俺ガイル完(3期)第4話の感想と考察。なぜ比企谷は雪ノ下を助けに行ったのか?

俺ガイル完第4話「ふと、由比ヶ浜結衣は未来に思いを馳せる。」の考察をしていく。第1〜4話までが原作の12巻にあたる。

考えるべきことが山ほどあり、結果、10,000字を超えてしまった。本気を出して書いたので、ぜひとも最後まで読んでいただければと思います。

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目次

雪ノ下「もう大丈夫だから」は本当に大丈夫なのか?

雪ノ下「二人ともありがとう。わざわざ来てもらってごめんなさいね、もう大丈夫だから」
比企谷「え、もう終わり?」
雪ノ下「ええ。そのつもりでいたけれど……。制作物は生徒会でやっているし、今のところ他に人手を必要とするような仕事もないから。ねぇ?」
いろは「へ? ……え、あー。は、はぁ、雪乃先輩が言うなら、まぁそうですね」

比企谷「もう終わり?」

雪ノ下の「もう大丈夫だから」に比企谷、由比ヶ浜、いろはの全員が反応する。

今ここに比企谷と由比ヶ浜が呼ばれたのは写真のNGの確認をしてもらうためであって、手伝ってもらうためではない。従って、前話では比企谷たちに手伝ってもらったが、このシーンでは手伝ってもらっていない。

雪ノ下に何らかの手助けをする気概を持って二人はやってきたが、肩透かしを食らったというところだろうか。

いろは「雪乃先輩が言うなら、まぁそうですね」

いろはのこの台詞は、雪ノ下の判断に依存した、あるいは判断を尊重したというよりは、反論が見当たらないし、反論すべきでもないと思ったという消極的な賛成であるように思える。

いろはは比企谷に手伝ってもらいたいのだろうか。答えはイエスだと思うけど、それは比企谷とお近づきになりたいという動機ではない。

プロムの準備は着々と順調に進んでいるが、いろはには何か嫌な予感がしているのだと思われる。雪ノ下が単独でプロムを手伝うと決まったその時から、いろはには何か思うところがあったようである(第2話「……なるほど、だいたいわかりました」)。

その予感は、この第4話後半に訪れるプロムの開催危機のような具体的なものではなく、「なんか脆そう」くらいの漠然とした懸念である。

雪ノ下だけがプロムは順調に開催できると純粋な気持ちで疑っていない。

比企谷「どっか寄ってくか?」

(由比ヶ浜が何かを言って欲しそうにもじもじする)
比企谷「どっか寄ってくか? あ、いや……。小町の合格祝いか、誕生日祝いか、……なんか用意しようと思っててな」
由比ヶ浜「いいじゃんそれ! いくいく!」

由比ヶ浜には「一緒に部活行こう」とか「一緒に帰ろう」とかは比企谷にアプローチする態度が見られるものの、そこから先は全く積極性がないという行動様式が見られる。

この場面でも何かを言って欲しそうにもじもじする由比ヶ浜を見て、比企谷に「どっか寄ってくか?」と提案される流れになっている。

由比ヶ浜は完全に待ちのスタイルである。これに関しては由比ヶ浜は告られたいのではないかと過去記事で考察した。由比ヶ様は告られたい。

比企谷は比企谷で「小町の合格祝いか、誕生日祝いか、……なんか用意しようと思っててな」と一緒にどっか寄ってく理由を探して提案する。二人の行動は対照となっている。

由比ヶ浜:
理由なく動くことができる(「一緒に帰ろう」)が、その先のアプローチができない

比企谷:
最初のアプローチができないが、求められれば理由を作り出して動ける(「小町の合格祝い」)

これが、二人の長所と短所を補い合ってポジティブに作用しているのか、それともそうでないのか、現時点ではわからないし、これだという結論もおそらくない。

マックスなマックスコーヒーで自撮り

マッ缶自販機のメタファーはあるか

前回までの考察で、マックスコーヒーはポジティブな、ブラックコーヒーはネガティブなメタファーであると繰り返してきたが、ここでなんと全ての品揃えがマックスコーヒーオンリーの自販機が登場する。

