俺ガイル完第12話(3期最終話)の感想・考察その1。「諦めなくていいのは女の子の特権」とは何か?

俺ガイル完第12話(3期最終話)「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の前半部分の考察をしていきます。後半部分は別記事としてあとで投稿します(→俺ガイル完第12話(3期最終話)の感想・考察その2。「あなたが好きよ。比企谷くん」)。

およそ8,000字の長文ですが、是非とも最後までご覧ください。

 
他にも考察していますのでぜひともご覧ください:
『俺ガイル完』の考察はこちら
俺ガイル完カテゴリ

『俺ガイル続』の考察はこちら
俺ガイル続カテゴリ

『俺ガイル』原作の考察はこちら
俺ガイル原作カテゴリ

オープニングパート

雪ノ下「あら早かったのね。ごめんなさい、待った?」
比企谷「今、来たとこ」
雪ノ下「鍵、開けてもらっていいかしら」

部室で合同プロムの打ち合わせをすることにしたのだろう。比企谷は(雪ノ下との昨日のことが恥ずかしいので)意を決して部室に入ろうとする。しかし、扉が開かない。いつもは雪ノ下が先に来ていて開いているので、まさか鍵が開いていないとはゆめゆめ思わず、何か物理的に引っかかってるのではないかと思って無理やり開けようとしている。

雪ノ下が遅れて登場する。なぜ今日に限って遅れてきたのか。雪ノ下も昨日のことが恥ずかしく、二の足を踏んでいたのだろう。雪ノ下の方が遅れているということは、雪ノ下の方が動揺していることを示すと思う。

比企谷に鍵を渡して部室を開けてもらう。鍵や部室はメタファーとして捉えられる。陳腐な言い方をするしかないのだが、「比企谷は雪ノ下の心の鍵を彼女と共有し、部室という雪ノ下の空間に踏み込んだ」のような。2話で比企谷が鍵を探しに行って結局見つからない場面と関連する。ここに来て比企谷は鍵を見つけることができた。

雪ノ下のメガネ

ここで雪ノ下がかけるメガネは、2期10話で比企谷が雪ノ下にプレゼントとして贈ったものである。3期ではここで初めてメガネをかける。比企谷からの贈り物をきちんと大切にしているという表現だろう。

由比ヶ浜の不在

比企谷「人員は、まぁ、うちの生徒使い倒すしかないだろ」
雪ノ下「そうね、誰か快く引き受けてくれる人を……」

二人、由比ヶ浜の椅子を見遣る。

比企谷「……まぁ、毎度毎度迷惑かけんのも忍びねぇな。他もあたってみて……」
雪ノ下「いえ、私が話すわ。大丈夫。任せて。うまく説明するのは難しいけれど、私からちゃんと話しておきたいの。……じゃないと、なんで呼ばなかったのかって、怒られそう」

「忍びない」とはデジタル大辞泉によれば「がまんできない。たえられない」の意味である。かなり主観の主張が強い言葉だ。

前11話の考察で「比企谷は由比ヶ浜の想いに気付いていないので、比企谷は由比ヶ浜を振ったとは思っていない」という論を提示した。その考えに基づけば、ここでの比企谷の「迷惑かけんのも忍びねぇな」はまさにそのままの意味で「毎度毎度、面倒臭い性格の比企谷が巻き起こす面倒事に由比ヶ浜を付き合わせるのは心が痛む」ということを善意で言っている。由比ヶ浜と関わりたくないとか、気まずいとか、力を借りないで自立したいとかいうことは考えていないと思う。

雪ノ下が由比ヶ浜に合同プロムについて伝えるシーンはアニメにも原作にもないので、何をどのように由比ヶ浜に話したのかは全くわからない。単純に「このような経緯で合同プロムをやることになったから手伝って欲しい」と伝えただけかもしれないし、「比企谷といい感じの関係になった」とまで踏み込んで伝えたかもしれない。

ただ、由比ヶ浜にとっては「合同プロムをやることになった」と聞かされただけで全てを理解するだろう(おそらく聞かされなくても全てを理解している)から、敢えて「比企谷といい感じの関係になった」という野暮ったい蛇足を付け加えて伝えることはないように思われる。

