『俺ガイル。続』第9話の感想・考察。雪ノ下は何を救おうとしたのか?

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第9話「そして、雪ノ下雪乃は。」

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』(『俺ガイル。続』、二期)の第9話である。本稿では主に「比企谷は由比ヶ浜のことをどう思っているのか?」「雪ノ下”いつか私を助けてね”の意味」「雪ノ下は誰を救いたいと思っているのか?」の3点に絞って考察・解説して行こう。

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比企谷は由比ヶ浜のことをどう思っているのか?

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『俺ガイル』の物語のテーマは大きくは下記の3点であると私は勝手に推測している。

 
1. 雪ノ下雪乃の成長物語
2. 比企谷の成長物語
3. 比企谷と由比ヶ浜のラブストーリー

 
ラブコメ展開よろしく比企谷の周りには彼に好意を寄せている(らしい)女の子が登場してくるが、由比ヶ浜以外のそれ、特に雪ノ下と比企谷の関係は大いなるミスリードであると考えている。由比ヶ浜が比企谷に想いを寄せていることは一期第1話から一貫している。で、比企谷もそれに気付いている。

比企谷が由比ヶ浜の好意に気づきながらも全く反応しないのは、高い自意識のためである。中学時代に折本への告白が失敗したことがきっかけとなって「好意らしきものを好意と受け取らない」という堅牢な自意識が構築されて今に至る。

 
由比ヶ浜が向ける「好意らしきもの」について比企谷は、誰にでも向ける態度なのではないか、自分が好意と勘違いしているだけじゃないか、と訝っている。だから「敢えて」スルーしているのであって、由比ヶ浜に関心がないわけではない。自意識によって関心がないように装っているだけである。

ここで由比ヶ浜は「二人でまた来たい」ということを比企谷に仄めかしている。比企谷は一期の文化祭のことを思い出す。で、「まぁ、そのうちな」と口約束をする。二人の関係は一歩前進したように見えるけれど、具体的なことは何も言わないので実際に進んでいるかどうかはわからない。

 
物語の結末としてこの二人がくっつくかどうかはわからない。由比ヶ浜人気はあまり高くないようなので、そうなった場合、作品に非難が浴びせされる可能性が大いにあるし、由比ヶ浜がミスリードである可能性もある。だけど、作品の一貫性という意味でも、私が由比ヶ浜を推しているという個人的な意味でも「由比ヶ浜エンド」か「誰エンドでもないエンド」になればいいなと勝手に思っているところである。

 

雪ノ下「いつか私を助けてね」

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雪ノ下と比企谷が二人きりでアトラクションに乗るシーンで考えるべきことは3点ある。

1. 陽乃は雪ノ下雪乃のことが好きでちょっかいを出している

「小さい頃のことよ。姉さん、こういうところに来るといつもちょっかいを出してきたの」という雪ノ下雪乃の台詞からわかることは、姉の陽乃は雪乃のことが好きでちょっかいを出しているということである。

第3話で葉山によって示された陽乃の行動原理は「好きなものを構いすぎて殺すか、嫌いなものを徹底的に潰すけれど、興味のないものに対しては何もしない」ということであり、「構いすぎる」とは「ちょっかい」と同義である。陽乃は何を考えているのかわからない恐るべきキャラクターとして描かれているが、雪乃のことが嫌いで潰そうとしているのではないことがわかる。

 

2. 雪ノ下雪乃の初めての自己主張

雪ノ下雪乃が「助けてね」だなんて人に頼み事をするのは初めてのことである。これは第8話で比企谷が奉仕部に初めて頼み事をしたことに影響されたと考えることができるだろう。

あまり得意ではないアトラクションに乗ることについて「由比ヶ浜さんと一緒の時は大丈夫だったから。だからたぶん、大丈夫よ」と全く論理的でない言い回しをしているところから、雪ノ下雪乃の強固な論理性は第8話で瓦解し、少しは本音で話すことができるようになっていることが示されている。

また、このことから雪ノ下雪乃は比企谷と由比ヶ浜を「自分を助けてくれる人」として認識していることがわかる。それが良いことなのか悪いことなのかは現時点ではわからない。

 

3.「いつか私を助けてね」は何を意味するのか?