深い意味があるのかどうかわからないが、無理矢理に考察すれば、ここで比企谷はマックスコーヒー自販機を撮影はすれど、飲んではいない。

マッ缶を「飲むこと」にポジティブな意味合いが含まれるのだとすれば、ここでは撮影するだけなので、「雪ノ下をすごく手伝いたいけど届かない」という状況を表したもの、というところだろうか。無理矢理だけど。

由比ヶ浜の自撮り

由比ヶ浜「あたしも撮ろっと」

非常に自然な動作で由比ヶ浜が比企谷と自撮りをする。由比ヶ浜に恥じらうような所作やエフェクトは見られないので、普通のこととして無意識に行ったのかもしれない。

ただ、結果として、由比ヶ浜は(おそらく)比企谷とのツーショット写真を初めて撮ることができたし、既に比企谷とのツーショット写真を持っている雪ノ下に並ぶことができた。

また先程、マッ缶自販機のメタファーとして、「雪ノ下をすごく手伝いたいけど届かない」ということを考察したが、比企谷は一人で自撮りをしまくっていたのに対し、由比ヶ浜はマッ缶自販機を背景に二人で自撮りをする。

比企谷は自分が雪ノ下を手伝うことしか考えていないが、由比ヶ浜は比企谷と一緒に雪ノ下を手伝いたいと思っていると考えることもできよう。

比企谷「その写真、送っといてくれ」

比企谷が他人の物をねだるのはおそらく初めてのことである。社交辞令なのか、何か思うところがあったのかはわからない。

「その写真、送っといてくれ」で画面左から右へクルマが一台流れる。由比ヶ浜が送信するところでクルマが逆に右から左へ一台流れる。二人のやり取りの暗喩である。

私はアニメにそれほど詳しくないけれど、クルマで何かを表現するのは常套手段なのかもしれない(例えば『冴えカノ』2期Episode7、Bパートでの喫茶店にいる加藤に倫也がメールを送るシーン)。

比企谷「よし。目的も果たしたし、帰るか」

この台詞で、比企谷が理由づけした「小町の誕生日プレゼント」は本当にただの理由付けに過ぎないことが示されている。マッ缶に満足してこじつけた理由をすっかり忘れているからである。

イケア的なところでデート

由比ヶ浜結衣は未来に思いを馳せる

イケア的な商業施設は、この第4話のタイトル通り、明らかに由比ヶ浜の描く希望の未来である。家族連れに羨ましそうに視線を向けている。

雪ノ下の進路

由比ヶ浜が「ゆきのんは進路決めてるんだよね」と言っているが、雪ノ下の進路とは具体的に何だろう。2期11話で「(国際教養科だから)一応文系」と言っているが、その先の具体的な進路(志望校など)についてはちょっと思い当たらない。

わかる人いたら教えてください(前回の記事で教えてくれた方々ありがとうございました)。

由比ヶ浜「あと、お嫁さん、とかね」

ふっと微笑むと、由比ヶ浜はベッドを立つ。そのまま子供の頃の夢を置き去りにするように、一歩、また一歩とゆっくり足を送り出す。
「……あと、お嫁さん、とかね」
背中越しにそう言って、由比ヶ浜はくるりと振り向いた。
由比ヶ浜が口にした言葉は、夢と呼ぶにはあまりにリアリティがありすぎて、笑い飛ばすことも苦笑することもできなかった。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P313より

原作には「子供の頃の夢を置き去りにするように」と書かれているが、どういうことだろうか。2通りの考え方があるように思う。

ひとつは、「(比企谷の)お嫁さん」という夢を諦めたということ。もうひとつは、「(子供の頃の漠然とした)お嫁さん」は置き去りにして、今はその夢に具体性が伴っているということ。