比企谷「見に行くか。明日休みだし」

比企谷「じゃあ、見に行くか。……近いし、明日休みだし」
雪ノ下「そ、そうね……。明日……」

比企谷はこれまで人を誘う時「そのうち暇な日あるか?」と言っていた。それが第9話では由比ヶ浜に「今日、時間あるか?」とやや踏み込んで、「いきなり予定を決められちゃうのは直して欲しい」とたしなめられた。

それもあって比企谷は雪ノ下に「そのうち」と「今日」の中間を取って「明日」と設定したのかもしれない。シーンを見るとまだ夕方にはなっていないようだから「今日これから」でも時間的にはよかったはずだからである。全く重要なことではないが気付いたので書いておいた。

雪ノ下が「そ、そうね……。明日……」と戸惑っているのは「いきなり明日初デートかよ」と恥じらっているのだと思われる。

雪ノ下とデート

髪型

比企谷「その髪型、久しぶりに見たな」
雪ノ下「そう? ……まぁ、学校ではしないわね」
比企谷「ほーん、休みの時だけか。まぁ、手間かかるもんな」
雪ノ下「……休みの日でもあまりしないけれど」

髪型は1期6話の由比ヶ浜のプレゼントを買いに行った時のことを言っている。アニメでは「久しぶりに見た」というほど両者の髪型は似ていないのだが、ツインテールという意味では似ている。比企谷が人の髪型やファッションをいちいち覚えているようには思えないので、普段と違う何かそれっぽい髪型だったから同じと認識したのだろう。

当然ながら、雪ノ下の「休みの日でもあまりしないけれど」はそれが特別な髪型であると示唆していると同時に、1期6話の時点で特別であったことを仄めかしている。3期8話のラストの回想のところでもそれが表現されている。

雪ノ下が比企谷にいつから恋愛感情、恋愛が言い過ぎなら特別な感情を抱いたのかは、私の読み込みが浅くてわからない。

比企谷が「可愛い」とモノローグで発話するのはこれが初めてではなく、2期9話の遊園地回で由比ヶ浜に対して独白していた。だから「可愛い」は雪ノ下だけへの特別な感情によるものではない。

タピオカミルクティー

比企谷「撮り直しだ。俺の目が死にすぎててやばい」

写真がエピソードとして登場するのは覚えている限り下記である。

・遊園地回で由比ヶ浜が不意打ちで撮った3人の写真
・スプラッシュマウンテン的なやつで撮られた雪ノ下と比企谷の写真
・(いろはに撮ってもらった奉仕部3人のきちんとした写真(2期OVA))
・マッ缶自販機の前で由比ヶ浜が不意打ちで撮った比企谷との写真
・タピオカを手に雪ノ下が不意打ちで撮った比企谷との写真
・比企谷と雪ノ下がきちんとして取り直した写真

特にこれといった考察はないが、気付いた点を列挙する。

・2期9話で由比ヶ浜に不意打ちで写真を撮られて雪ノ下はちょっと不満げだが、ここでは逆に雪ノ下が何かに乗り移られたかのように突然に積極的になり比企谷の腕をとって不意打ちで写真を撮るという大胆不敵な行為を働いている。雪ノ下は由比ヶ浜に相当な影響を受けていると考えられるかもしれない。

・雪ノ下にとってスプラッシュマウンテン的なやつで撮られた写真以外にも比企谷とのツーショット写真が増えた。

・4話で比企谷は由比ヶ浜に不意打ちで写真を撮られているが、それを取り直しにはしなかった。比企谷は「それ、送ってくれ」と言ってSNOW的なアプリで加工された写真を受け取る。とすれば、雪ノ下と撮った写真について言っている「加工すれば何とかなる」は由比ヶ浜に影響を受けていると考えられるかもしれない。

・比企谷は雪ノ下とは「目が死んでいない」写真を残したいと考えている。

ウェディング

あまりにもわかりやすいので特に考察はない。リア充爆発しろと思った。

部室にみんな大集合〜サウナ

ここも特に考察すべき点はあまりないので、箇条書きで下記に示す。

・いろはは比企谷と雪ノ下の佇まいを見て「へぇー」と全てを察した。

・戸塚は6話で「部活があるから全部は手伝えないけど、でも、人手が必要になったら言って。テニス部みんなで協力するよ」と言っており、その申し出がここで叶うことになる。戸塚は1期3話で比企谷に助けられ、それ以降、比企谷のことを常に気にかけ、協力を惜しまない。

