俺ガイル完(3期)第2話の感想と考察。「本物なんて欲しくなかった」の意味とは?

俺ガイル完、第2話「今日まで、その鍵には一度も触れたことがない。」の考察をしていく。過去回や原作、原作者のツイートを参考にしながらなるべく丁寧に読み解いていくつもりだ。本文は7500字の長大なものになってしまった。

長いですがぜひとも最後まで読んでいただければと思います。

 
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葉山との会話と回想(Aパート)

葉山はブラックコーヒーを選ぶ

葉山との会話から第2話は始まる。

第1話の考察で、比企谷の飲み物(マッ缶 or ブラックコーヒー)が心情や状況を表すメタファーになっていると述べた。ここで比企谷は前回同様マッ缶を、葉山はブラックコーヒーを選択する。

従って、葉山の心情・状況はよろしくないことが暗喩されている。ここにきて突然悪くなった、というよりは、家の問題(葉山と陽乃は政略結婚をさせられつつあるらしいこと)などで身動きが取れない人生を余儀なくされていること、そして葉山自身がそれを本心ではよく思っていないことを示すものと思われる。

陽乃への相談

ここから回想である。原作では時系列順に、第1話の「雪ノ下の依頼」と「川なんとかさん」のエピソードの間に記述されていたものだが、アニメ版では回想としてここで扱われている。第1話で雪ノ下と小町の自立を類似のものとして詰め込みたかった意図があると思われる。凝った展開だ。

陽乃は由比ヶ浜を威嚇している?

「私たちのこと。これからの私たちについて。……私と姉さん、それと母さんの話だから」
「……ああ、そっちか。わたしが聞きたい話じゃなさそうだね」
そして、ため息をひとつ吐くと、ついっと視線を動かした。
「ね?」
同意を得るように、そう言葉を投げかけた先には由比ヶ浜がいる。その視線に由比ヶ浜が身を強張らせた。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P69より

陽乃が彼らの三角関係みたいなものを弄び掻き回しに行っている印象を受けるが、おそらく違う。

陽乃は、雪ノ下が比企谷を好きなこと、それにも関わらず雪ノ下が行動できないことにおそらく気づいている。だからその話をしに三人で来たのかと思ったので、肩透かしを食らった。ちなみに「そっちか」とすぐに反応しているところを見ると、陽乃は雪ノ下が家の跡継ぎになりたいことを知っていたようである。

由比ヶ浜に「ね?」と視線を向けた意味は、威嚇ではない。原作に「同意を得るように」と書いてあるからである。由比ヶ浜と陽乃が共通して知っている(と思われる)事象は「雪ノ下が比企谷を好きらしい」ということ以外にない。

ここでの陽乃の「……ああ、そっちか。わたしが聞きたい話じゃなさそうだね」と、第1話での由比ヶ浜の「ゆきのんの答えはそれなのかな?」は似たような意味である。それが本当の答えじゃないことを見透かされている。

雪ノ下「せめてこれだけはちゃんと言葉にして」

雪ノ下「だから、実家に戻るわ。そこで私の将来の希望について、母さんにちゃんと話をしておきたい。……それが叶わないにしても、悔いを残さないように。これは……せめて、これだけはちゃんと言葉にして、納得できるようにしたい」

この台詞について原作者がツイッターで言及している。

ここで言う「それ以外のこと」とは、雪ノ下が比企谷に恋をしていることだろうか。

なぜ「言葉にすることもできない」のか。ひとつは、由比ヶ浜が比企谷に思いを寄せていることを知っているから。もう一つは、現時点で雪ノ下は比企谷に思いを伝える資格がないと自身をみなしているから(比企谷「雪ノ下の問題は雪ノ下自身が解決すべきだ」を受けて)、あたりが妥当な考察だろう。