このショールームを立ち去る際、由比ヶ浜が泡立て器を売り場に戻す(=置き去りにする)シーンが描かれている。「泡立て器=お嫁さんのイメージ」とすれば、「(比企谷の)お嫁さん」という夢を諦めたと解釈できよう。

諦めたというか、本心では諦められない。だけど由比ヶ浜は、これが負け戦であり、単なる延命措置でしかなく、諦めざるを得ないと思っているに違いない。

手作りケーキ

小町のお祝いの手作りケーキは、由比ヶ浜が比企谷に渡した手作りクッキーと重なるだろうか。この辺の比企谷の心情は原作要チェックである。

雪ノ下母の登場 -プロム開催危機

2人を呼びに来るいろはす

いろは「よかった、二人ともまだいた……。とにかく一緒に来てもらっていいですか」

プロムが開催危機に陥り、いろはは真っ先に比企谷と由比ヶ浜に助けを求めにくる。

雪ノ下母との話し合いの場には副会長や書記さえいないのに、全く関係ないこの2人を呼びつけるということは、いろはは比企谷と由比ヶ浜しか問題を解決できないと思っている。「二人ともまだいた」と言っているので、比企谷だけでなく、由比ヶ浜も必要だ。

あからさまに退屈そうな陽乃

「卒業生の間でも、まぁ賛否両論ね」
先の雪ノ下母の発言を補足するような口ぶりに、陽乃さんがここへ来た理由を察した。どうやら援護射撃のために駆り出されているようだ。
「……別に否定的な意見が多いわけじゃないけどね」

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P321より

原作を参考にすれば、陽乃は援護射撃のために来させられているようである。しかし、今までのように雪乃を挑発する態度をとることはなく、むしろ「否定的な意見が多いわけではない」と援護射撃を拒否する態度さえとっている。中立的な立場としてそこにいる。

陽乃はあからさまに退屈そうである。雪乃の自立のために「我、関せず」のパフォーマンスをとっている。つまり「お姉ちゃん」していない。

雪ノ下母が来た理由

雪ノ下母「私も保護者会の一人ではあるし……、それに、お父さんとお付き合いのある方にお願いされたら無碍にはできないもの。……それは、わかるでしょう?」

雪ノ下父の職業は建設会社社長と県議会議員である。雪ノ下母は、自分がプロムに反対であるのではなく、父の関係者に頼まれて来たということを言っている。

さて、(かつての)奉仕部の理念は、頼まれた依頼を解決することである。つまり、ここでの雪ノ下母は奉仕部の理念とも重なる。頼まれ事をなんとしてでも解決すること。

しかし、雪乃は今「自分の意志で」問題を解決しようとしている。ここで展開されているのは「かつての自分の理念」との対決という構図にもなっているだろう。

雪乃は父の仕事を継ぐ(ことを諦める)ためにこうしてプロムに発奮しているのであり、ここで雪ノ下母に「父の知り合いに頼まれた」と言われてしまっては言葉を返しようがない。

なぜ雪ノ下母を論破できないのか?

比企谷「まるで埒が明かない。柔和な笑みで相手の意見に耳を傾けているようで、気がつけば、最初に設置してあった罠へと相手を追い込んでいくカウンタースタイル。なるほど、この人は理詰めで戦ってはいけない人なのだ」

なぜ雪ノ下母を論破できないかというと、そもそも議論になっていないからである。こちらが何を言っても「少数意見に耳を傾けることも大事なこと」と切り捨ててしまえばいいのである。そこに論理はない。結論ありきでカウンターしてくるので埒が明かない上、こちらが喋れば喋るほど泥沼にはまっていく。

比企谷が「学校側は内諾してるんですよね? どういう了見なんですか」と平塚先生に問うたのは、矛先を逸らすためである。部外者にしか打てない秀逸な一手だ。

平塚先生離任か

第2話からそれとなく仄めかされていた。平塚先生は物語を正解に導くキャラクターである。最終的には平塚先生からの自立をもって、彼らのストーリーは一段落となるのが帰結と言える。

