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【書評】月収10万円以下でも生きられるという希望『20代で隠居 週休5日の快適生活』大原扁理【著】

      2016/11/17

20代で隠居 週休5日の快適生活

 かつて私が、本気で仕事が嫌だった頃(今でも嫌だが)、生活費を削りに削ったら最低どのくらいの収入で生活していけるのかを試算してみたことがある。
 仕事を辞めてしまっても、質素に暮らしながら、日雇いのアルバイトやネットからの収入で生きていくにはどのくらいの月収が必要なのかを知るためである。

 私の概算によれば、月収15万円だった。
 今思えば、もっと抑えられる食費、自動車の維持費、高めに設定した小遣いなど、無駄が多かった概算だったと気づく。

 15万円か。結構必要だな。だいぶ働かなければならない。
 だとすれば、仕事を辞めるメリットはあるまい。
 こうして私は、嫌な仕事に耐える日々に甘んじることとなったのだった。

 ところが、である。
 『年収100万円の豊かな節約生活術』の著者・山崎寿人さんは、その書名が示す通り年収100万円、つまり月収8万円程度で生活していることを知った。
 そして、ここに紹介する『20代で隠居』の著者・大原扁理さんは月収10万円以下、月7万円台で生活することを5年間続けているのだそうである。やろうと思えばもっと減らすこともできるという。
 両者ともに、自ら望んでそのような生活スタイルを確立し、豊かに暮らしている。間違っても、仕事がないために嫌々そうしているのではないのである。

 7万円である。信じられるだろうか。
 私の試算した15万円という数字は何だったのか。かなり贅沢な数字に思えてくる。

 ここでは『20代で隠居』を読み解き、月収10万円以下で生活していくためのマネジメントとメンタリティについて挙げていき、誰でも(独身一人暮らしに限るが)月7万円台で暮らしていくことは意志の力によって可能なのだということを示していこうと思う。
 私もゆくゆくはそうなりたい。

 

『20代で隠居』基本情報

 私の好きな言葉は「ハタチ過ぎたら人生引き算」。
 あれもできる、これもやりたい、などと足し算で考えていくと、本当に一番やりたいことがどれなのか、他のものにまぎれてどんどんわからなくなること、たまにないですか?
 そんなときには、消去法にしてみるといいかもしれません。
 今すぐやらなくてもいいことを、バシバシ引いていって、あとに残ったものからどうしても死ぬ前にやっておきたいことだけをするのです。

 生活者:大原扁理
 月収:10万円以下
 居住地区:東京都多摩市
 家賃:29,500円(共益費含む)
 クルマ:なし
 携帯電話:なし
 インターネット:自宅への固定回線
 移動手段:主に徒歩か自転車

 住んでいるのは東京都である。ただし、多摩市の駅から徒歩20分の田舎とも言うべき場所である。東京でも探せば家賃3万円以下の物件があることに、まず驚く。
 自動車は所有していない。
 携帯電話はかつては持っていたが、現在の部屋に引っ越すにあたって解約した。通話料が高額なことと、いつでもどこでも呼び出されるのを嫌ってのことである。
 インターネットは、自宅への固定回線を利用している。

 

仕事はどうしてるの?

 週に2日だけ介護の仕事をしている。それだけである。週休5日。月収は10万円以下。

 現在の隠居生活に入る前には派遣やアルバイトで生計を立てていたが、家賃の高い都心に住んで、ストレスを溜めながら連日働いても手元に残るのはほんのわずか、という生活に疑問を感じて退社。
 生活レベルを落とし、支出を減らすことで、少ない収入でもやりくりできる現在の生活スタイルに至る。
 収入は少ないが、ストレスが少なく時間に縛られることないこの生活を気に入っている。

 

食費はいくらかかるの?

 支出のうちで最大の問題は、家賃と食費であると私は考えている。自立した生活をするためには、どう頑張ってもゼロ円にはできないのである。
 私にとって『20代で隠居』の著者はいかにして食費を削減しているのか、それが私の最大の疑問だった。

 なんてことはない。自炊しているのである。
 本書の中には、ある1ヶ月の家計簿が提示されているのだが、お菓子も好きなようでたまに買ったりしている。ジュースも飲んだりしている。つまり、無理をして節約している風ではないようなのである。

 一日の食費は300円程度である。
 基本的に、一日三食、うどん、そば、白米などスタンダードなものを作って食べている。
 特筆すべき点と言えば、肉を食べないことと、その辺で野草を摘んできてうどんやそばの具にしているということであろう。
 本書の中では、食べられる野草の紹介、見分け方、調理の仕方がページを割かれて書かれている。

 つまり、食費を一日300円、月に1万円以下にすることは、それほどハードルの高いものではなさそうなのである。

 

税金・年金は払ってるの?

 所得税は年収103万円以下であれば非課税になるので、通知が来ない。
 国民健康保険料は収入に応じて額が決まるため、年間で12,000円。安い。
 国民年金は免除申請をしている。
 住民税については記述がないので不明である。

 

その他、雑費は?

