飄々図書室

【書評・読書感想文】本にまつわるあれやこれや

【書評】先延ばしへの対処法『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』デビッド・アレン【著】

      2016/11/17

全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

 澄み切った頭が、高い生産性を生む唯一の条件である。

 その澄んだ水のような思考を作り出すためにはGTD(Getting Things Done:物事をやり遂げること)という整理術が肝要だ。
 本書『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』は生産性の世界的権威であるデビッド・アレン氏によるGTDの手引書である。

 とは言え、本書が対象とするのは経営者やマネージャーだけではないし、難しいことでは決してない。この現代社会に生活する全ての人が対象だ。

 

先延ばしに困っている人、必読の書

 特に、ついつい物事を先延ばしにしてしまう人、やることを忘れてしまう人、やることが多すぎて何から手を付けたらいいのかわからずに結局一日を無駄にしてしまう人、もっと効率良く物事をたくさん成し遂げたい人などにとっては、物事をやり遂げるためのヒントが数多く記されて感心する点が多いと思う。
 GTDという何やら難しそうなものを構築する目的でなくとも、やるべきことが多すぎる人生において、悩みを少なく明瞭な頭でより良く日々を過ごすために役立つアイデアの宝庫としておもしろく読める。

 本書はビジネス書の中でも最も評価の高いもののうちの一つであるが、その特徴として圧倒的に実用性の高いことが挙げられる。
 ヒントや考え方をすぐにでも日常生活の中で活かすことができるのだ。

 私が特に参考になったと思える3つを下記に挙げていこう。

 

1. 情報は全て頭の外で管理せよ

なぜやるべきことができないか

 冒頭で述べた「澄み切った頭」とは、いわば頭が空っぽの状態である。
 雑念のない空っぽな状態だから、今やるべきことに集中できるのだ。
 
 我々にとって最も生産性の低い状態は、やることはたくさんあるのにどれから手を付けたらいいかわからないために足踏みをして時間を無駄にすることである。
 私もよくある。

 

あれもやりたいし、これもやりたい状態

 休日、ゲームをやりたいんだけど読みかけの本が気になる。どこか外に出掛けないとせっかくの休日を損した気にもなるから出かけたくもある。ああそうだ、植物の植え替えもしなくちゃ。だけど部屋の掃除もしなくてはならない。あ、冷蔵庫の肉は期限が今日までだったはずだから使い切らないとな――。
 と、やるべきこと・やりたいことが雑然とし、何も手を付けられないままボーッとして休日が終わるのである。結局何もできなかったという思いは挫折感となり、ストレスとなってしまう。

 「ゲームをやりたいんだけど本も読まなくてはならないしあれもこれも」というような頭の中のごちゃごちゃを全て頭の外へ追い出し、頭の外で管理、可視化して整理すること。そのように頭の中を空っぽにしておいて、目の前のやるべきことに集中すること。
 そのシステムこそがGTDである。澄み切った思考にする技術である。

 

頭の外でToDoを管理するとこうなる

 「今日は植物の植え替えと冷蔵庫の肉を使い切り、本を50ページだけ読む。それさえやれば良い。終わったらゲームをやって良い」ということが頭の外で管理されてわかっていれば、自信を持って植え替えをし、さっさと料理を作り、進んで本のページをめくった後にすっきりとゲームをすることができる。やるべきことを全て終わらすための行動が明白になるためだ。
 それが頭の外で管理するということなのである。

 ToDoリスト・やることリストの作成も澄み切った頭を作り上げるひとつの方法だ。
 やるべきことを書き出すことによって、今何をすべきかが明確になる。頭の中の雑念を追い払い、今やるべき仕事に自信を持って集中できるようにするのである。

 淀みない思考で今すべきことに集中するためには、やるべき仕事・気になる仕事を頭の外に追い出して、信頼できるシステムで管理すること。
 それが高い生産性で仕事に臨む秘訣である。

 

2. 「2分ルール」を実行せよ

先延ばしという圧倒的悪魔

 人の最大の功罪は「先延ばし」である。先延ばしには何もいいことはない。
 物事は表裏一体であるというが、やるべき仕事をやらないでおいて締め切りを迎える頃に慌てること・周囲を慌てさせることにはデメリットはありさえすれ、メリットは何もない。