陽乃「まだ『お兄ちゃん』するの?」

第1話から張られてきた伏線がここで鮮やかに回収される。

川なんとかさんの妹を甘やかすこと、小町の兄離れ、陽乃との会話、いろはの「私に頼られて嬉しそうな先輩なのでした」「過保護」という言葉。全てがこの瞬間のためにあったのだ。

陽乃「それに手を出す意味、わかってる?」

「プロムが実現したら、母は雪乃ちゃんへの認識を多少は改めるかもしれない。もちろん雪乃ちゃん自身の力でやれば、だけどね。……それに手を出す意味、わかってる?」
重い問いかけだった。それはつまるところ、彼女の将来に、人生に責を負うことができるのかと、そう問われた気がした。そんな問いに軽々しく答えられるはずがない。俺たちは後先考えずに動けるほど幼くはないし、全て受け止めきれるほど大人ではないのだ。
だから、俺も由比ヶ浜も一色も、ただ黙することしかできなかった。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P337−338より

陽乃の言う「手を出す意味」とは、ただ単に雪ノ下の自立が阻まれるだけでなく、雪ノ下が継ぎたいと言っている家業のなんやかんや含めて責任を取れるのかという意味である。

比企谷たちは目先のプロム開催にとらわれて手助けしようとするが、その先にはもっと大きな問題があるのである。陽乃ならではの視点である。

平塚先生の陽乃への眼差しの意味は?

平塚先生が陽乃に肯定的な眼差しを向けるシーンがある。平塚先生も陽乃と同意見であることが仄めかされている。

2期第12話のバレンタイン回では、2人の意見は真っ向から対立していた。平塚先生は「いいイベントになったな」と肯定、逆に陽乃は「これが本物なの?」と否定。

その際の平塚先生の台詞「いいイベントになったな。もっとも、歩みを止めてしまった者からすると進んだ距離の分だけ裏切られたようにも感じるものだが」の「歩みを止めてしまった者」とは陽乃のことを指していると見て間違いない。

それがここに来て、2人の意見は合致している。何が起きたのだろうか?

第2話で陽乃の服にタバコの臭いが付いていたことから、陽乃が一緒に飲んでいたのは平塚先生であると思われた。その際に陽乃は離任の件を聞かされたのだろう。その時点でおそらく陽乃は「お姉ちゃん」するのをやめたのだと思われる。

雪ノ下は何を押し付けてきたのか?

雪ノ下「じゃないと、私、どんどんダメになる。あなたにも由比ヶ浜さんにも、誰かに頼らないなんて言いながらいつも押し付けてきたの」
比企谷「それは、違う……。ぜんぜん違うだろ」
雪ノ下「違わないわ」

このやり取りは2期第8話Bパートの焼き直しである。

由比ヶ浜「あのね、ヒッキー一人の責任じゃないんだよ、考えたのはヒッキーだし、やったのもヒッキーかもしんない。でも、あたしたちもそうだよ。全部、押し付けちゃったの」
比企谷「いや、それは違うだろ」
由比ヶ浜「違わない!」

まず、比企谷の「違うだろ」は両方とも本心である。比企谷はいつも自分の意志で責任を持って行動しているので、誰かに何かを「押し付けた」とは全く思っていない。

雪ノ下が誰かに何かを押し付けた行動が顕著だったのは2期第2話〜第8話あたりまでである。特に生徒会選挙の一件は大きい。雪ノ下は生徒会長になれなかったこと(自分の意志が他人に伝わらなかったこと)を受けて「わかるものだとばかり思っていたのね」(2期第5話)という言葉とともに心を閉ざしてしまう。

生徒会長になること(を諦めること)と、家業を継いで社長になること(を諦めること)が、ここではシンクロしている。雪ノ下がプロムを自分の力でできると証明できれば、生徒会長になれなかったことをきちんと諦めることができる。家業を継げるかどうかはわからないが、少なくとも「誰かのせいで継げなかった」みたいな後悔で心を閉ざしてしまうこともないだろう。

雪ノ下が「押し付けてきた」のは「責任」や「行動」あたりだろうか。「責任」と言い切りたいところだが、現生徒会長はいろはなので雪ノ下の責任はあまり重くはないのが実態である。

いろはの立場は?

