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【やや長文】西野カナ「トリセツ」歌詞の全てを真面目に分析 〜永久保証の私だから?

この度はこんな文章を読んでくれてどうもありがとう

この度はこんな私を選んでくれてどうもありがとう。
ご使用の前にこの取扱説明書をよく読んで
ずっと正しく優しく扱ってね。

取扱説明書の付属したアナログ商品

 現在、取扱説明書なんて滅多に見なくなった。かつては携帯電話には分厚いそれが付属されていたが、スマートフォンが主流になってから、箱を開ければそのスマホと少しの付属品が入っているだけ。トリセツなし。

 ゲームソフトもそう。パッケージを開ければペラっとした紙が一枚入っているだけ。操作方法は公式サイトにアクセスして確認して下さい。

 そう、オンラインによって取扱説明書は駆逐された。

 にも関わらず、この「トリセツ」に出てくる商品には取扱説明書がきちんと付属されている。大変に親切であり、大変におせっかいである。老人向けの商品なのだろうか。

 

女性性商品化の肯定?

 誤解を恐れずに申し上げるが、女性の特権のひとつに「商品化が容易である」ということが挙げられる。単刀直入に言えば、性を商品として売り出して金銭を得る、ということがかねてより行われてきたし、現状も合法であれ違法であれ、行われているということは誰もが認めるところであろう。

 そして、その現状を女性自身が、憂い、嘆き、差別だ、蔑視だ、人権だ、と改善を求めて訴えている側面があることも我々は知っている。「女性はモノじゃないんだ」と。そして、全ての女性が「私は、私たちはモノではないのよ」と思っていることも、当然ながら我々は理解している。大部分の男性も女性をモノや商品とみなしていないこともご理解頂けていると思う。

 しかしながら、この「トリセツ」では、堂々と女性の商品化が歌われている。「ご使用の前に」とか、あからさまだ。まさにモノだと言わんばかりだ。

 それにも関わらず、この歌「トリセツ」は多くの女性の支持を受けていると聞く。「女性の商品化」がこんなにも直接的に堂々と歌われているというのに、である。まるで、モノとして扱われることを望んでいるようであると言っては過激に過ぎるだろうか。

 一体彼女たちは何がしたいのか、不思議で仕方ないのである。

 

人間関係に正しさなんてない

 それと、「正しく扱ってね」とは何だ。我々は人間だもの、正しさなんてない。

 特に感情に大きく左右される女性の場合、昨日まで正しかったことを今日やったら不機嫌になった、なんてことはザラである。何が「正しく」だ。ふざけるのも大概にしろと言いたい。冒頭からいきなりだが。

 正義の味方なんていないし、白馬に乗った王子様は死んだ。それがこの現代日本のリアルである。

 

傲慢な商品の悪魔対応

一点物につき返品交換は受け付けません。
ご了承ください。

 何を言っているのかわからないのである。一点物であっても、不備や瑕疵があった場合、メーカーあるいは販売者側が責任を問われるのは自明である。当たり前の話。一点物かどうかは関係ない。

 例えば、あなたが一点物の高級腕時計を買ったとしよう。喜びも束の間、何をやっても動かない。電池を入れ替えても、ネジを巻いても駄目。あなたはメーカーに「買った時計が動かないんですけど」とクレームの電話をする。

 メーカーは答える。

 
「一点物につき返品交換は受け付けません。ご了承下さい」

 
 こんなふざけた事態があっていいだろうか。ご了承できかねる。つまり、ここでの教訓は、「女性は理不尽なことを真面目な顔して押し付けてくるから気をつけろ」ということで間違いない。

 

急に秒針がものすごい速さで回ります

急に不機嫌になることがあります。
理由を聞いても
答えないくせに放っとくと怒ります。
いつもごめんね。
でもそんな時は懲りずに
とことん付き合ってあげましょう。

 メーカーは商品に対して最大限の努力をしている。特に日本の企業は優秀だから、改善が的確で迅速である。にも関わらず、この商品は「急に不機嫌になることがある」という不備を改善しようとしていないばかりか、もはや開き直っている。

 腕時計の取扱説明書にこう書いてあったらどうだろうか。

 
「急に秒針がものすごい速さで回ります。原因の究明は不可能ですが、原因を突き止めようとしないとさらに速く回ります。申し訳ございません。でもそんな時は懲りずにとことん付き合ってあげましょう」

 
 そんな商品、いらない。でも、一点物だから返品交換ができない。生き地獄。

 