陽乃「ま、いっか。少しはマシになった」

陽乃は雪ノ下に協力する。2期では陽乃は、一見、雪ノ下と敵対しているのか、ちょっかいをかけているだけなのかよくわからない不気味なキャラクターであったが、ここでは本心で協力する。雪ノ下の邪魔をしたり自立を阻もうとしたりする意図は全くない。

そもそも陽乃はこれまでもずっと好き故のちょっかいを雪ノ下にかけ続けていた。2期3話で葉山が陽乃の行動様式について「好きなものを構いすぎて殺す」と言っていた。これまでは雪ノ下を「構いすぎて殺」してきたのかもしれないが、ここではそうではなく「協力する」という選択を取る。

また、「構いすぎて殺す」というのは比企谷にも見られる行動様式である。比企谷はおせっかいであり、自らの正義感に基づいて独善的に行動しがちである。そうやって雪ノ下はかつて生徒会長になることができなかった(殺された)。

断捨離の余談

由比ヶ浜「断捨離しよーよ!こないだ断捨離の本ちょー買ったの!」
雪ノ下「その本をまず断捨離するべきね」

さり気なく置かれているこのやり取りは原作にはない。かなり笑った。

陽乃のとの帰り道

タバコの臭い

「タバコ」「朝までコース」などというワードから「一体誰と飲んでいたのか?」と疑問に思っていた。陽乃は葉山と政略結婚させられつつあるらしいから、他の男と二人で朝までコースとは考えにくい。物語では語られない陽乃の更なる陰の部分があるのか……?などと邪推していたら、原作者がツイッターでヒントを出してくれていた。

答えを言うのは野暮というものだろう。意外とシンプルな答えだった。何を話していたのかは、この先の物語からある程度推測できると思われる。

赤信号と青信号

陽乃「わたしのことは関係ないでしょ。今話してるのは雪乃ちゃんのこと」

アニメ映像では「わたしのことは関係ないでしょ」で赤信号、「今話してるのは雪乃ちゃんのこと」で信号が青に変わる。雪ノ下が確実に前に進んでいることを表している。

赤信号には、冒頭で述べた葉山のブラックコーヒーと同じようなことが含意されている。

陽乃「お兄ちゃん」

陽乃「こんなお兄ちゃん私も欲しかったなぁー」

冗談めかしているが、陽乃の強烈な本心であると思われる。「こんなお兄ちゃん」とは、「頼られたらどんな手を使ってでも問題を解決してくれるお兄ちゃん」のような意味だろう。

比企谷(と由比ヶ浜)は雪ノ下のことをはっきりと変えた。それは、雪ノ下がこうやって前進しようとしていることからもわかるし、葉山が「君(=比企谷)はすごいな、そうやって周りの人間を変えていく」「君(=雪ノ下)は、少し変わったな」(2期10話、11話)と評していることからもわかる。

比企谷には周りを変える力がある。雪ノ下家に幽閉され「たくさん諦めて大人になった」陽乃も、未だに誰かにこの現状を変えて欲しいと望みながら生きているのだと思う。それは葉山にとっても同じことだと推測される。

陽乃「酔えない」

「どんなにお酒を飲んでも後ろに冷静な自分がいるの。自分がどんな顔してるかまで見える。笑ったり騒いだりしても、どこかで他人事って感じがするのよね。……予言してあげる。君は酔えない」
その予言はきっと当たる気がした。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P92−94より

当然ながら「酔えない」は比喩である。デジタル大辞泉によれば、この場合の「酔う」とは「3.そのことに心を奪われてうっとりする。また、自制心を失う。」の意味である。

つまり、比企谷は「何があっても自制心を失うことができない」と指摘されているのであり、原作を参照すれば比企谷自身もそれを「さもありなん」というニュアンスで捉えている。

「酔えない」が良いことなのか悪いことなのか現状ではわからないが、この3期の大きなキーワードのひとつとなるだろう。

プロムの依頼(Bパート)