完全な余談だが、登場人物の立場を下記に整理してみよう。

雪ノ下は自立すべき:
陽乃、平塚先生、雪ノ下

雪ノ下を助けたい:
比企谷、由比ヶ浜

プロムを開催させたい:
いろは

雪ノ下の最終目標は「プロムの開催」ではなく「自分の自立」である。この場での登場人物が本来の議論すべき点は「プロムの開催」であるべきなのに、皆、雪ノ下の自立がなんやかんや喋っている。

そもそもプロムを立案したのはいろはであり、その責任を負うのも生徒会長のいろはであるのに、雪ノ下はプロムの開催を私物化しすぎている。外野もわいわいわがままを言い過ぎてやしないかい、となんとなく思った。いろははどんな気持ちで聞いていたのか気になる。

気づいてちょっと面白かったので書いた。余談でした。

共依存については本稿の最後で考察する。

比企谷と由比ヶ浜の帰路

いろはからのLINE

いろはからのメッセージを由比ヶ浜が受信する。下記に書き出す。

いろいろいろはす:
プロムやばいかもしれないです
中止っぽいというか

いろいろいろはす:
まだわかんないんですけど、
学校的にやばい?みたいな?
さっき言われたばっかなんでまだわかんないですけど!!

いろはにとっては雪ノ下の自立は二の次で、プロムの開催が最優先事項である。いろはも自立のために当初は一人で行動していたが、助けが欲しいときにはきちんと助けを求めることのできる人間として描かれている。雪ノ下、そして比企谷と由比ヶ浜に依存しているわけではない。

雪ノ下から比企谷には言うなと口封じをされていたと思われ(あるいは比企谷の連絡先を知らない)、由比ヶ浜に連絡する。比企谷と一緒にいるだろうという算段もあったかもしれない。

比企谷がプロムを手伝う理由は?

「中止の情報は雪ノ下の希望で君に伝えていない。これで察したまえ。そのうえで聞くが、それでもまだ君がプロムを手伝う理由があるか?」
聞いた瞬間、考えてた言葉が全部飛んだ。時間の概念も消し飛ばされていたと思う。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P352

「中止の情報は雪ノ下の希望で君に伝えていない」

陽乃に「あの子に頼られるのって気持ちいいでしょ?」と指摘されていたことからもわかる通り、比企谷は「頼られて」助けることに快感を覚えている(らしい)。しかし、学校の判断でプロムが中止という絶体絶命の危機にあっても雪ノ下は比企谷に頼らない。なんなら先手を打って「伝えないでくれ」と希望している。

原作によれば、比企谷はこれに相当な衝撃を受けている。おそらくここに来てまで助けを拒絶されるとは思っていなかったのだろう。

「それでもまだ君がプロムを手伝う理由があるか?」

再三述べていることではあるが、比企谷は自分の行動の理由を自分の意志に設定することができない。「自分がこうしたいから」ではなく、「仕事だから」「誰かに頼まれたから」など大義名分や他者にその動機を求めがちだ。

平塚先生がここで比企谷の言葉を根気よく待っていたことからわかることは、ここで比企谷がプロムに関わることが物語にとっての正解であるらしいということである。しかしそのためには比企谷の意志を言葉に変換させる必要があった。