サプライズ vs 予定調和

定期的に褒めると長持ちします。
爪がキレイとか
小さな変化にも気づいてあげましょう。
ちゃんと見ていて。
でも太ったとか
余計なことは気づかなくていいからね。

 「長持ち」とは何のことを言っているのか、真意を図りかねる。「気持ちが長持ちする」のか、それとも、「外見の美しさが長持ちする」のか。別にどちらでもいいのだが。

 「定期的に」ということは、まるで毎朝鳴るアラームのように、決まった時間に決まった言い回しで決まった箇所を褒めても長持ちするということに違いない。

 

サプライズは予定調和で良い

 私見では、人生においては、思いがけないことが幸せに繋がると考えている。もちろん、二人が出会ったのも偶然であり、思いがけないことである。特に女性は、そういった「偶然」を「運命」という言葉にすり替えて幸せを自己生産する傾向にあると私は思っている。

 けれど、褒めるのは「思いがけず」ではなく、定期的でいいらしい。予定調和でも構わないのだそうだ。録音しておいたものをプロパガンダ放送の如く定期的に流しておくだけでもいいのだと思われる。なぜなら、そのように取扱説明書に書いてあるからである。

 

傾向と対策

 ここにおいてのとっておきの秘策は、定期的、例えば必ず月の初めとかに「あれ? かわいくなったね。どこか変わった?」と尋ねてみることである。そうすれば、「気づいてくれたんだぁ、あのね、前髪がね」とか言って勝手に喋り出してくれるのである。

 我々は、その商品の気を引くためや、コミュニケーションのためにそうするのではない。「定期的に褒めろ」と取扱説明書に書いてあるから、定期的に褒めるのである。ここを間違ってはいけない。

 

ノスタルジーを捨てよ、未来へ進め

もしも少し古くなってきて
目移りする時は
ふたりが初めて出逢った
あの日を思い出してね。

 前項で申し上げたのは、これである。ふたりが偶然という名の運命によって出会ったこと、それを思い出すだけで女性は幸せを維持できる。素晴らしいことには違いない。

 

aiko、椎名林檎との比較

 J-POPにおいては、「出会ったあの日を思い出してね」的なことがしばしば歌われる。ラブソングの決まり文句みたいなものである。

 aikoは名曲「星のない世界」において、次のように歌っている。

初めて逢った日にもう一度逢いに行って そしてまた同じ様に
ぎこちなく合った目の奥にいるあたしを愛して欲しい

 これは本当に秀逸な歌詞であると私は考えている。要するに、西野カナで言うところの「ふたりが初めて出会ったあの日を思い出してね」ということを伝えているのだが、それをここまで奥行きを持って丁寧に表現できるなんて、すごい。おみそれしました。

 
 かと思えば、椎名林檎の「ギプス」ではこうである。

だって写真になっちゃえば
あたしが古くなるじゃない 

 これには衝撃を受けた。つまり、「ふたりが初めて出会ったあの日を思い出してね」の逆である。なんて硬派なリアリスト。

 どれが好きかは完全に個人の嗜好に委ねられる。ちなみに私はaikoのが好きである。

 

「古い=悪い」じゃないぞ

 それと、「古くなって」という表現は頂けない。我々はモノではないので、古いも新しいもないのである。もしもそれを「古い」と言うのなら、古いなりの価値を努力によって磨けばいいだけの話である。ヴィンテージという市場があることからもわかるように、「古い=悪い」ではない。

 「古くなった」と自分を卑下し、過去を振り返り、出会ったあの日を思い出させることには何の意味もない。終わってしまった過去に縛り付けられているだけ。そこからは、懐かしさ以上のものは何も生まれない。「ふたりが初めて出会ったあの日を思い出してね」と相手に要求することは単なる怠慢に過ぎない。

 我々は未来に向かって歩いていかなければならない。ノスタルジーなんて無駄なだけだ。

 

永久保証…だと…?

これからもどうぞよろしくね。
こんな私だけど笑って許してね。
ずっと大切にしてね。
永久保証の私だから。

 
 ネット上で見つけたアンケート結果を先に掲載しておく。 

Q:これまで浮気・不倫をしたことありますか?
A:【女性】はい 44%
A:【男性】はい 40%
※モデルプレス調べ(渋谷、原宿で男女100人に街頭調査)

交際(結婚)相手以外にパートナーがいる、と回答したのは、
男性26.9%
女性16.3%
※相模ゴム工業株式会社調べ(2013年、47都道府県の20~60代男女14,100名を対象にしたWEBアンケート)

 言うまでもなく、私が追及したいのは、「永久保証の私だから」の部分である。女性が「永久保証」だった例なんて一度もないのは歴史が証明するところである。世の女性たちの身辺で、不倫だの浮気だのの話題が事欠かないのは、女性が決して何人たりとも「永久保証」ではないことの証左である。