由比ヶ浜との会話

由比ヶ浜「部活行く?」

過去に「部活行く?」で印象的だったのは、2期の生徒会選挙後、奉仕部が停滞する中、比企谷が一人でクリスマス合同イベントを手伝うくだりである(2期第6話)。

雪ノ下が心を閉ざしてしまった奉仕部は上滑りするだけの言葉で状況を取り繕うまがい物と化してしまった。そんな部室に行き、雪ノ下と駄弁を弄するのが由比ヶ浜も辛かったのだろう。比企谷を誘って、心苦しさを緩和させようとしていた。

で、ここでの「部活行く?」はいつか終わるかもしれない(と由比ヶ浜は予感している)奉仕部をなんとか繋ぎ止めようとする行為だろう。

そもそも奉仕部は誰かからの依頼を待ってそれを解決するという受け身の理念に基づいている。しかし、今、雪ノ下は自分で動き出して自立を画策している。従って、なぜ奉仕部が終わると考えているのかというと、それは物語上、雪ノ下の自立は奉仕部からの自立と同義だからである。

部室の鍵が閉まっているのはそれを予感させるものである。

由比ヶ浜「ぶっちゃけ処分に困る」

由比ヶ浜「雑誌買ったら付録でついてきただけだから! ……そんな感じで、気づいたら超増えてて、ぶっちゃけ処分に困る」

「気づいたら超増えてて、ぶっちゃけ処分に困」っているのは、比企谷への募る思いと重なるだろうか。

いろはすのプロム提案

キングとクイーン

「つまり、葉山先輩がキングで、あたしがクイ……あっ」
言っているうちに、一色もタイムパラドクスに気づいたらしい。こほんと咳払いすると、にこっと俺に微笑みかけてくる。
「ところで先輩、全然関係ないんですけど、留年とかしないんですか?」
「しねぇよ……」

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P199

いろはの「あっ」は、葉山とは学年が違うから同時にキングとクイーンになれないことに気づいたからである。従って、「葉山とキングとクイーンの関係になる」のがプロム開催の目的ではない。そんなことは奉仕部に提案する前に気づくはずだからである。

比企谷に留年をそそのかしているのは、比企谷とキングとクイーンの関係になりたいと少しでも思っているからだろうか。それとも「代わりにプロムを手伝ってもらう」ための単なる詭弁だろうか。

きっぱりと諦めるいろは

いろは「そうですか、わかりました。私たち生徒会だけでやってみます」

かつていろはは合同クリスマスパーティーがやばいことになっていたとき、「やばいですやばいですぅー先輩しか頼れる人いないんですぅー」と奉仕部に泣きついて来たが、今回は「自分たちでやってみる」とあっさりと引き下がる。

小町、雪ノ下だけでなく、いろはも依存から脱却、自立を画策しているのが印象的である。

いろははなぜプロムをやりたいのか?

いろは「今やるしかないんです。今始めれば間に合うかもしれないから」

いろはがプロムをやりたい理由は、現時点で下記3点がわかるのみである。

・次の一手のための布石を打ちたいから
・今始めれば間に合うかもしれないから
・私のためだから

従って、現状、いろはがそこまでしてプロムをやりたい理由は明確にはなっていない。

いろははクリスマス合同イベントを解決させる際、「わたし的に、しょぼいのってやっぱちょっといやかなーって」と大義名分を個人的な理由に落とし込んで動機としていた(2期第10話)。いろはにはそのような行動様式がある。

従って、このプロムでも「私のため」とはっきりと言っているが、他にも動機があるのではないかと推測できる。後に明らかになるのだろう。

雪ノ下はなぜプロムを手伝うと決めたのか?

雪ノ下「では、やりましょう」

雪ノ下がプロムを手伝う決意をしたのは、由比ヶ浜の言う通り「自分の力でやってみたい」からである。これまでは比企谷と由比ヶ浜に助けられていたが故に、自立できず、心を閉ざすという悪態さえついていた。だから、奉仕部の力を借りずにできることを証明して自信に繋げる。そうすれば、家の問題もその他の問題も解決できることを見込んでいる。

それに加え、いろはが「わたしのため」と主張したことも大きい。持ち込まれた依頼を解決するのではない。いろはが自分のためにやりたいと言っていることを、雪ノ下は自分の意志で主体的に手伝う。同じ部室内の出来事だが、これまでとはそこが決定的に違う。

なぜ比企谷は手伝わないのか?