比企谷の本気度を確かめたかったのだろう。比企谷が本気なら、平塚先生も本気で比企谷と向き合うことができる。

2期第8話で比企谷は本心で「本物が欲しい」を絞り出し、物語は動き出した。そのような言葉を平塚先生は待っていたに違いない。

比企谷「言葉になんて、なりようがない。大事なことだから言わないんだ」

比企谷がそれを言葉にしたくないのはなぜだろうか。これについてはこれまで詳しく説明がされていないようで、現状はっきりとしたことはわからないように思われる。

比企谷「……いつか助けるって約束したから」

「……いつか助けるって約束したから」
頼まれたからなんて、そんな普通に当たり前すぎる理由で、ロジックもリリックもない言葉で、陳腐極まる使い古された言い回しで、あいつを助けるなんて、本当に嫌でたまらない。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P353−354

「いつか助けるって(雪ノ下と)約束したから」を理由として提示する。「助けたいから」ではなく「助けるって約束した(=頼まれた)から」である。由比ヶ浜なら「助けたいから」と即答していたところだろう。

原作によれば、比企谷はこの理由で雪ノ下を助けることに相当な嫌悪感を示している。なぜだろうか。

思えば、比企谷はこれまで雪ノ下に頼られてはいたが、雪ノ下自身の問題解決にベクトルは向いていなかった。持ち込まれた第三者の依頼を解決するために頼られていたのである。ここまでの話でも比企谷が頼られたかったのは「プロムの開催」であり、「雪ノ下の自立」ではなかったと思われる。

比企谷は「雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」(2期第13話)と考えている。そして比企谷は、おそらく雪ノ下の問題に関してだけは「もし助けるなら、頼られたからではなく、自分の意志で助けたい」と思っている。それが比企谷の中の「本物」だからである。

だけど、比企谷は「助けたい」を言葉にすることをなぜか最も嫌悪している。だから、理由を探した結果、次点で嫌悪している「いつか助けるって約束した(=頼まれた)から」(2期第9話)が放たれたのだろう。

それは大義名分でも第三者が差し挟まれたものでもない、雪ノ下と比企谷だけで完結している理由であるので、平塚先生は納得した。

由比ヶ浜の涙

由比ヶ浜「……そっか。でも、ヒッキーが行ってくれるなら、なんとかなっちゃいそう」

比企谷がプロムの手伝いに行くことを聞いて、由比ヶ浜から涙が一滴垂れる。この涙の描写は2期第13話の「ヒッキーならそう言うと思った」のところと全く同じである。

その後の2人のやり取りの描写で、比企谷が発話している時には由比ヶ浜側から、由比ヶ浜が発話しているときには比企谷側からクルマが通過していく。本来であれば逆(比企谷が喋っている時には比企谷側からクルマが通過するのが順当)である。

あえて順当とは逆の描写にすることによって、コミュニケーション不全の不穏な空気を演出しているものと思われる。

なぜ由比ヶ浜は手伝いに同行しないのか?

比企谷が由比ヶ浜に同行を求めないのは、それが比企谷の行動様式だからである。由比ヶ浜を連れて行きたくなかったわけではない。比企谷はこれまでも問題解決のために人を連れ立ったことは(あまり)ない。

あるいは、いち早く駆け付けたいあまりに由比ヶ浜を連れて行くのを忘れていたという単純な理由もあるかと思う。LINEは由比ヶ浜に来ているのに置いてけぼりって。

由比ヶ浜が比企谷についていかないのは、比企谷の意志を尊重したというのもあるけれど、今にも号泣しそうだったからである。

ちなみに、比企谷は由比ヶ浜が並べたたくさんの言い訳(「安心したら涙でてきた」など)を本気で信じているようである。なんたる鈍感だ。一度振り返るので由比ヶ浜のことを気にしてはいるようである。