 それは、数字を見ても裏付けられる。

 上記アンケートにおいては、「浮気・不倫をしたことがある、現在している」と回答した男女別の割合が示されている。予想通りと言うべきか、男性の方が女性を上回る数字が現れていたりする。

 しかし、女性のポイントも圧倒的に少ないというわけではないのである。女性が「私は永久保証だ」と声高に叫び、「そうだそうだ」と寄り集まって共感し、それを取扱説明書として押し付けてくるためには、男女差がもっと付いてなければ(例えば、男性25%、女性1%とか)、説得力を持たないのではないか。「永久保証」と喧伝しながら、エラーの出る確率が20%を超える商品を誰が買おうと思うだろうか。

 男性の浮気を正当化したいのではなく、「永久保証」という根拠のない美化を弾劾したいのである。

 

気持ちではなく、センスが大事

意外と一輪の花にもキュンとします。
何でも無い日の
ちょっとしたプレゼントが効果的です。
センスは大事。
でも短くても下手でも
手紙が一番嬉しいものよ。 

 上記の「永久保証の私だから」もそうだが、ひとこと余計なのである。「センスは大事」の部分である。

 本来なら「センスが大事」なのではなく、「気持ちが大事」なのではないだろうか。それを「センス」などという漠然とした言葉にすり替えるということは、要するに、「センスのあるものが欲しい」ということに他ならない。「気持ち」について言及されていないということは、「気持ちのこもった普通のもの」よりも、「気持ちのこもってないセンスのあるもの」のほうが好きであるということである。

 センスのあるものは大概、高額である。つまり、「高価なプレゼントが大事」ということだろう。大事MANブラザーズバンドが聞いたら泣くぞ。

 

壊れた場合の対処法

もしも涙に濡れてしまったら
優しく拭き取って
ギュッと強く抱きしめて
あなたにしか直せないから。

意外と簡単に直る

 取扱説明書で言うところの「故障かな? と思ったら」の項である。

 この商品は、壊れそうになると前兆として「涙に濡れる」症状が現れるらしいので、識別は容易である。涙に濡れていたら、「あ、壊れそうだ」と思えばいいのだ。

 修理の方法としては二段階あると記されている。

 
 一、涙を優しく拭きとる
 二、ギュッと強く抱きしめる

 
 たったこれだけで直る。道具も専門的知識も不要。やはりお年寄り向けの商品に違いない。

 

故障時の轟音

 当該歌詞を読んで真っ先に思い出したのが、マキシマムザホルモンの「糞ブレイキン脳ブレイキン・リリィー」におけるサビ前の歌詞である。

ガー・・ガガピガガ…ガガガ…ピーガー・・・・
ガガピガ・・ピガガガガガ…ピー・・ガー・・
ガー・・ガガピガガガガガ…ピー・・ガーーーー
…ガガピガピガガガガガーピーガーー…・・

 この「トリセツ」に出てくる永久保証の商品も、壊れかけの際には涙を流しながら、

ガー・・ガガピガガ…ガガガ…ピーガー・・・・
ガガピガ・・ピガガガガガ…ピー・・ガー・・
ガー・・ガガピガガガガガ…ピー・・ガーーーー
…ガガピガピガガガガガーピーガーー…・・

 と唸りを上げるのだろうか。

 

これ以下の文章もどうぞよろしくね

これからもどうぞよろしくね。
こんな私だけど笑って頷いて。
ずっと大切にしてね。
永久保証の私だから。

レビューは大荒れか

 「こんな私だけど」と自分を卑下したような語り口になっているということは、それが欠陥商品であると自ら認めているようなものである。もちろん、我々人間は皆不完全なわけだが、もしこの商品がAmazonで販売された際には、カスタマーレビューが大荒れになることが容易に予測される。

 

永久保証…?

 浮気について悪い印象を持たれているのはいつも男性である。

 「男は浮気をする生き物」と決めつけられたり、少し帰りが遅いだけで浮気の嫌疑をかけられたり、ひどい例になると、こちらが少しスマホを触っているだけで浮気相手とLINEでもしているはずだと勝手に思い込まれたり、友人(同性)から届いた年賀状が私が家を空けている隙に勝手に処分されたり、就職活動を始めたら急に怒りだしたり、就職先に女性はどのくらい在籍しているのか執拗に聞いてきて、多いとなれば無条件に不機嫌になったり、別れ話の際に刃物が出てきたり、揚げ物の最中の油(高温)が飛んできそうになったりと、踏んだり蹴ったりである。死活問題。

 
 とにかく女性というやつは、架空のライバルを勝手に作り出し、その仮想敵に対して絶えずヒステリーを起こしている、と私は考えている。にも関わらず、先のアンケートによれば、女性だってかなりの高確率で浮気・不倫に首を突っ込むのである。何が「永久保証」だ。