 日々、仕事は膨張する。山ほどの仕事が迫ってくる。仕事が山になれば、どれから手を付けたらいいのかわからなくなって先延ばしになってしまう。
 家事でも同じである。放っておくとシンクに皿が積み重なっていくし、部屋中ホコリだらけになるし、洗濯物は山をなし、ゴミは溜まっていく。どれから片付ければいいのか見当も付かず更に放置してしまう。

 

人生を変える「2分ルール」

 そこで本書で提唱されているのは「2分ルール」である。
 
 「2分でできると思うことは今すぐにやろう」

 たったそれだけ。すごくシンプル。
 なのに、こんなにも人生を変える力を持った習慣は他にない。
 少なくともシンクに皿が溜まることは絶対になくなる。

 2分以上かかりそうなものに関しては、メモを残して後でやる項目に追加しておけば良い。
 メモるのが大事だ。それはつまりやるべきことを頭の外で管理することであり、頭を澄み切らせることである。

 大事なことなのでもう一度言う。
 2分でできることは今すぐやろう。

 

3. 「次に取るべき行動」を明確にせよ

メモの仕方にも先延ばしの原因がある

 例えば、「プリンタが壊れたから直さなくてはならない」という状況の時、忘れないようにメモを残すのは良いことであるが、どのようにメモするだろうか。
 私の観察によれば、多くの場合、ただ「プリンタ」とメモされているのである。
 そう、ToDoリスト・やることリスト・メモにおける最大の間違いは、それが「次に取るべき行動」になっていないことである。「プリンタ」は行動ではない。

 次に取るべき行動が明確になっていないと、人はそれを先延ばしにしてしまう。
 「プリンタ」というメモからは、具体的な対処の方法が一瞬でイメージできない。何をすればいいのか書いていないからわからない。わからないことを人は恐れ、やりたがらない。
 で、先延ばしにするとどうなるかというと、プリンタが必要な時になって初めて「早く直しておけば良かった」と慌てることになるのである。

 やることリストやメモには、「次に取るべき具体的な行動」を書くこと。これは必須の要件である。
 では、「次に取るべき行動」とは何だろうか。

 

「次に取るべき行動」の考え方 ―具体的とは何か

 「プリンタ」というメモでは足りないなら、「プリンタを直す」だろうか。
 精密ドライパーを持ってプリンタを分解する行為を指すのならそれでもいいけれど、多くの場合はそうではない。業者に直してもらうはずだ。
 
 プリンタの修理を依頼するためにも、多くの考えるべきことがある。
 どの業者に修理を依頼するか決まっているか。その業者の電話番号は知っているか。修理ではなく買い替えを検討したほうがいいのか――。
 それによって「次に取るべき具体的な行動」も変わってくる。

 従って、メモすべき「次に取るべき行動」は次のようになるはずだ。
 「最安値の修理屋をネットで調べる」「○○社の電話番号を調べる」「○○社に電話して修理を依頼する」「修理と買い替えとどちらがいいか友人Aにメールで助言を求める」――など。

 どうだろう。
 「プリンタ」というメモと、「○○社にプリンタ修理の電話する」というメモと、どちらが「プリンタを直す」という行為を実行しやすいだろうか。どちらが先延ばしにする可能性が低いだろうか。
 明白なはずである。

 ToDoリストやメモには「次に取るべき具体的な行動」を書こう。

 

【余談】私の方法:動詞でメモする

 ちなみに私のおすすめの方法は、ToDoは必ず動詞で書くことである。
 人は面倒くさがってか、これでわかるだろうと過信するためか、単語でメモをしがちである。「プリンタ修理 電話」というように。

 それをせめて「プリンタ修理の電話をする」と動詞でメモしておくことである。
 そうすることによって単なるメモに躍動感がもたらされ、行動がイメージし易くなるはずで、メモが目に入った時に「やろう」と思う可能性がほんの僅かに高まる上に忘れにくくもなると私は実感している。

 

まとめ

 あれもこれもやりたいのに時間が足りないとか、仕事を山積みにしてしまうとか、やるべきことを忘れてしまうという全ての人に、本書『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』はおすすめである。
 
 具体的・実践的に書かれていて大変にわかりやすい。生産性を高めることは誰にでもできることなのだということがよくわかる。
 数ある仕事術の一冊目・入門書としても最適である。

 さあ、先延ばしせずに始めよう。

 
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▲グズ、先延ばしを「仕事をはじめるときや仕上げるときに感じる不安に対処する為の心のメカニズム」と定義した古典的名著。

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