由比ヶ浜の独白

涙が止まってくれてよかった。
あたしが泣いてしまったら、彼はここから動けないから。
だから、涙が止まってくれてよかった。

あたしは、可哀想な子になんてならないんだ。だって、そしたらまた彼は助けてくれちゃうから。

行かないでって言えなかった。
なんで助けるのって聞けなかった。
もう優しくしないでって言いたくなかった。

彼女が考えていることも思っていることもちゃんとわかっていて、でも彼女みたいに諦めたり、譲ったり、拒否したりできなかった。
すごく簡単なことのはずなのに、あたしは何もできなかった。
全部、彼女のせいにしてそうしなかった。
全部押し付けてきたのはあたしのほうだ。

だから、これでいいはずなのに、今もずっと涙が止まらない。
涙が止まらなければよかった。

この非常に切ない独白に考察を差し挟むのは野暮ったい気もするが、考察できるところのみしていくことにする。

「もう優しくしないでって言いたくなかった」

「優しくしないで」の間接目的語(〜に)が不明である。候補は2つある。

・「あたしに」もう優しくしないでって(比企谷へ)言いたくなかった
・「雪ノ下に」もう優しくしないでって(比企谷へ)言いたくなかった

どちらの解釈でもストーリーの大枠には影響しない細かい部分ではあるが、文脈からすれば「雪ノ下に」が自然かなと思った。だとすれば、だいぶ手厳しいことを由比ヶ浜は心の中で本音として考えている。それほど思いが強い証左であろう。

「彼女が考えていることも思っていることもちゃんとわかっていて、でも彼女みたいに諦めたり、譲ったり、拒否したりできなかった」

由比ヶ浜は全てわかっている正しいキャラクターとして存在している(2期第13話「由比ヶ浜はたぶん間違えない。彼女だけはずっと正しい答えを見ていた気がする」)。

後半部分を補完すれば、由比ヶ浜は「彼女(=雪ノ下)」みたいに「(比企谷を)諦めたり」「(比企谷を)譲ったり」「(比企谷の助けを)拒否したり」できなかった、というところだろう。

「諦めたり」は第1話で、雪ノ下が自身の「答え」を「比企谷への思い」から「家業を継ぐこと(を諦める)」ことへスライドさせたことによる。由比ヶ浜は「ゆきのんの答えは、それなのかな」とそれが本音ではないことを見抜いている。

「譲ったり」は第3話で、比企谷と由比ヶ浜を組ませて踊らせたことであり、「拒否したり」はこの第4話で描かれている。

「全部、彼女のせいにしてそうしなかった

「彼女のせいにした」とはどういうことだろう。おそらく、雪ノ下の本音を知りながら、譲られるがままにしていたことだ。

由比ヶ浜は比企谷のことが大好きだが、「一緒に帰ろう」などの何でもない日常のアクションは起こせるものの、核心部分は全くアプローチしていない。こちらから比企谷に思いを伝えることなく、比企谷から告られようとしている(=「ずるい」)。

全部押し付けてきたのはあたしのほうだ

「押し付けてきた」という言葉が出てくるのは今話で二度目である。一度目は雪ノ下が「責任」あるいは「行動」を比企谷と由比ヶ浜に押し付けてきた、という文脈であった。

とすると、ここでは、由比ヶ浜が「行動」「責任」を雪ノ下に押し付けてきた、という意味になる。

2期13話ラストで、由比ヶ浜は雪ノ下を牽制し、この恋から撤退させようとした(と私は解釈している)。結果、雪ノ下の「答え」は「恋」から「家業」へとシフトされ、「諦めたり、譲ったり、拒否したり」するようになった。

つまり、雪ノ下に「行動」させ「責任」を負わせた(=押し付けた)がために、由比ヶ浜は手放しで比企谷の隣にいることができている。

それは本来喜ぶべきことであろうが、「雪ノ下の問題は雪ノ下自身が解決すべき」であるなら、由比ヶ浜の問題も由比ヶ浜自身が解決すべきである。しかし、いまだに踏み出せない(=振られるのが怖くて告れない)。