 男性の浮気を正当化したいのではなく、男性の架空の浮気に対する女性のヒステリーを弾劾したいのである。

 

本音がポロリ☆

たまには旅行にも連れてって
記念日にはオシャレなディナーを
柄じゃないと言わず
カッコよくエスコートして
広い心と深い愛で
全部受け止めて

 この「トリセツ」で作詞者が一番言いたいのはこの部分に違いない。他の部分なんてどうでもいい。手紙? 永久保証? たぶんそんなものは、単なる付属品に過ぎないと思われる。

 
・たまには旅行にも連れてって
 → あなたと過ごす毎日の繰り返しはひどく退屈だから、事あるごとにリフレッシュしたい。

・記念日にはオシャレなディナーを
 → 高級なものをおごってほしい(友達に自慢するために)。

・柄じゃないと言わずカッコよくエスコートして
 → イケメンがいいなぁ。白馬に乗った王子様とか。

・広い心と深い愛で全部受け止めて
 → 私のどんなわがままも、仏の如く、嫌な顔ひとつせずに叶えて欲しい(あなたはお金だけ稼いでくれればいいのよ)。

 

永久…保証…だと?

これからもどうぞよろしくね。
こんな私だけど笑って許してね。
ずっと大切にしてね。
永久保証の私だから。

 「笑って許してね」と書いてあるが、笑えるうちが華である。そっちは商品かもしれないが、こっちは生身の人間なのである。

 

説明書のくせに論理的じゃない

 そんな女性だって、かなりの確率で浮気・不倫をすることは先に述べた。男性が責めると「だって寂しかったんだもん」なんて言い訳を炸裂させる。泣く。わめく。「寂しくさせたあなたが悪いのよ」と責任転嫁する。泣く。刃物が出てくる。

 言動がいちいち全く論理的でないのである。取扱説明書を作成する能力が本当にあるのかどうか疑わしい。

 

永久保証に代わる代替案

 ソースが見つからなくて遺憾なのだが、海外(確かアメリカ)で結婚生活を一年ごとの更新制にして、何十年間も円満である夫婦が紹介されていたのを覚えている。

 一年ごとに、このまま夫婦でいるか、いないかを決めるのである。もちろん、契約が更新されなければ離婚ということになるのだが、その夫婦は結婚以来、契約を更新し続けている。契約更新制にすることによって、いい意味で緊張感が生まれる。その結果、思いやりをもって日々パートナーに接することができるのだそうである。

 この例から学ぶとすれば、「永久保証」だなんて馬鹿げているのかもしれない。「永久保証」によって、女子の好きな新鮮さ、ドキドキ、トキメキの類は損なわれる可能性を孕んでいる。自分で自分の首を締めるようなものだ。この商品においては「永久保証」が最大の売りであるようなのだが、一般の商品と同じように一年保証くらいにしておくべきだったのかもしれない。それが男性のためでもあるように思う。

 

まとめ

 この取扱説明書は、要求ばかり書いてあって、男性側にもたらされるメリットが何一つ記されていないことを特徴とする。

 腕時計の取扱説明書でさえ、「このように操作するとアラームが鳴ります」くらいの有意義な情報が書いてあるに違いないのだが、このトリセツには「急に不機嫌になることがあります」と書き殴られている。

 この商品は、まだAmazonでは販売されていないようだが、購入すべきか、すべからざるか、それは人生においての悩ましい大きな買い物のうちのひとつに挙げられると私は考える。

 
■本稿における著作権の考え方
 本稿においては西野カナ「トリセツ」、aiko「星のない世界」、椎名林檎「ギプス」、マキシマム ザ ホルモン「脳ブレイキン糞ブレイキン・リリィ」の歌詞を「引用」している。適法な「引用」のためには

1. 明瞭区分性
2. 主従関係

 の2つが要件とされている。(著作権法第32条、最判昭和55.3.28)。

 
1. 本稿においては歌詞引用部分をblockquoteタグで囲うことで明確化しており、本文中の引用部分のデザインについても背景色がグレーになる、「”」の記号が付記されることで、当該部分が引用であることが明示されているため「明瞭区分性」は充分に満たしていると考えている。

 
2. 本稿においては西野カナ「トリセツ」の歌詞全文に加え、上述した3曲の歌詞一部を「批評のために」「引用」している。歌詞引用部分は845文字であるのに対し、批評本文は6183文字(標題含む)であり、主従関係は明白である。また、引用文全てに対して批評をしており、且つ、著作物の改変などは行っていない。

 
 従って、本稿における歌詞の掲載は著作権法に違反するものではなく、適法な「引用」であると考えている。



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