俺ガイル完(3期)第3話の感想と考察。由比ヶ浜「いいなら、いいの」の意味とは?

俺ガイル完(3期)第3話「やはり、一色いろはは最強の後輩である。」の考察をしていく。起承転結で言えば「承」の部分であり、物語がスムーズに進むので、盛り沢山だった第2話と比べれば考察すべき点はあまりなく、これまでの考察と比べれば文字数が少なく、さくっと読めると思う。

他にも考察していますのでぜひともご覧ください:
『俺ガイル完』の考察はこちら
俺ガイル完カテゴリ

『俺ガイル続』の考察はこちら
俺ガイル続カテゴリ

『俺ガイル』原作の考察はこちら
俺ガイル原作カテゴリ
 

なぜ比企谷は部室の鍵を取りに来たのか?

「いや、連絡先知らないんで」
「……由比ヶ浜もか?」
「あー、いや……」
訝しむような視線に、なははーと笑って誤魔化してみせる。言えるか、ただ鍵を取りに来たかっただけなんて。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P175

第2話でカットされていた場面の回想から始まる。

前話の鍵を取りに行くシーン、由比ヶ浜が雪ノ下に電話しようとして比企谷を引き留めようとしたが、比企谷は聞かずに職員室に向かっていった。で、ここで平塚先生にそのことを指摘されている。

原作を参照すれば比企谷は「言えるか、ただ鍵を取りに来たかっただけなんて」と思っており、どうしても自分の足でわざわざ鍵を取りに来たかったらしく、そしてそれを公言することを憚っている。なぜか。

「部室に鍵がかかっている」ことが「雪ノ下が奉仕部を必要としていない」ことを表す暗喩と仮定すれば、「鍵を取りに行く」ことは「奉仕部を必要としている」あるいは「雪ノ下を手伝いたいと思っている」ことを示す行為となり得る。

で、現在、奉仕部には活動の理由がないし、雪ノ下は現在助けを必要としていない。だから「ただ(=理由なく)鍵を取りに来ただけ」(=理由なく奉仕部を必要としている or 理由なく雪ノ下を手伝いたいと思っている)ことを意識下に押し込めようとしている。

戸塚を誘う比企谷

「戸塚、そのうち暇な日あるか?」

原作によれば、部活がなくなった比企谷は家で積んであったゲームをやるが、数日で飽きてしまったようである。で、戸塚を遊びにでも誘うという流れになっている。

比企谷が特に理由なく誰かに「暇な日あるか?」と声を掛けるのは、2期第12話での由比ヶ浜に対して以来の2度目である(「お前、そのうち暇な日あるか?」と全く同じ文面)。

かつてはぼっちで激烈に卑屈であった比企谷の自意識過剰が少しは軟化していることが示されている。自己犠牲ではなく、コミュニケーションを取りながら問題を解決することを志向した結果だろうか。

小町の合格

そう言えば、小町と川崎大志は付き合ってるんだっけかと過去回を振り返ってみたらそんなことはなかった。比企谷が勝手に警戒しているだけのようである。

いろはすとの会話

「頼られて嬉しそうな先輩なのでした」

「先輩。……手伝って、くれませんか?」
「無理だって……。プロム、普通に嫌だし」
「と言いつつも、わたしに頼られてすごく嬉しそうな先輩なのでした」
「……この顔がそう見える?」
「……それ、正直に答えたほうがいいですか?」
「え、なに、なんか怖い、真顔やめろ真顔」

いろはすはかなり勘が鋭く周りが見えているキャラクターである。従って、いくら比企谷が嫌そうな顔をしても「頼られて嬉しそう」であることを完全に見抜かれている。

比企谷の助言と私見

「助言ってわけじゃないが、雪ノ下に頼りすぎないようにな。あいつ、アホほど体力ないのに、死ぬほど頑固で負けず嫌いだから、たまに平気で無茶するんだ」

1期第10〜12話の文化祭で前例があることを言っている。委員長の相模が責任と仕事を放棄したが故に、雪ノ下に負担がかかりダウンしてしまった。

ちなみに、雪ノ下がなぜ生徒会長になっていないかというと、比企谷が策を弄したからである(2期第3〜5話)。で、なぜ比企谷が策を弄してまで雪ノ下を生徒会長にさせなかったかというと、文化祭で「不本意に」雪ノ下が実行委員長的な立場にさせられていたと、比企谷は思い込んでいたからである。

雪ノ下には「相手を手伝いはするけれど、最終的な意思決定は相手に任せる」という行動様式が見られた。その行動様式から逸脱してしまったから文化祭ではダウンしてしまったし、生徒会長になりたいという意志は比企谷に理解されなかった。

だけど、思うに、おそらく雪ノ下は生徒会長に相応しい人間ではない。極めて優秀であるかもしれないけれど、全てを抱え込んでダウンしてしまうのは目に見えているからである。

今、雪ノ下はいろはという生徒会長の下で、参謀として実力を遺憾なく発揮している。雪ノ下にとって最適なのはこのポジションなのではないかと思う。

「過保護」「お兄ちゃん気質」

「あ、あはは……。……先輩って、なんかお父さんみたいですね。え、や、なんか、こう……いつもありがたいなー、みたいな、ねー?」

第2話でも陽乃との会話で「お兄ちゃん」というキーワードが出ていた。

第1話で小町は兄離れした。雪ノ下もいろはも自立しようとしている。順調に進んでいるプロムを「過保護」で「お兄ちゃん気質」の比企谷が一歩引いて見守っているという構図である。