あまつさえ、雪ノ下には譲られている。由比ヶ浜は押し付けていることに負い目を感じながらも、さしずめ、比企谷に告られるのを待っている(=比企谷に押し付けている)というところだろうか。

だから、これでいいはずなのに、今もずっと涙が止まらない

誰も何も押し付けないハッピーエンドは、論理的には、比企谷と雪ノ下が心を通わせることである。ので、「これでいいはずなのに」と言っている。しかし、由比ヶ浜の心はそれを望まないので涙が止まらない。

涙が止まらなければ比企谷を引き止めておけたけれど、それだと「可哀想な子」になってしまう。だから、涙が止まってくれてよかった。だけど、涙が止まったから比企谷は去ってしまった。以下、堂々巡り、である。

「共依存」とは?

比企谷「さ、三角関係とか?」
陽乃爆笑
陽乃「共依存っていうのよ。ちゃんと言ったじゃない、信頼なんかじゃないって」

比企谷「三角関係とか?」

話は遡って、共依存の話である。

比企谷はこの関係のことを三角関係だと思っていることが白日の下にさらされている。書くまでもないかと思われるが、wikipediaによれば三角関係とは「三人の人間が同時に恋愛関係に陥った状況、人間関係」のことである。

つまり、比企谷は雪ノ下と由比ヶ浜の好意が同時に自分に向けられていることに気づいているということだ。

陽乃「言ったじゃない、信頼なんかじゃないって」

陽乃にそれは信頼じゃないと提示されるのは2期第12話である(「あれは信頼とかじゃないの。もっとひどい何か」)。

共依存とは?

親切にも原作に「共依存」の定義がはっきりと書いてある。下記である。

言葉の意味自体はうっすらと把握している。自身と特定の相手が互いの関係性に依存し、またその関係性に囚われていることに対して嗜癖している状態と物の本で読んだことがある。
共依存の共依存たる所以は依存する側だけにあるのではなく、依存される側の方にもあるのだと。曰く、他者に必要とされることで自分の存在価値を見出し、満足や安心感を得ていると。

『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』12巻、P346より

陽乃は3人の関係が共依存だと言っている。今話ラストシーンの由比ヶ浜の独白によって「由比ヶ浜→雪ノ下」の依存のピースがはまった。下記に考察・提示する。

比企谷と雪ノ下
比企谷:雪ノ下に頼られることに快楽を感じて依存している
雪ノ下:比企谷に問題を解決してもらうことに依存している

比企谷と由比ヶ浜
比企谷:理由なく動き出せて常に正しい由比ヶ浜に依存している
由比ヶ浜:比企谷に決断を委ねることで依存している

雪ノ下と由比ヶ浜
雪ノ下:由比ヶ浜に問題を解決してもらうことに依存している
由比ヶ浜:雪ノ下に比企谷を譲ってもらうことに依存している

次回予告

雪ノ下「何度も、何度も振り返る」
由比ヶ浜「距離が離れて、時間が経って」
雪ノ下「取り返しがつかないほどに、遠くへ行って」
由比ヶ浜「そうして、何が正しかったのかと、振り返る」
雪ノ下「まちがっていると知りながら、それでもこれしか答えはなかったのだと、まるで言い聞かせるように」
比企谷「何度も、何度も振り返る。けれど、送り出す足を止めることは、もうしない」

これは次巻である原作13巻の冒頭部分を元に、それぞれのキャラクターに振り分けて読ませている。おそらく、文面自体は雪ノ下の独白である。

その他

・OPで雪ノ下が窓から見上げる空が曇天雨曇りに変わっている。

・第4話は原作64頁分を映像化したもので、それでもやや駆け足な展開であった。原作ではカットされた細かな心情ややり取りがあり、読んで決して損はないと思うので、ぜひとも併せて読んでみると楽しめると思います。(当初なぜか「約150頁分」と記載していました。修正させていただきました)。

他にも考察していますのでぜひともご覧ください:
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