由比ヶ浜「違うよ、ヒッキー」

これまでの比企谷は解決への最適解を解き明かして独善的に行動しがちであった。雪ノ下を生徒会長にしなかったのはその極みである。雪ノ下の感情を理解していなかったからだ。

ここでは由比ヶ浜に「違うよ、ヒッキー」とたしなめられ、納得する。由比ヶ浜がいなかったら、おそらく比企谷は雪ノ下の抽象的な遠慮の言い回しに込められた感情を全く理解できず、善意で手伝っていただろう。

クリスマス合同イベントとの対照点

さて、ここまでで少しずつ触れてきたが、このプロムの提案は2期第6〜10話のクリスマス合同イベントと対照になっている。

 
クリスマス:
・平塚先生に押し付けられたクリスマス合同イベント
・「やばいですやばいですぅー先輩しか頼れる人いないんですぅー」といろはが奉仕部に依存
比企谷が奉仕部を停滞させるために(壊さないために)単独でいろはを手伝う。

プロム:
・いろはが自発的に提案したプロム
・「私たち生徒会だけでやってみます」といろはが自立
雪ノ下前に進むために(奉仕部は終わりになるかもしれない)単独でいろはを手伝う。

 

いろはは何が「だいたいわかった」のか?

雪ノ下「……私、まちがえているかしら」
比企谷「……いや、いいんじゃねぇのそれで。知らんけど」
いろは「……なるほど、だいたいわかりました」
一色がぽつりと呟く。その顔は若干疲れているようにも見えた。吐いた息もどこか重苦しい。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P210

いろはは比企谷と雪ノ下のやり取りを見て「だいたいわかった」と唐突に言い、原作によればあまり良い表情ではない。

思えば、Aパートでも同じようなことがあった。引っ越しの手伝いをしたい由比ヶ浜について困惑する雪ノ下。そこに比企谷が「無料の労働力なんて貴重だ」うんぬんかんぬん横槍を入れ、雪ノ下を促した。

いろはの「だいたいわかりました」にはどんな意味がこめられているのだろうか。以下3点を考察した。

1.比企谷をおせっかいだと思っている
「自分で考えろ」ではなく「いいんじゃねぇの」とポジティブに後押しする比企谷に思うところがあったということ。

2.未だ雪ノ下は比企谷に依存していることに気づいて落胆した
雪ノ下がプロムを手伝う動機は「自分でやってみたい」だけれど、「まちがえているかしら」とその最終決定を比企谷に委ねてしまっている。雪ノ下が自立できない結果に陥り、また堂々巡りの日々が訪れるのではないかと危惧し、疲れた表情をしたということである。これが一番近いかなと思う。

3.本当は比企谷に手伝って欲しかった
いろはの中に、比企谷に手伝ってほしいという気持ちがないわけではないと思うが、一度「生徒会だけでやってみる」とカラッとした態度で立ち去ろうとしているので、おそらくこれはないと思われる。

なぜ「本物なんてほしくなかった」と由比ヶ浜は思っているのか?

ほんとはずっと昔から気づいていた。
あたしが入り込めないところがどこかにあって、何度もその扉の前に立つけれど、それを邪魔しちゃいけない気がして、ただ隙間から覗いて聞き耳を立てることばかり。

ほんとはずっと昔から気づいていた。
あたしは、そこへ行きたいんだって。
それだけのことでしかなくて。

だから、ほんとは。

――本物なんて、ほしくなかった。

「本物」とは何か?

