊並べてある。


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