・葉山たちにはおそらく由比ヶ浜が声をかけたのだと思われる。それ以外に考えられない。

・雪ノ下(CV:早見沙織)の「軽く死ねるわ」は、『宇宙よりも遠い場所』の白石結月(CV:早見沙織)の口癖「軽く死ねますね」のオマージュである。

・比企谷が雪ノ下の様子を見て「よし、買い出しに行くか」と言うが、その後、比企谷はいろはを見遣り、その意図を察し、「雪乃先輩、そろそろ食事にしましょうか」と比企谷の言葉を「翻訳」している。

・原作者である渡航氏はサウナにハマっているらしく、俺ガイルに(無理矢理に)登場させている。何かふざけた考察を落とせるとすれば下記である。

・なぜここでサウナが登場するのか、その必然性を真面目に考察したら馬鹿馬鹿しくておもしろいんじゃないかと思われるのだが、サウナに関する教養が私には圧倒的に不足しているので、非常に難しい。

・サウナシーン、戸塚と葉山たちがこうやって親しげにがっつり絡んでいるの、もしかしたら初めてじゃないかと思った。

サウナ後

彼らのあり方

サウナを出て、比企谷、雪ノ下、由比ヶ浜、いろはの4人になる。画像を貼ればわかりやすいのだと思うが、説明すると、雪ノ下は由比ヶ浜の肩にもたれ、由比ヶ浜はそれを笑顔で容認し、少し離れたところにいろはが座り、比企谷は立って彼女たちを見守る。

この構図が今の彼らのあり方を表すものであり、このあり方が皆居心地良いことを示しているように思える。この時間がずっと続けばいい。

しかし、時間は流れるし、いつかは終わりにしなければならない。「そろそろ、行くか」と比企谷は自ら終止符を打つ。この辺の心理描写は原作に詳しいので是非とも読んで欲しいと思う。

手を差し伸べる比企谷

雪ノ下「一人で立てるのに」
比企谷「知ってる」
彼女が一人で立てることも、彼女がそう言うだろうということも、知っている。
だが、それでも俺は手を差し出すのだ。
たぶん、これからも。

比企谷は、2期2話のお化け屋敷で転んだ由比ヶ浜に手を差し伸べているし、同じく2期のクリスマス合同イベントでいろはの荷物を持ってあげている(手を差し伸べるのと同じ行為)ので、手を差し伸べる行為自体は特別なことではない。

要点は、比企谷が手を差し出している行為は無意識に「お兄ちゃん」した結果ではないこと、そして、相手が「立てない」からではなく一人で立てるのをわかって手を差し出していることだろう。つまり、意志を持って手を差し出している。依存でも停滞でも欺瞞でも悪でも嘘でもない。この矜持のある比企谷の行為は「本物」の一翼を担うものだろう。

雪ノ下はプロムに取り組むにあたってこれまで比企谷の助け(手を差し出される)を拒否していたが、そのように手を差し出す比企谷ごと容認した関係になったので、一人で立てるのに差し出された手を取る。

由比ヶ浜・いろは・小町

いろは「お米の人」

小町を指してなぜお米かというと米の品種名「あきたこまち」から。2期12話で「小町? 誰ですか、お米?」といろはは言っている。

あの二人がうまくいくわけない

いろは「邪魔してもしなくても、あの二人がうまくいくわけないじゃないですか。まぁまぁ、あと三年経つとお酒が飲めるようになりますね? で、酔ったふりしてガッと! ガッと! 既成事実を作ればこっちのもんです。責任お化けですからあれは」

いろはの言っていることが本音かどうかはわからない。メタ的には、視聴者の声を代弁しているのかもしれないし、彼と彼女らの物語がここで終わりではないことを示唆しているようにも思える。

「結衣先輩のそういうとこ」とは何か?