2期第8話以降、比企谷が発した「本物」という言葉に焦点が当てられてきている。これまでのストーリーから「本物」が意味する断片を下記に提示する。

・ただ一方的に願望を押し付けていたというか、勘違いしていただけで、それを本物とは呼ばない(2期第4話、陽乃との電話での比企谷の発言)
・考えてもがき苦しみ、あがいて悩まなくては手にすることができないもの(同8話Aパート、平塚先生の言葉)
・相手を完全に理解したいという自己満足を押しつけ合い、許容できる関係性(同Bパート、比企谷の独白)
・話せばもっとわかるんだって思う。でも、たぶんそれでもわかんないんだよね。それで、たぶんずっとわかんないままで、だけど、なんかそういうのがわかるっていうか(同、由比ヶ浜の台詞)

これらをなんとか要約すると「願望を押し付けることなく、完全に理解するために追い求め、問い直すことができる関係性」といったところだろうか。

なぜ「本物なんてほしくなかった」のか?

原作によれば、上に引用した由比ヶ浜の独白の手前に次のような言葉がある。

彼女の気持ちを聞くのはずるいことだ。
自分の気持ちを言うのはずるいことだ。
でも、彼の気持ちを知るのが怖いから。
彼女のせいにしているのが一番ずるい。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P99

抽象的なので原作を参考に補完して下記に提示する。

(比企谷を好きなのかどうかを雪ノ下に直接聞いてしまったら、きっと雪ノ下は否定して自らの気持ちを押し殺すに違いないから)彼女の気持ちを聞くのはずるいことだ。

(由比ヶ浜は、雪ノ下が比企谷を好きなことに感づいているので)自分の気持ちを言うのは(抜け駆けになるから)ずるいことだ。

でも、彼の気持ちを知るのが怖い(=振られるかもしれない)から。

彼女のせいにして(=雪ノ下が比企谷を好きだと仮定して or 雪ノ下に主体性がないことを利用して)いるのが一番ずるい(=由比ヶ浜は比企谷に気持ちを伝えないまま、雪ノ下だけを撤退させようとしているからずるい(2期13話))。

人の数だけ考察があると思われるが、私はこのように解釈した。できるだけ正確に記述したかったので、カッコががちゃがちゃになり読みづらくて申し訳ない。

比企谷の言う「本物」とは「追い求めて問い直すこと」のような意味だった。しかし、由比ヶ浜は「追い求めて問い直す」ことを全くしていないことがわかる。なぜなら、雪ノ下に問えば抜け駆けになってしまい友情が壊れる恐れがあるし、比企谷に問えば振られて恋が終わりになるかもしれないからだ。

由比ヶ浜はおそらく、比企谷に「告られる」ことを望んでいる(2期第2話の竹林で「告られるなら」と言っていた)。

比企谷に告られれば、それは比企谷の選択なのでノーリスクで交際を始めることができるし、雪ノ下もそれを受け入れるに違いなく、友情を維持できそうだからである。何も失わなくて済み、自分の欲しいものが全て手に入る。

しかし、それは「本物=追い求めて問い直す」とは真逆の態度だ。だから「本物なんてほしくなかった」と言っている。

由比ヶ浜「あたしはそこへ行きたいんだって」

最初の引用文中の「そこへ行きたい」とはどういう意味だろうか。文脈としては「そこに行きたいから、本物なんてほしくなかった(=追い求めて問い直すことなんてしたくなかった)」ということになる。

おそらく由比ヶ浜は、比企谷と雪ノ下の関係の中に「本物」があると見ているようである。「そこへ行きたい」を「雪ノ下の立場になりたい」という意味と解釈するなら、「本物なんてほしくなかった」は「比企谷の依頼が『本物が欲しい』じゃなければよかった」ということになるだろう。

比企谷が「本物」を欲しがっている以上、由比ヶ浜は「そこ」へは行けない。もちろん、「本物」を欲しがらない比企谷はもはや比企谷ではないので、由比ヶ浜にとっては現状、どうしても不可抗力の負け戦ということになってしまうのだった。

 
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