交通費

 公共交通機関は基本的に使わず、徒歩や自転車で行ける範囲で行動している。
 前述の通り、自動車は持っていないし、所有するつもりもない。

 

交際費

 基本的に一人で家にいることが多いので、あまりかからない。
 数ヶ月に一度くらいは、友人と飲みに行ったりもする。その場合、電車に乗って出掛けたりもする。
 孤独な中で節約生活をしているわけではないようである。
 友人と飲みに行っても月7万円で暮らせるのはすごいな。

 

水道光熱費

 とある月の家計簿において、下記のようになっている。

 水道 2,845円
 電気 1,865円
 ガス 2,405円

 冷暖房は使わないようである。

 

通信費

 携帯電話は解約したため持っていない。
 自宅へのインターネット固定回線は利用していて、6,516円と記入されている。

 

酒・タバコ

 普段は吸わないが、ごくたまにハイライトを吸うらしい。
 アルコールも、普段は飲まない。出掛けた時くらいだろうか。

 

洗濯

 重曹一択。洗剤や柔軟剤の類は使わない。

 

散髪

 自分でバリカンで刈る。床屋にはもうかれこれ10年近く行っていない。

 

 あまり買わない。ファッションは自己顕示欲を満たすものに過ぎないと気づき、服を断捨離。ベーシックなものが僅かにあるだけになった。

 

貯金はしているの?

 ある程度の蓄えがないと不安だと記述されていることから、貯金はしているようであるが、どの程度の額かは未詳である。
 月に何十万円も稼ぎながら全く貯金ができない人もいる中、これだけの低収入で貯金をしているらしいのはすごい。

 

毎日どうやって過ごしているの?

 週に五日は休み。
 それでも毎日、朝は7時くらいには起きるようにしている。規則正しい生活をしている。
 読書が趣味である。図書館に行って借りてくる。
 また、自宅にはインターネット回線が開通しているので、ネットで著作権切れの映画を見たりしている。
 散歩も趣味のうちのひとつ。良い気分転換になる。

 特に、「これをしなければならない」ということにとらわれず、自由にのんびりと過ごしているようである。

 

隠居生活のメンタリティ

お金は僕たちを自由にしない

 近年、ミニマリズムや断捨離など、「お金やモノは僕たちを自由にするものではなく、むしろ不自由にするものである」との主張が多くなされ、それに共感する人が増えている。私もそのうちの一人であり、『20代で隠居』においてもそのような考え方がされている。

 この人たちの言う「自由」って、マネー資本主義社会の中だけの自由じゃん。
 お金がないと自由になれないなんて、超不自由!

 著者の隠居生活は「お金をかけなくても生きていけるようにする方法」を模索することである。

たくさんのお金がなければ生きていけない、わけない

 毎日あくせくと働かなければ生きていけないと思い込んでいることは、ひとつの思考停止であり、勤勉ではなくむしろ怠慢であると私は考えている。

 もちろん、働いてお金を稼ぐことが夢である人はそうすればいい。
 問題なのは、僕たちの大部分が「仕事やだなー」とか「何のために働いているんだろう」とか疑問を感じつつも、稼いだお金でモノを消費し、そのモノを消費し続ける生活を維持するためにはやっぱりお金が必要だから、明日も嫌々ながら働く、との悪循環に陥っていることである。
 僕たちには向上心というやつがあるから、生活レベルを上げていかなければならないと思い込んでいる節がある。それこそが思考停止である。

 たくさん働きたくないならば、ほどほどに働けばいいのである。
 恐れずに生活レベルを下げればいいのである。
 便利なサービスにお金を費やす代わりに自分でできることは自分ですればいいのである。
 一時の享楽に莫大なお金を費やすのではなく、理性的に計画的にお金と向き合えばいいのである。

 冒頭で、私が生活していくためには月に15万円は必要であると算出したと述べたが、それも思考停止だった。
 15万円もいらない。

 少なくとも、月に7万円で生活している人がここにいた。
 特別なことをしているわけではなし、恵まれた境遇にあるわけでもない。
 きちんと自立し、理性と節度を持って生活している。

 私もそういった生活を志向しているのだが、まだまだなのである。
 ついつい退屈だからと高価なゲームソフトを買ってしまったりする。ビールを買ってきてしまう。タバコがやめられない。
 別にそれは悪いことではないのだが、なんとなく退屈だからと、疑問を持ちながらも惰性でそうやって消費してしまうのはどうかと思っているのである。

 

おわりに 将来はどうするの?

 こういった「お金を稼がずに生活レベルを下げて暮らす」ことに対する反論として必ず出てくるのが、「結婚はどうするんだ」「老後はどうするんだ」ということである。
 これに対して、著者は極めて飄々とした意見を述べている。

 では、将来の不安とどう向き合うか。
 向き合いません。
 これは、やるべきこともやらないという意味ではなく、必要以上に心配してもしょうがない、ということです。
 だって未来予測で必ず当たるのは「いつかみんな死ぬ」ということだけですから。
 心配したら終わらないし、キリがない。
 だから、少しづつでもいいから貯金して、今の時点でできることだけやったら、あとはなるようになる! と割り切る。
 そういう選択肢もあるのだと、隠居生活のなかで知りました。
 景気のことなんて心配しても、個人でなんとかできる範囲を超えているのですから、責任を感じて背負わなくても大丈夫です

 
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