いろは「まぁ。結衣先輩のそういうとこ、結構好きですけどねー」

2期12話で由比ヶ浜の「葉山くんの気持ちもわかるな。いろんなことに気を回しちゃったりするんじゃないかなって」という台詞に、いろはは「結衣先輩らしい」と言っている。これを論拠にすれば、ここで言ういろはの「そういうとこ、結構好き」とは「人の気持ちを思いやれること」と推測される。比企谷と雪ノ下はいい感じの関係に完結しており、由比ヶ浜は自分が関わることで彼らの関係に不必要な要素を混ぜ込んでしまうのではないかと気を回している、というところだろうか。

いろはがわざわざ「結構好きですけどねー」と言ったのは「少なくとも間違った考えではないのでわかる」というようなことを伝えるためだろう。それほど深い意味はないと思われる。

好きになっちゃいけないなんて法律

いろは「彼女がいる人好きになっちゃいけないなんて法律ありましたっけ?」
由比ヶ浜「えっ……。ない、と思うけど……」
いろは「でしょ?」
由比ヶ浜「いろはちゃんもそうなの?」

「彼女がいる人好きになっちゃいけないなんて法律ありましたっけ?」は何というか詭弁というか、比企谷の言うところの「嘘は嘘とバレなければ嘘にならない」のような、特に意味はないけれど推進力は確かに持つ台詞である。由比ヶ浜に耳打ちしているということは、由比ヶ浜に伝えたいということである。

「いろはちゃんもそうなの?」は「いろはも比企谷に好意があるのか」ということで間違いないだろう。実際、あるのかないのかはいろはにしかわからないが、空気を読んで「全然違う」と言っているように思える。もし仮にいろはが比企谷に好意を寄せているとしても、今、由比ヶ浜といろはがライバルになって分裂することは全く得策ではない。結託するべきだ。

いろは「ベタオリする気はないんで」

いろは「は? 全然違いますけど一応まだワンチャン葉山先輩ツモれればいいなとは思ってます。最悪向こうが振り込んできたらそれはそれでって感じですけどわざわざ待ち変えたり手を崩してまでベタオリする気はないんで」

麻雀用語の羅列である。私事で恐縮だが、学生時代に就職活動そっちのけで友人の家に入り浸って麻雀をしていたためにこのいろはの台詞が理解できるので、学生時代に就職活動そっちのけで友人の家に入り浸って麻雀をしていて良かったなと思った。

「ツモる」というのは自分で牌を引いて上がることなので「葉山先輩ツモれればいいな」は「葉山先輩に告白して成功する」のことだろう。その前「全然違います”けど”」と逆接になっている。文意は「比企谷に好意はない。しかし、葉山先輩に告白して成功したらいい」であり、逆接の意味が現状よくわからない。

それに続く「最悪向こうが振り込んできたらそれはそれでって感じ」の「向こう」も「葉山」を指すだろうか。「振り込んでくる」は「相手が捨てた牌で上がる」ことであり、とすると「葉山に告られたらそれはそれであり」という意味になる。葉山に告られている状況を仮定しているにも関わらず、あまり喜んでいるという印象はない。

しかし、そうすると「最悪」の意味がよくわからない。辞書を引いても「最も悪い状態」としか出てこない。「葉山に告られる」ことは「最悪」なのか。

話は変わるが、ワンチャン(one chance)は本来チャンスなのでポジティブな意味合いである(「厳しいがワンチャン勝てる」)。しかし、最近では「万が一」「最悪の場合」みたいなネガティブな意味も含まれた使われ方をする用例を見かける(「風邪がひどいのでワンチャン病院いくまである」)。そう考えれば、ここでいう「最悪」も「もし」とか「万が一」みたいな意味かもしれない。わからないけど。

「わざわざ待ち変えたり手を崩してまでベタオリする気はない」の「ベタオリ」は「(上がりを)諦めること」である。文がやや複雑なので簡素に書き換えると「現状維持で諦めない」という意味になる。

「それはそれでって感じ”ですけど”わざわざ待ち変えたり手を崩してまで」の「ですけど」は逆接だから「しかし」である。

さて、牌は揃った。上記を元にいろはの台詞を下記にわかりやすく翻訳して示してみよう。

「比企谷に好意は全くない。しかし、葉山先輩に告白して成功すればいいなと思う。万が一、葉山に告られたらそれはそれであり。しかし、現状維持で諦めない」

意味不明である。

言うまでもなく、2つの逆接「しかし」の前後の文がちぐはぐになっているのである。例えば「比企谷に好意は全くない”から”葉山に告白して成功すればいいなと思う」及び「告白されるのはあり。”だから”諦めない」の順接なら意味が通る。また、後半部分が「しかし」であるためには「現状維持で諦めない」の対象が葉山以外(例えば比企谷)なら意味が通る。