雪ノ下雪乃の「いつか私を助けてね」という台詞には「何から」助けて欲しいのかという対象が抜けている。姉の話題の後に「いつか私を助けてね」と言っているということは、「姉から」とみなすのが自然である。陽乃は「好きなものを構いすぎて殺す」のであり、それを未然に防いで欲しいということだろう。「殺す」はもちろん暗喩である。

但し、陽乃自身は「雪乃のため」と思って一連の行動に出ている。雪ノ下雪乃は問題を抱えている。その問題を解決するために平塚先生は奉仕部を作り、陽乃は妹にちょっかいを出している。

つまり、誰が正しいというのはない。比企谷が雪ノ下雪乃を助けることが正しいとも言えないし、陽乃の行動が間違いというわけでもない。「いつか私を助けてね」という台詞が今後の展開の鍵となるのは間違いないだろう。どのような着地を見せるのかが見どころである。

 

雪ノ下は何を救いたいと思っているのか?

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比企谷「まだあの人みたいになりたいと思ってるか?」
雪ノ下「どうかしら。今はあまり思わないけれど、ただ、姉さんは私にないものを持っているから」
比企谷「それが欲しいとか?」
雪ノ下「いいえ、なんで私はそれを持っていないんだろうって、持っていない自分に失望するの。あなたもそうよ。あなたも私にないものを持っている。ちっとも似てなんかいなかったのね」
比企谷「そりゃそうだ」
雪ノ下「だから、別のものが欲しかったんだと思う。私にできることが何もないって気づいてしまったから、あなたも姉さんも持っていないものが欲しくなった。それがあれば、救えると思ったから」
比企谷「何をだ?」
雪ノ下「さあ、何かしら」

アトラクションに乗り終えた後、この会話からわかることと考えるべきことを挙げていく。

1. 雪ノ下は陽乃みたいになりたいとはもう思っていない

雪ノ下の姉である陽乃は完璧に見える人間である。聡明で、人付き合いも良い。かつて雪ノ下雪乃は姉に憧れを抱いていたようだが、「今はあまり思わない」と本人の口から明言されている。これは嘘ではないだろう。

 

2. 比企谷と雪ノ下は似ていないと、雪ノ下は認識した

第7話の終わりで雪ノ下は比企谷に「それで壊れてしまうものなら、それまでのものでしかない。違う?」と念押ししている。これは「馴れ合いなど要らない」という同じ信念を持つ似ている者同士として、その信念の再確認であると共に、信念を論拠とした比企谷への非難の意味が含まれていた。

しかし、第8話を経て雪ノ下は、比企谷と自分は決して似ているわけではなかったと認識した。生徒会長選挙の際の対立、また、比企谷が「本物が欲しい」と自己主張をした際に雪ノ下が逃げ出してしまったことは、その差異を示す象徴的な出来事だろう。何が似ていて何が似ていないのかというのは考えどころであるが、明確に語られるわけではない。とにかく二人は似ているようで似ていない。似ていない二人の関係が改めてここから始まる。

 

3. 雪ノ下は何が欲しくて、何を救おうとしたのか

雪ノ下が欲しかったものは「陽乃も比企谷も持っていないもの」であり、それ以上は語られないし比企谷も言及しない。雪ノ下が欲しかったものとは何だろう。

そもそもこのシーンで言及されているのはいつのことだろうか。「だから、別のものが欲しかった」と雪ノ下雪乃が思ったのはいつのことだろう。それによって欲しかったものが何を指すのかも変わってくる。

 
1) それが「生徒会長選挙のとき」を指すなら、雪ノ下が欲しかったものは「人の上に立つこと」だろうか。特に陽乃が生徒会長をやっていないという事実を考えると整合性がある。で、比企谷の自己犠牲を阻止できるので「比企谷」を救うことができる。

2) それが「生徒会長選挙の後」のことであるとすれば、欲しかったものは「空気を読むこと」だろうか。この説を採用することによって「私にできることが何もないって気づいてしまったから」との整合性が取れる。で、救おうとしたのは「奉仕部の人間関係」となる。大胆不敵に意訳するなら「奉仕部の人間関係」=「大切な友だち」とでもしてもいいかもしれない。

 
曖昧である上に雪ノ下自身が焦点をぼかして話しているので、上記のような推論しか出てこない。但し、少なくともネガティブな意味合いが込められたシーンではないと思われる。

 
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