いろはの言う「お父さん」の例えからすると、「お兄ちゃん」とは「いつもありがたいなー、みたいな」存在である。

反省するいろはす

「いろんなことが順調だからっていうか、気づかないうちにいろんな事やってもらってるから、わたしちょっと油断してました」

ここからBパートである。

いろはは比企谷の「いつもありがたいなー、みたいなお兄ちゃん」からの脱却を画策しているので、比企谷に何も説明せずとも「先輩なら何でもやってくれるだろう」という慢心について反省している。「わたし、先輩の妹じゃないですからね」の言葉通り、比企谷に頼らずにプロムを実現することで比企谷と対等の立場になりたいと思っているに違いないからである。

雪ノ下「私も反省しているわ」

おそらく、男役としていろはをエスコートしたがために、いろはをときめかせてしまったことについて「反省している」と言っている。深い意味はないと思われる。

比企谷のエスコート

「ああ。……それとここ、暗いからな」
言って、少し左肘を上げた。背筋を伸ばして胸を張り、顎を引く。あと、うろたえない、だったか。確かそんなふうに教えられた気がする。
それを由比ヶ浜は不思議そうな顔で見ていたが、やがてああと思い出したように、ふっと微笑む。そして、無言のままにそっと俺の左肘に手を添えた。いつだかと同じく。
たくさんの言い訳を張り付けて、俺たちはひどく短い距離を同じ歩幅でゆっくり歩いた。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P288−289

原作では「確かそんなふうに教えられた気がする」「いつだかと同じく」と過去に同じようなことがあったことが仄めかされている。この原作小説にはこのような表現が忘れない程度に散見され、それが過去のどの部分を指すのか私には想起できない・わからないことが時々ある。

ここのシーンも同様にして、わからない。わかる人教えてもらえるとありがたいです。

【追記】コメ欄に回答頂きました。ありがとうございました!!

雪ノ下「カメラで追うメインを二人にやってもらいたいのだけれど」

雪ノ下「カメラで追うメインを二人にやってもらいたいのだけれど」
比企谷・由比ヶ浜「え?」

(ここで「編集素材が多いに越したことはないからやってほしい」と雪ノ下が主張(原作より))

そう考えれば理には適っているはずなのに、どこかでひどく噛み合っていないような違和感があった。その理屈を通すには必要なピースが欠落している印象だ。
由比ヶ浜「えっと……、あたしたちでいいのかな」
由比ヶ浜が探り探りといった感じでそう問うた時、かちりとピースが嵌ったような気がした。だが、それも間をおかずに口にされた雪ノ下の言葉ですぐに掻き消える。
雪ノ下「多少目立つ役どころだから他の人たちに頼むのは少し気が引けるの。もし、難しければ他の方法を検討するけれど……」
由比ヶ浜「あ、ううん。そうじゃなくて……。いいなら、いいの」

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P290-292より

原作を参照した上記抜粋から下記を考察した。

「ひどく噛み合っていないような違和感」とは?

比企谷の「ひどく噛み合っていないような違和感」の正体とは何だろうか。

原作では、いろはと戸部をメインで撮影し、ついでに、編集素材が多いに越したことはないから、比企谷と由比ヶ浜にも一緒に踊ってほしい、という流れになっている。

従って、それは雪ノ下と比企谷でもいいし、雪ノ下と誰かでもいいし、誰かと誰かでもいいはずなのに、あえて比企谷と由比ヶ浜に突然に焦点を当てたことが論理的でないと感じたのだと思われる。

もしかしたら雪ノ下が、比企谷と由比ヶ浜を理屈抜きでくっつけようとしているように思えたとかそういうことだろうか。

由比ヶ浜「えっと……、あたしたちでいいのかな」

由比ヶ浜は、雪ノ下の気持ちは比企谷に向かっていることに気が付いているので、雪ノ下の指示の下に抜け駆け的なことをしていいのかなということを言っているのだろう。

由比ヶ浜「いいなら、いいの」

「(雪ノ下が)いい(と言うの)なら、いいの」は、完全に受け身の態度であり、比企谷の言うところの「本物=追い求めて問い直す」とは真逆である。由比ヶ浜にとっては雪ノ下に「譲ってもらった」という心情だと思う。

雪ノ下はなぜ二人を組ませたのか

比企谷が違和感を覚えていることから、雪ノ下は作為か不作為かはわからないが理屈を逸脱して比企谷と由比ヶ浜を組ませたに違いない。

おそらく、雪ノ下は比企谷と釣り合いがとれていないと自身のことを思っている。自立していて行動の理由を自分で作り出せる由比ヶ浜のほうが比企谷と釣り合いが取れていると感じている。

雪ノ下が比企谷のことを諦めて由比ヶ浜に譲ったとか、二人をくっつけるチャンスを与えた、とまでは言わないまでも、現時点で雪ノ下はそう思って振る舞ったのだろうと思う。

 
次の記事:
俺ガイル完(3期)第4話の感想と考察。なぜ比企谷は雪ノ下を助けに行ったのか?

前の記事:
俺ガイル完(3期)第2話の感想と考察。「本物なんて欲しくなかった」の意味とは?

 
他にも考察していますのでぜひともご覧ください:
『俺ガイル完』の考察はこちら
俺ガイル完カテゴリ

『俺ガイル続』の考察はこちら
俺ガイル続カテゴリ

『俺ガイル』原作の考察はこちら
俺ガイル原作カテゴリ