二重否定は肯定である。そして仮に葉山はダミーであり、そのくだりは意味がないと仮定する。これらの新たな情報を元にシンプルにしたのが下記である。

「比企谷に好意は全くない。だから、(比企谷を)諦めない」

はい、意味不明です。対偶としての同じ意味の文は「比企谷が好きだから諦める」であり今なぜそれを言うのかがいよいよよくわからない。ところで、上述したように前提の「比企谷に好意は全くない」が嘘や誤魔化し、空気を読んだのであれば意味は通る。

「比企谷に好意は全くない(というのは嘘で実は好意がある)。だから、(比企谷を)諦めない」

小町に「3年後にお酒が飲めるようになるのはいろはでは?」と指摘されていることから、いろはは比企谷に好意がありそうなことが示唆されている。

一方、由比ヶ浜はいろはの麻雀談義を受けて「え、じゃあそんなこと言ったの……」と言っているので、由比ヶ浜は「いろはは比企谷に好意はない」とそのまま受け取ったようである。

長い文量をかけて検証してきたが、いろはのこの部分の真意と、由比ヶ浜がなぜ「いろはは比企谷に好意はない」と受け取ったのかはよくわからない、というのが結論である。いろはが複雑な言い回しで由比ヶ浜を撹乱したとしか考えられない。本稿において長い文量をかけて何やってんだ、と思っています。

女の子の特権

いろは「諦めなくていいのは女の子の特権です」

「諦めなくていいのは女の子の特権です」はどう考えても詭弁である。いや、詭弁にすらなっていない何の根拠も論理も理屈もない空疎な言説である。

原作を参照すると、このいろはの言葉に由比ヶ浜は「あたしの心からの声だ」(原作14巻、P482)と独白で反応している。

比企谷の根拠・論理・理屈を超越しているのが由比ヶ浜である。その証拠に、比企谷は11話で由比ヶ浜に理屈を並べた言説を発話した途中で、頬パチンをし、本音を喋った。比企谷は由比ヶ浜に理屈は全て見抜かれているので通用しないと思っている。逆に、由比ヶ浜は理屈を作ることができないし、作れたとしても比企谷の論理性には太刀打ちできないだろう。

だから、由比ヶ浜に必要なのは根拠・論理・理屈ではなく、それを超越した「酒を飲んで既成事実を作る」「女の子の特権だから諦めない」という全く論理的でなく理屈もへったくれもないトリッキーな動機である。

これまでは比企谷の理屈に付き合うだけだった由比ヶ浜だが、いろはによって「諦めなくていいのは女の子の特権」という新たな発見にして比企谷攻略のための最強の武器を手に入れたと言える。

小町「同じくクズ同士」

小町「小町は常々、兄の相手をするには上から引っ張り上げるか下から押し上げるかしかないと思ってたんですが……なるほどなぁ。同じくクズ同士って選択肢があったんだなぁ」

おそらく小町の言うところの「上から引っ張り上げる」は由比ヶ浜を指し、「下から押し上げる」は雪ノ下を指し、「同じくクズ同士」はいろはを指している。小町は誰の味方もしておらず、比企谷に相応しい相手は誰なんだろう、というのを比企谷の意志を尊重しながら、小町なりの視点で楽しんでいると思う。

俺ガイルに続きがあるとすれば小町の暗躍が大変に楽しみである。人狼ゲームで言うところの、比企谷という「人狼」の味方をしながらも村を掻き回す「狂人」と言えるかもしれない。比企谷のパートナーであるもう一人の人狼は誰になるのだろうか。

 

 
次の記事:
俺ガイル完第12話(3期最終話)の感想・考察その2。「あなたが好きよ。比企谷くん」

前の記事:
【2万字超】俺ガイル完(3期)第11話の感想・考察その3。「手放したら二度と掴めねぇんだよ」とは何か?

 
『俺ガイル完』の考察はこちら
俺ガイル完カテゴリ

『俺ガイル続』の考察はこちら
俺ガイル続カテゴリ

『俺ガイル』原作の考察はこちら
俺ガイル原作カテゴリ